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上位互換

 それから五人は意識を研ぎ澄まし、ハジメの魔力を感じ取れる方角へと突き進んでいった。しかし彼らは、先にとあることを確認しなければならない。歩みを進めていく道中で、ヒロは紅愛(くれあ)に問う。

「そういえば、今の俺たちが着用している魔法石には、どんな力があるんだ?」

 今その答えを知っているのは、あの時アカシック・ラプラスを発動した紅愛だけだ。彼女はすぐに説明を始める。

「先ず、大前提として、これらの魔法石は従来オレたちが使ってきた魔術も問題なく使えるようになっている。つまるところ、上位互換と考えて差し支えはねぇな」

「なるほど。それで、俺の魔法石は何が出来るようになったんだ? 一度使ったことはあるが、正直何が起きているのかさっぱりだった」

「アンタの魔法石はメタイデア。形而上のものを含めた――あらゆるものを斬ることが出来る剣を生み出せる」

 何やらヒロの魔法石には、凄まじい力が秘められているようだ。次に質問を投げかけるのは、鈴菜(すずな)である。

「紅愛さん、紅愛さん! ウチはどんな魔術を使えるんスか?」

「鈴菜の魔法石はコズミック・デウス。コイツは天体を生み出す力を持ち、その規模は魔力の量やウィザードレベルに比例する。今のアンタが本気を出せば、中性子星やガンマ線バースト、ひいてはブラックホールも生み出せるだろう」

「お、それは良いッスね! 頭脳戦は性に合わねぇし、こういう火力に特化した技が使えるのは嬉しい限りッスよ!」

 彼女の与えられた力もまた、常軌を逸した強さを秘めていた。残る一つは、天真(てんま)の魔法石だ。紅愛は彼の方に目を遣り、彼の魔法石についても説明する。

「天真。アンタのそれはグルー・ウェーブ――粘着力を持つ波を飛ばす魔法石だ。この波の便利なところは、アンタの指定した対象にのみ影響を及ぼすことだな。これで広範囲に波を放ち、回避不能の攻撃を仕掛けることが出来る」

「それは便利だね。しかも、そんな魔術が使えるということは、敵の体を体内も含めてまんべんなく硬化及び結合させることが出来るわけだ」

「ああ、もちろんだ。さて、ハジメがいるのは、このビルの屋上だな」

 話を進めていくうちに、五人は高層ビルの目の前に辿り着いた。さっそくヒロたちはエントランスを潜り抜け、エレベーターに乗る。それから非常階段を登り、彼らは屋上に到着した。


 彼らの目に真っ先に飛び込んできたものは、ハジメの後ろ姿だ。彼はおもむろに後方へと振り向き、そして微笑む。

「感じる……貴方たちのウィザードレベルが高まったのを」

 その瞳には、確固たる戦意が宿っていた。


 いよいよ、決戦の時だ。


 その場にいる全員が、一斉に変身した。ハジメはいつものようにホログラムの画面を操作し、標的たちの身を何度も爆破していく。しかしヒロたちは、もうあの頃よりもはるかに強くなっている。

「ああ、体に馴染む。今の俺には、コイツを使いこなせる!」

 ヒロは剣を振り回し、標的の身を空間ごと斬りつけていった。そして彼が高く跳躍した直後、鈴菜はハジメを睨みつける。

「ガンマ線バースト!」

 その両手から放たれた光線の威力は凄まじく、周囲は衝撃波によって激しく振動した。ガンマ線バーストを浴びたハジメは少しよろけたが、根気よく五人の身を爆破していく。しかし彼の動きは、次第に鈍くなっていった。

「ほう……なかなか粘着力があるじゃないか。この波は」

――そう、これは天真の魔術によるものだ。続いて、逢魔(おうま)が瞬間移動で間合いを詰め、ハジメの身に強烈なラッシュを叩き込でいく。

「魔法石がないからって、俺を侮らない方が良い」

 そう言い放った彼は、不敵な笑みを浮かべていた。今の彼らなら、眼前の強敵を倒すことも夢ではないだろう。


 しかしその強敵もまた、妙な微笑みを浮かべていた。

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