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四つの魔法石

 それから天真(てんま)逢魔(おうま)は、激しい攻防を繰り広げた。天真は相手の動きを読み、遠距離から星型の光や糸を飛ばしていく。そして逢魔が近距離内に瞬間移動してくるや否や、天真は炎の剣を振り始める。一見、この男は全ての魔法石を使いこなせているように見えるだろう。


 しかし彼の体の節々には、すでにノイズが走り始めていた。


 天真は突如咳き込み、頭を押さえ始める。

「ぜぇ……ぜぇ……やはり、体に合わない魔法石はあまり使うべきではないな……」

 その強さに反し、彼もまた完璧なウィザードではない。己の体質に適していない魔法石を使った反動により、彼の体は着実に弱っていた。一方で、眼前のヴィランは魔法石を使うことなく魔術のような力を乱用している。そう――ヴィランである逢魔は、魔法石などの道具を持ち歩くことなく戦えるのだ。

「何度やっても同じことだぜ! 天真ァ!」

 挑発的な言葉を口にした逢魔は、すぐに天真の背後に瞬間移動する。その剛腕は、天真の身を容赦なく吹き飛ばした。

「くそっ……なんて強さだ!」

 咄嗟の判断により、天真は無数の糸をその場に張り巡らせる。ビル群のあちこちに張り付いた糸は、彼の身を空中に固定する。それから天真は自らの足元に眉の足場を作り出し、己の両腕を縛る糸を消した。そして彼が次の攻撃に移ろうとした時、そのすぐ目の前には逢魔の拳が迫っていた。

「甘いんだよ! 天真!」

「どうかな?」

 天真はすぐに剣を作り出し、逢魔の拳を受け止めた。しかしその刀身には徐々に亀裂が入り、剣は無残にも砕け散った。天真が目を疑ったのも束の間、彼の顔面には強烈な右ストレートが叩き込まれる。それから逢魔はラッシュ攻撃に移り、眼前のウィザードを凄まじい勢いで傷つけていく。

「自分の体に合わない魔法石で、俺の攻撃を防げる剣を作れると思ったか? 俺も、ナメられたもんだなァ!」

 一発、また一発と、天真の身に強烈な拳が叩き込まれていく。彼はすぐに繭を形成し、己の身を守ろうと試みた。無論、逢魔はその行動を予期しなかったわけではない。

「なるほどねぇ……だったら……」

 彼はどこかへ瞬間移動し、数秒だけ姿を消した。それから彼はガソリン携行缶と火炎放射器を携え、天真の目の前に舞い戻った。

「お前の糸にも、熱を遮断するような力はねぇよなァ!」

 そう叫んだ逢魔は携行缶を投げ、そこに火炎放射器で火を放った。携行缶は勢いよく爆発し、前方の繭を灼熱の炎に包み込んでいく。

「しまった……!」

 繭は勢いよく溶け落ち、天真は炎に呑まれた。逢魔は瞬間移動を繰り返し、次々と新しい携行缶を投げ入れていく。火力を増していく猛火の中で、天真は次の一手を考える。しかしその体に走るノイズは勢いを増しており、彼の変身が解けるのも時間の問題であった。そこで天真は、己の手元に冷気を纏った剣を生成した。彼が炎を振り払ったのと同時に、その剣は即座に砕け散る。やはり、自分と合っていない魔法石によって生み出した武器には限界があるようだ。


 そして彼の視界を覆っていた煙が消え去った時、今度は逢魔の両足がこちらに迫っていた。

「終わりだ、天真!」

 逢魔がそう叫んだや否や、彼の強烈な飛び蹴りが天真の身を吹き飛ばした。天真は後方のビルの壁にめり込み、変身を解かれた状態で落下する。このままでは、彼はアスファルトに叩きつけられ、命を落とすだろう。


 しかし意外にも、逢魔はそれを面白く思わなかった。

「ゲームは面白くねぇとな」

 そう呟いた彼は、すぐにビルの下へと瞬間移動した。それから天真の身を受け止め、逢魔は笑う。

「気を失ったか……まあ、無理のしすぎだな」

 そう呟いた彼は、天真の首にかけられた魔法石を三つほど奪い取った。一つはクロス・セイバー、もう一つはノヴァ・マスター、そして残る一つはアストロロギアである。

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