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答え

 剣の刀身に炎をまとわせ、ヒロは巧みな剣術を披露した。その全てをかわしつつ、ハジメはホログラムで映し出された画面を指先で操作していく。そして彼が何らかのファイルを実行するたびに、ヒロは未知なる力に襲われた。ヒロの身は爆発に呑まれ、見えない力で切り傷を刻まれ、更には高圧電流も浴びせられた。それでも彼は、戦うことをやめない。体の節々から血を流し、肩で呼吸をしつつも、彼は剣を振り続けた。その刀身からは円弧型の炎が無数に放たれていくが、いずれも標的の左手に消されてしまう。そして片手で己の身を守りつつも、その標的はもう片方の手で画面を操作し続けている。


 やがてヒロの身に、ノイズが走り始めた。


 この光景を前にして、逢魔(おうま)は声を張り上げる。

「逃げろ、ヒロ! 俺が瞬間移動させてやるから!」

 確かに、今は逃げた方が賢明だろう。しかしヒロは、彼の出した助け船を拒もうとする。

「ダメだ。アイツを倒さないと、人々が魔物に襲われるんだぞ! 俺は逃げない……俺は戦わないといけないんだ!」

「ヒロ! お前はこれ以上、何を望むんだ! お前は今、仲間のおかげで、生きたいって思えているんだろ!」

「だからこそ、俺にはその仲間を裏切るような真似が出来ないんだ。いや、そうでなくても、俺がアイツの所業を見過ごすわけにはいかない!」

 そう叫んだヒロは、使命感を帯びた眼差しをしていた。依然として、彼の攻撃がその敵対者に通用する様子はない。そんな彼を目の前にして、逢魔は激昂する。

「馬鹿野郎! それでお前が死んだら、それこそ仲間への裏切りだろ! 答えろ、ヒロ! お前は一体、なんのために戦っているんだ!」

 風の吹きつける公園に、大きな怒号が響き渡った。ハジメの猛攻により、ヒロは今この瞬間も深い傷を負い続けている。それでもヒロは、震える両脚で立ち上がり続けるのだ。

「ああ、君の言いたいことはわかるよ……逢魔。確かに、俺にとって、正義は心の拠り所でしかなかった。だけど、今は違う。何か許せないことがあると、正さなければならないことがあると、不思議と俺の心が熱くなってくるんだよ」

「お前は……お前はどこまで愚かなんだ! ヒロ!」

「ああ、愚かかも知れないな。だけど俺は薄情者でいるよりも、愚か者でいたい。それが皆のためになるのなら、俺はそれで構わない!」

 そんな覚悟を語った彼だが、すでに満身創痍の有り様だ。逢魔は己の後頭部を掻きむしり、そして変身する。

「しょうがない奴だな……お前は」

 彼は即座に瞬間移動し、ハジメの目の前に現れた。逢魔は相手の顔面に右ストレートを叩き込もうとしたが、その眼前の標的は何らかの構文をホログラムに入力した。直後、彼の突き出した拳は勢いよく血を噴き出し、その体は後方へと退いた。

「俺の拳を……反射したのか?」

 逢魔が驚いたのも束の間だった。彼の体の節々が、未知なる力によって爆発した。そして今この瞬間も、ハジメはホログラムに何かを打ち込んでいる。

「貴方たちは、もう少し鍛えた方が良い」

 そう呟いた彼は入力を終え、スクリプトを実行した。直後、その場にブラックホールのようなものが発生し、ヒロと逢魔を容赦なく吸い込んだ。それから黒い塊は一瞬にして縮小し、そして彼らを吐き出しながら大爆発を起こした。ヒロたちは変身を解かれ、爆炎に包まれながら地面を転げ回る。そんな二人を見下ろしつつ、ハジメは「ポータル.exe」を起動した。彼の背後に、再び空間の裂け目が発生する。

「また会おう……ヒロ、逢魔」

 二人に背を向けた彼は、裂け目の中に消えていった。直後、空間の裂け目は勢いよく閉じ、その場にはヒロと逢魔だけが残された。逢魔はゆっくりと立ち上がり、ヒロに手を差し伸べる。そしてヒロがその手を掴んだのと同時に、二人は瞬間移動によってその場を去った。

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