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墓地

 同じ頃、鈴菜(すずな)は墓地を訪ねていた。墓前で手を合わせ、彼女は静かに目を閉じる。それから数秒後、彼女は今は亡き親友相手に今後の抱負を語る。

(あずさ)。ウチ、頑張るッスよ。この先、どんな困難が待ち受けていても、何度転んでも、ウチは必ず立ち上がるッスよ!」

 その眼差しには、燃え盛るような信念が宿っていた。自らの手で親友を葬ったあの日から、鈴菜はずっと使命感に駆られていた。


 そんな彼女の前に、一人の美女が現れる。

「鈴菜、眼鏡をかけてみない?」

――晴香(はるか)だ。ウィザードになってから日の浅い鈴菜には、まだこの女がヴィランであることを感じ取れない。

「アンタ、誰ッスか?」

「ワタシは晴香……ヴィランよ」

「……なんの用ッスか? ウチは今、墓参りをしてるんスけど」

 この墓には、梓が眠っている。少なくとも、鈴菜はこの場所で戦いたいとは思わないだろう。そんな彼女の目の前で、晴香は朱雀型のヴィランに変身する。

「嫌い……」

「……え?」

「ワタシは、人骨を保管しているだけの土地に足を運ぶだけで人格者のフリが出来る風潮が嫌いよ! こんな墓地、破壊するわ!」

 支離滅裂な言論だ。鈴菜はすぐに変身し、眼前のヴィランを睨みつける。

「破壊なんてさせねぇッス! ウチは絶対に、この場所を守り抜くッス!」

「あら。どうするつもりかしら」

「ウチには一つ、考えがあるッス!」

 何やら、彼女は闇雲に敵対者を煽っているわけではないようだ。

「それで、アナタにはどんな考えがあるの?」

 晴香は訊ねた。鈴菜は歯を見せて笑い、己の胸に親指を突き立てる。

「もしこの場所が傷つけられたら、ウチは一生眼鏡をかけねぇッス!」

 その言葉に耳を疑い、晴香は一生だけ硬直した。その目に宿る感情は、絶望だ。

「……わかったわ。場所を移しましょう」

 交渉は成立した。二人は墓地を離れ、近場の自然公園へと赴いた。



 いよいよ、彼女たちの戦いが始まる。

「やってやるッスよ!」

 そう叫んだ鈴菜は、無数の星型の光を放った。晴香はその全てに被弾したが、彼女の体は瞬時に再生する。何やら、この女には常軌を逸した回復能力が備わっているらしい。

「鈴菜。アナタは、近接戦闘には慣れているかしら?」

「もちろんッスよ。変身したウィザードは魔術を使えるだけでなく、戦闘能力も高まるんスよ!」

「面白いわね。でも、アナタに勝ち目はないわ」

 妙な自信に満ちた晴香は、前方へと飛び出した。彼女が腕を振り下ろすや否や、鋭い爪が鈴菜の身に切り傷を負わせた。

「くっ……!」

 鈴菜は己の足の爪先に魔力を溜め、相手の腹に強烈な蹴りを入れた。晴香は後方へと退くが、その身に受けた攻撃をまるで意に介していない様子だ。

「アナタがどんな手を尽くしても、ワタシは何度でも再生するわ。親しい者の死を背負って自分に酔うだけでは、人は強くなれないのよ!」

「癪に障る言い草ッスね……だけど、これならどうッスか?」

 どうやら、鈴菜はまだ戦うことを諦めていないらしい。彼女の両手の間に、おびただしい数の星型の光が密集していく。そして――


「ノヴァ・マスター!」


――彼女は凄まじい火力の光線を放った。しかし、眩い光にその身を焼かれつつも、晴香は前方へと飛び出した。彼女の強靭な両足は、鈴菜の腹に強烈なドロップキックを食らわせる。

「ぐあっ!」

 この一撃により、両者の間には爆発が発生した。その衝撃によって変身の解けた鈴菜は、地面に叩きつけられて気を失う。

「そろそろ、トドメを刺すわ」

 そう呟いた晴香の目には、純然たる殺意が宿っていた。


 突如、何者かが彼女の手首を掴んだ。

「まだ殺すには早いだろ。コイツをもう少し育ててから遊ぼうぜ」

――逢魔(おうま)だ。晴香は少し不服そうな顔をしていたが、そんなことを気にする彼ではない。逢魔は瞬間移動により、晴香をその場から連れ去った。

挿絵(By みてみん)

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