ネガティブな少年
初投稿です。取るに足らない三文小説ですが、楽しんでいただければ幸いです。
人生の終わりとは唐突にやってくるものなのかもしれない。
夜九時の電車に私はふと自殺が頭をよぎりそのまま飛び込んでしまった。別にイジメがあったとか家庭環境は悪かったとかこれといった理由があるわけではない。強いて言うなら自分の将来に希望を持てなかったからだ。なんの能力もなく波風立てず小さく生きることが板についた自分の人生に絶望したのだ。ならばせめてこれ以上苦しむ前にと電車に飛び込んだ次第である。
私がまだ17歳でバイト帰りの出来事である。
「ここは一体何処なんだ・・・?」
目覚めた場所はさっきまでいた肌寒い駅のホームではなく森の中だった。ぐるりと周りを見回しても先ほどまで自分がいた場所とは似ても似つかぬ空間であった。トンネルを抜けるとそこは雪国だったなんて有名な小説の一文が頭に浮かぶがここは雪国ではなく鬱蒼とした森であった。余計なことをつらつらと考えながら頭を整理する。
私はさっき人生に絶望し突発的に自殺をしたはずである。仮に生きていたとしても病院に運ばれているはずだどう考えても森にいるのはおかしい。
(ここはもしかしたら死後の世界なのかもしれない。あそこから生きて帰れるとは思えないし仮に生きていたとしても病院にいるはずだ・・・)
死後の世界にいる、これ以外の仮説が私の凡庸な頭には思いつかなかった。
そう考えると私はこの異常事態をすんなりと受け入れることができた。いや、受け入れるしかなかった。もしかしたら全てがどうでも良くなっていたからなのかもしれないが、私の心は冷静そのものであった。さっきまで死のうとしていたにも関わらず知らない場所に目覚めたらいただけで騒ぐのも人間としての底が浅いのではないか。
普通ならば辺りを散策したり大声で助けを求めて人が近くにいないかなどを調べるのかもしれないが、もうそれすらも私には憂鬱であった。アルバイトでの体の疲れと、自殺の決行や突然知らない場所に飛ばされたことによる精神的な疲れで体は休息を求めていた。
(もう、どうにでもなれ)
そう思いながら目蓋を瞑り、ひんやりとしてごつごつした土の上で眠りについた。
「眩しい・・・」
眩しい光に当てられ目を覚ました。太陽の光が鯉の枝の陰から体に降り注ぎ、私の顔に暖かな陽だまりを作っていた。
死後の世界にも太陽があるのか?そもそもここは天国なのか?それとも地獄なのか?
そんな事を考えながら体を起こしてみると周りには昨日と同じ大自然が広がっていた
何処をみても周りには気と草しかない
「喉が渇いたな」
体についた土を払いながら呟く
死後の世界で喉が喉が渇くのは不思議ではあるが事実喉が渇いているので何かないかと周りを探してみる
今の恰好は昨日のバイト帰りと同じ格好でありパーカーにジーパンというラフなスタイルであり、財布はあるものの自動販売機などはもちろんない
「探すしかないか・・・」
ここが死後の世界であるならば長くいることになるだろうし、喉の渇きに苦しみながらいるのは嫌だ。ただもしそれが生前の私の行いに対する罰であるならば甘んじて受け入れるしかない
もうすでにかなり憂鬱であるがとりあえず周りを散策し始めた
しかし、歩いても、歩いても木々と草があるばかりでいつまだたっても欝蒼とした森が続くだけでいつの間にか夜になってしまった。
喉の渇きだけでもなく、空腹も感じてそこいらに生えていた名も知らぬ草を食べて紛らわした。不服ではあるが今日はこのまま眠ってしまおうと思い地面から張り出していた木の根を枕に眠りについた
そしてそんな日々が一週間も続いた
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
(苦しい・・・、頭がくらくらするっ)
適当に食べていた草で腹を壊すこともあり今や体の消化器官がその草すらも受け付けなくなっていた。
しかし、私はこの苦しみをどうにかしてほしいと思うと同時に安心していた
この苦しみが自分の過去の行いに対する罰になるのではないか、自分は今罪滅ぼしをできているのではないかそう感じたからだ。
もはや立つこともできず、地面に寝転がりこの罰を受け入れようとそっと目を閉じた
(また死ぬのか・・・」
そう思いながら私はそのまま意識を失った
目が覚めると木製の天井が目に入った。
また知らない場所にでも飛ばされたのかと考え体を起こす。体は絶不調であり、腹の調子も悪ければ頭もクラクラするが思考ははっきりしている。
とりあえず体を起こし周りを見ると古臭い暖炉とアンティークな家具の置いてある民家のような場所であった。そこには人が生活している形跡があり、私が森で倒れているところを救出されたと理解した。
ここが死後の世界でなく地球のどこかであり、私がまだ生きているのであればどうすれば良いのだろうか。自殺未遂をして、説明できないような超常現象で転移してしまったとしたならばどういった扱いを受けるのだろうか。想像しただけで憂鬱である。
(また自殺をしようか・・・)
そんなことを考えたが救出した相手が自殺したらを助けた人間に申し訳ない、せめて私を助けてくれた人間にお礼をいってからにしようと考え直した。
私は存外に義理堅い人間なのかもしれないと思いながら、家主の帰宅を待った。
それから1時間ほどだろうか、家主が帰宅した。木でできたアンティークな扉が軋みながら開いた。それと同時にやはりここは死後の世界なのではないかと思った。なぜならばその家主は異形であった。2mを超える巨漢、これだけなら元の世界にもいただろう。しかし、彼には天をつくような角が額から2本伸びていた。
(鬼だ・・・)
一眼見た瞬間そう思った。驚きすぎて声は出ずただひたすらに異形の男を見つめた。
次回 主人公の名前は?
オデ、オマエ、マルカジリ
お楽しみに!