戦争って、いいな♡
この作品はフィクションです。実在の国家等とは何の関係もありません。
俺は銃を構えた。モデルガンじゃない。VRゲームに出て来る疑似のものでもない。
本物の銃だ。しっかり重くて、メカメカしている。この引き金を引けば本物の弾が飛び出る。俺は興奮で顔が笑ってしまうのを必死で抑えていた。
上官が言った。
「やれ」
地べたに座らされて、少年が俺のことを憎むように見ている。
俺は脳内麻薬物質がドパドパ噴出されるのを感じながら、積極的に引き金を引いた。すぐに少年は俺の権力の下に倒れ、動かないただのモノに変わった。
そんな感じで俺は戦争を楽しんでいた。
戦争って最高♡
昔の戦争と違ってテクノロジーに守られてる感じするし。
合法的に人を殺せるし。
軍服に身を包んで銃を携えてる俺かっこいいし。
味方の子供たちからは自国を守るヒーロー扱いされて気持ちいいし。
敵とか思想犯罪者の子供はバンバン殺していいし。
戦争って最高♡
俺の時代がやって来たって感じ♪
休暇が取れたので家へ帰った。
家族は食べるものにも窮していた。
俺が缶詰をしこたま持って帰宅すると、12歳の娘と10歳の息子が大喜びで俺に抱きついて来た。
こないだ銃殺刑に処した子供もうちの子らと同年代ぐらいだったな。まぁ、いいや。気にしない。よその子はよその子、うちの子は愛する俺の子だ。
俺は子供2人と妻を同時にひとつの腕で抱きしめた。
「ただいま。このご時世で辛い思いをしているだろうが、父さんも頑張って戦っている。お前らも頑張ってほしい」
「父さん、父さーん♡」
「早く敵国をやっつけちゃって。そして早く帰って来てね♡」
「あなた、苦しくて辛いだろうけど、お国のために頑張ってね。チュッ♡」
うーん、最高。
家族達も俺を尊敬している。
規則にさえ従っておけばとっても楽しい世界と心地良い疲労があるってだけなのに♪
数日後、我が軍は敵国の領内へと侵攻した。
よーし、殺して殺して殺しまくるぜ♪
村を占領した。小さな村だが、うまそうな食い物も、綺麗なねーちゃんも、殺し甲斐のありそうなガキどもも、いっぱいありやがるぜ。ヒヒヒ……!
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そのすぐ後、彼は死んだ。
敵に捕まり、リンチを受け、隠された汚い地下室で、ドブネズミのように死んだのだった。
リンチを行った集団の中には奇しくも、彼が銃殺刑に処した少年の両親もいた。
両親は歯を軋ませて、こう言った。
「○○○国国家主席△△△△め! お前が憎い! このドブネズミを殺してやったのはお前に対する見せしめだ!」
一布さんの作品『私はもう我が子を抱けない』にインスパイアされて書きました。
一布様の作品はシリアスで重々しく、当作品の正反対ですので、二次創作ではありません。