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第六感

 あれから一ヶ月弱の期間が経過した。その期間中、ヒロたちは様々なヴィランと戦い、ウィザードレベルを高めていった。


 場所はとある廃墟の病院の駐車場――ヒロの目の前では今、逢魔(おうま)が身構えている。ついに、二人が決着をつける時が来たようだ。

「変身!」

「……変身」

 双方が変身した瞬間、戦いの火蓋が切られた。ヒロは炎をまとった剣を生成し、それを一心不乱に振り回していく。その剣術の軌道をなぞるように、円弧を描いた炎が次々と発射されていく。逢魔はその全てを瞬間移動でかわし、ヒロの近くに詰め寄る隙を探す。そして彼は、ほんの一瞬の隙を見つけた。

「今だ!」

 逢魔は瞬間移動により、ヒロの頭上へと移動した。咄嗟の判断により、ヒロは剣先を頭上に突き立てた。その切っ先から放たれた炎は、標的の身を容赦なく呑みこんだ。あの一ヶ月の間に、ヒロの反射神経はかなり研ぎ澄まされたようだ。

「見事だね。面白おかしくなってきたよ」

 そう呟いた逢魔は宙で回転し、ヒロの脳天にかかと落としを食らわせた。その衝撃により、駐車場のアスファルトは深く抉れる。頭から血を流したヒロは、揺らぐ視界の中で次に迫ってくる攻撃に備える。直後、逢魔は彼の目の前に瞬間移動し、剛腕を前方へと突き出した。その打撃をかわしたヒロは、眼前の宿敵に炎の斬撃を食らわせる。

「ほう……脳天に衝撃を受けた直後でも、俺の位置がわかったんだ。どうやら、魔力を感知する力を戦闘にも活かすようになったらしいね」

 状況を冷静に分析した逢魔は、まだ余裕綽々としていた。そんな彼と同様、ヒロもまた不敵な態度を見せる。

「ああ、そうだ。そして、魔力を感じ取るのは第六感だ。視覚や聴覚よりも、その反応速度は断然速い」

「へぇ。つまり、俺の瞬間移動に、ある程度は対応できるようになったというわけだ」

「そういうことだ!」

 一撃、また一撃と、ヒロは炎を帯びた斬撃を相手に食らわせていく。逢魔は瞬間移動を繰り返し、様々な角度から彼に打撃や蹴りをお見舞いしていく。両者の実力は今、拮抗していると言っても過言ではない。この戦いにおいては、ほんの一瞬の息継ぎすらも命取りとなるだろう。

「ヒャハハ! 楽しい! 楽しいよ、ヒロ! お前がこんなに強くなってくれるなんて!」

「俺は、全てを終わらせる。君たちを倒せば、マリス団を潰せば……もうヴィランが増えることもないんだろう?」

「ご名答! だけどお前が死んだら、俺は日本をヴィラン大国にする! 皆が面白おかしく殺し合う……そんな理想の国を作る!」

 そんな野望を叶えるわけにはいかない。ヒロは歯を食いしばり、己の握る剣に更なる魔力を注いだ。その刀身が眩い光を帯びる傍らで、彼の体の節々にはノイズが走り始めている。このまま無理をすれば、彼は変身が解けてしまうだろう。無論、彼はそうなることを覚悟している。

「逢魔! 俺はこの一撃に全てを賭ける!」

「やってみろよ、ヒロ!」

 逢魔は瞬間移動により、ヒロの背後を取った。

「ああ、お望み通り、やってやるさ!」

 ヒロは咄嗟に振り向き、剣を勢いよく振った。その行為によって限界を迎えた彼は、変身が解けてしまう。しかし彼の斬撃の軌道を描くように形成された炎は、凄まじい勢いで火力を増しながら逢魔の身を押していった。

「なんだ……この力は……!」

 この時、逢魔は瞬間移動による脱出を図ろうとしていた。しかし彼の体の節々にもノイズが走っており、魔術を発動するのは極めて困難な状態だった。

「馬鹿な……馬鹿なァ!」

 次の瞬間、彼の身は大爆発を起こした。直後、変身の解けた彼の、生身の肉体が宙に放りだされた。彼の体はじわじわと消え、それから無に還っていった。

「これで、一人仕留めたぞ……」

 そう呟いたヒロは、安堵したように気を失った。

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