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流星と爆弾

 その日の夕方、鈴菜(すずな)は帰り道を歩きつつ、先日撮った写真を眺めていた。そこに映っているのは、屈託のない笑みを浮かべた彼女自身と晴香(はるか)の姿だ。

「友達に、なれたら良いのに……」

 叶わぬ願いを口にした彼女の脳裏に、晴香と過ごした一日の記憶がよぎった。あの日、二人はどこにでもいる友達同士のように、ショッピングモールや繁華街、カラオケなどを満喫していた。その時の晴香の屈託のない笑顔は、どこにでもいる普通の女のそれだった。それでも、鈴菜はいずれ、彼女を殺さなければならない。


「晴香。ヴィランとして生きること、やめられねぇッスか? これからは、力を持っただけの一般人として生きていけねぇんスか?」


「無理よ。ワタシは悪事を働く――そういう遺伝子を持った生き物だから。それが、ヴィランであるということなのよ」


「そッスか……やっぱり、ウチはいずれ……アンタを殺すしかねぇんスね」


 そんなやりとりを思い出し、鈴菜はうなだれるばかりだ。そんな彼女が人々の悲鳴を耳にしたのは、まさにそんな時である。

「助けてくれ!」

「金! 金ならある! 全部持って行って良いから、どうか命だけは!」

「俺たちが、一体何をしたっていうんだよ!」

 それは明らかに、ただならぬ事態であった。鈴菜が声のした方に駆け込むと、そこは路地裏だった。彼女の足下には血まみれの男たちが横たわっており、前方には一人の女が立っている。

「どいつもこいつも脆いな。つまらねぇ! つまらねぇ!」

――千郷(ちさと)だ。彼女は近くに置かれていたゴミ箱を蹴飛ばし、その中身を散らせた。それから彼女は鈴菜の存在に気づき、一本のテキーラを一気飲みする。

「はは……ウィザードならアタイを楽しませてくれそうだ!」

 そう言い放った千郷は、どこか危険な雰囲気を醸していた。彼女は白虎型のヴィランに変身し、前方へと飛び出した。鈴菜も咄嗟に変身し、星型の光を飛ばして応戦する。しかし、彼女の放つ光は千郷に触れる前に、投げ込まれる爆弾と衝突して爆発してしまう。路地裏が煙に包まれていく中で、鈴菜は標的を見失った。一方で、嗅覚の優れた千郷は、完全に鈴菜の位置を把握している。

「そこだ!」

 彼女は己の両手に、爆弾を一つずつ生成した。その爆弾は鈴菜の方へと投げ捨てられ、勢いよく爆発する。

「ぐあっ……!」

 爆発に呑まれた鈴菜は、その場で宙に飛ばされた。そんな彼女の身に、別の爆弾が次々と襲い掛かる。一発、また一発と、凄まじい火力の爆発は彼女の身を容赦なく傷つけていく。今の鈴菜には、まだ勝機はないだろう。彼女は地面に叩きつけられ、その勢いで吐血する。そんな光景を目の前にしてもなお、千郷の暴走が止まることはない。

「アイツらには『殺すな』と言われているが、アタイはもう我慢できねぇな。派手に散らせてやるよ……ウィザード!」

「ウ……ウチは……」

「……どうした?」

 彼女は首を傾げ、己の指の関節を鳴らした。その出で立ちには、妙な威圧感があった。鈴菜は必死に立ち上がり、己の手元に星型の光を密集させていく。

「ウチは、逃げない!」

 そう叫んだ彼女は、凄まじい火力の光線を放った。この一撃を受けた千郷は、喜びと驚きを隠せない。

「強いな。アンタに、そんな力があったとはな……」

 彼女はそう言ったが、その身はほんの少し傷ついただけである。一方で、相手はすでに虫の息である。あの一撃で力を使い果たした鈴菜は、変身が解けてしまった。それから彼女は崩れ落ち、地に膝をついた。そんな彼女の目の前で、千郷は直径一メートルほどの爆弾を生み出す。

「良い退屈しのぎにはなった」

「それは、どうもッス……」

「だが、それも飽きたな」

 両手で持ち上げていた爆弾を投げ、千郷は笑う。



――凄まじい轟音と共に、辺りは眩い光に包まれた。

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