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魔力の光線

 一方、紅愛(くれあ)は街角にて、千郷(ちさと)と対面していた。千郷は一本のテキーラを飲み干し、それから白虎型のヴィランに変身する。その姿を見た通行人たちは一斉に逃げ出し、その場には彼女たち二人だけが残された。

「これで邪魔者は消えたな……楽しませてもらうぞ、紅愛! 変身しろ!」

 何やら千郷は、戦いに飢えていたようだ。

「良いだろう。オレは必ず、アンタを仕留める!」

 紅愛はすぐに変身し、光線銃を構えた。


――戦闘開始だ。


 千郷は両手に爆弾を作り出し、それらを標的に向かって投げつける。紅愛が爆弾を撃ち落とすや否や、両者の視界は爆炎と煙に覆われる。彼女が光線を乱射する中、その目の前の煙からは千郷が飛び出してくる。白い体毛に覆われた剛腕と、その指先に備わった鋭い爪――それらは紅愛の身に深いひっかき傷を刻み込んでいく。一方で、光線銃からはビームが連射されており、千郷の身に次々と風穴を開けていく。両者共に、一歩も譲らない戦いだ。


 そこで千郷は考えた。

「あの建物だ」

「え……?」

「アタイの仲間が、アンタの妹をあの建物に幽閉した」

 そう告げた彼女の指先は、近くの建物に向けられていた。紅愛は表情を一変させ、相手が指を差している方へと目を遣った。その瞬間、彼女の頬に強烈な右ストレートが炸裂した。そして彼女の身が宙を舞った隙を狙い、千郷はそこに大きな爆弾を投げ込んだ。激しい爆発に呑まれ、紅愛は更に後方へと飛ばされる。彼女の身は服屋のショーウィンドウに叩きつけられ、辺りにはガラスの破片が飛び散った。

「騙したな……クソアマが!」

 これには紅愛も憤った。彼女の目が怒りに染まるや否や、光線銃の銃口からは凄まじい火力のビームが発射される。この一撃を受けた千郷も爆炎に呑まれ、宙に放り出される。空中で体勢を整えつつ、千郷はある事実に気づく。

「光線銃の威力が上がったな」

 そう呟いた彼女は、軽い身のこなしでアスファルトに着地した。それから彼女は魔術を用い、数多の爆弾を投げ続ける。その全てをビームで撃ち落としつつ、紅愛は答える。

「ああ、その通りだ」

 何らかの方法により、彼女は光線銃を強化したのだろう。そのからくりは、すでに千郷に悟られている。

「テメェのレーザーから魔力を感じる。その光線銃のエネルギーは、テメェの魔力そのものらしいな」

「そうだ。まあ、別に隠すつもりもなかったけどな」

「そうか。さあ、もっとアタイをもてなせ!」

 火力の増した光線と、凄まじい威力の爆弾――それらが何度もぶつかり合い、周囲には爆炎が燃え広がっていく。一方は魔術で相手の動きを読み、もう一方は嗅覚で相手の位置を把握している。ほんの一瞬の油断さえも許されない。二人は今まさに、命のやり取りをしているのだ。


 やがて彼女たちは、肩で呼吸をし始めた。煙に包まれたこの場所では、酸素を効率的に得ることが出来ない。意識を遠ざける気怠さに抗い、二人はぶつかり合う。

「以前、アンタはオレから酸素を奪っていたな。だが、今回は同じ条件だ!」

「ほう……同じ条件ならアタイに勝てると思ったか?」

「確証はねぇな。だが、オレには切り札がある」

 無論、それは虚勢ではない。この戦いの中で、彼女は何かをひらめいたようだ。

「そんなものは使わせねぇ。テメェはこれで終わりだ!」

 眼前の相手を倒すべく、千郷は己の両手の間に大きな爆弾を生み出した。そして彼女が、その爆弾を抱えた時である。



 彼女に投げられる前に、爆弾は突如大爆発を起こした。



 千郷は煙をまといながら吹き飛ばされ、変身が解けてしまった。紅愛は光線銃の銃口に息を吹きかけ、不敵な声色で呟く。

「どうやらオレには、不可視光線を放つことも出来るようだな。コイツで引火させちまえば、アイツの爆弾も好きな時に爆破できるわけだ」

 そう――彼女は知恵をもってして強敵に打ち勝ったのだった。

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