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時間稼ぎ

 あれから一週間が経過し、いよいよ日向(ひゅうが)を倒す時が来た。テクノマギア社の社屋の前に、四人のウィザードが集結する。ヒロ、鈴菜(すずな)紅愛(くれあ)――そして天真(てんま)の四人だ。しかし、そこで彼らを待ち受けていたのは、日向ではなかった。


 彼らの目の前には今、マリス団の四人がいる。

「これはこれは皆さんお揃いで。天真、いつの間にかコイツらと仲良くなったんだな」

「鈴菜。ワタシにはもう、アナタを殺すことが出来ない。だけど、魔法石を奪うことは出来る」

「さあ、アタイを楽しませてくれよ」

「全力でかかってこい。今のお前たちが束になっても、俺様一人すら倒せないだろう」

 彼らは皆、妙な自信に満ち溢れている。無論、彼らは皆、その自信に劣らない実力者だ。一方で、ヒロたちがここに来た理由は日向を倒すことだ。


 天真は幹部たちの前に立ちはだかり、ヒロたちに指示を出す。

「ここはボクが引き受ける。キミたちは、社長室へ」

 この場を引き受けた彼は、いつものように錠剤を飲み込んだ。そんな彼が変身するや否や、マリス団の四人も変身する。その光景を前に、ヒロたちは息を呑む。

「わかった、ここは君に任せる!」

「また体調が悪くなったら、いつでも逃げるんスよ?」

「天真。アンタはもうオレたちの仲間だ。自分の命を、粗末に扱うんじゃねぇぞ」

 そう言い残した三人はすぐに駆け出し、社屋のエントランスを潜り抜けた。


 天真は己の手から放たれる糸を束ね、巨大な人形を作り出す。

「アイツらの所には、行かせない!」

 人形は先ず、逢魔(おうま)の頭上へと拳を振り下ろした。逢魔は瞬間移動により、天真の背後を取る。直後、天真は凄まじい勢いで殴り飛ばされ、その先で晴香(はるか)の膝蹴りを食らった。彼の上空から無数の爆弾が降ってきたのは、その直後だ。彼はその攻撃を見切り、すぐに受け身を取ろうとした。しかし彼の体は浮かび上がり、空中に固定されてしまう。


 天真は激しい爆発に包まれた。


 各々が卓越した戦闘能力を誇るヴィランたちは今、四人がかりで彼を相手にしている。戦況はまさしく、多勢に無勢と言ったところだ。それでも天真には、この戦いに勝利する必要がない。

「まだだ……ボクが生きている限り、時間くらいは稼げるはずだ!」

 そんな覚悟を口にした天真は、四方八方に糸を張り巡らせた。蜘蛛の巣のような形状を為した糸の塊は勢いよく回転し、彼を取り囲むヴィランたちを次々と巻き込んでいった。無論、瞬間移動を使える逢魔は、瞬時に拘束から脱け出す。彼が移動した先は、標的のすぐ目の前だ。直後、天真の顔面には、強烈な右ストレートが叩き込まれる。一方で、この隙に熱を集めていた伊吹(いぶき)は、他の幹部たちを捕らえている糸を焼き落とした。自由の身となった晴香は瞬時に間合いを詰め、逢魔と共に標的を殴り続ける。


 その時である。


「楽しそうだな。そいつをアタイによこせ!」

 突如乱入した千郷(ちさと)は、たったの一発で逢魔と晴香を蹴り飛ばした。それから彼女は天真を押し倒し、彼の体に馬乗りになる。一発、また一発と、常軌を逸した威力の打撃が彼の顔面に襲い掛かる。彼の体にはノイズが走り始めており、その変身が解けるのももはや時間の問題だ。それでも天真の目には、闘志が宿っている。今はまだ、彼が倒れるわけにはいかないのだ。

「アイツらの邪魔は、させない!」

 そう叫んだ彼は、掌で千郷の拳を受け止めた。そして天真が彼女の手首を捻った直後、今度は彼が相手の体に馬乗りになる。

「これで、息が出来ないだろう」

 何か不穏なことを呟いた天真は、その手から何重もの糸を放った。千郷は己の顔面に糸を張り巡らされたが、依然として余裕を見せている。

「テメェの変身を解けば、この魔術も解けるんだろ? 簡単な話だ!」

 彼女は天真の身を振り払い、その場に立ち上がった。

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