第2話 卵
生き抜いてやるぜっ!!って覚悟したのはいいものの、どうしたもんかね〜。
なんたって俺絶賛卵状態だからね?ここから何もすることないよ?
そんな中ふと、俺の種族って一体何なのだろうって思ったその時、突然変な表示が目の前に現れた。
【インフェリアタッドポール】
なにこれ?いんふぇりあたっどぽーる?俺の知っている単語が全然入っていないんだが・・・、英語か?
俺の正体について考えていた時に出てきたってことは今の俺のことなのか!?
試しに他のものについても見てみるとしよう。
そう思い、まずは周りの他の兄弟達について見てみる。
すると、
【インフェリアタッドポールの卵】
という表示が視界を覆うように大量に出てきた。
ワーッっっ!こんな要らん!こんな要らん!!消去!消去でお願いします!
ふーっ。なんとか収まってくれた。
だが今の結果からどうやら俺の種族はインフェリアタッドポールだということが判明したな。
なんて感じで他にも見ていると、【水】や【山】なんて感じの結果しか出てこなかった。
そうやって卵の中からしばらく遊んでいると突然
【『鑑定』のLvが2になりました】
なんてアナウンスが聞こえてきてびっくりしました。
ええ、ほんとんびっくりしましたよ?
こちとら完全に一人優雅に過ごしていて油断して所に急に他人の声が聞こえてきたとあれば大慌てよ。
びっくりしすぎてあんまり聞けなかったよ。
まったくもう、しゃべるシステムがあるなら最初から言えってんだ。
そうしたら心の持ち方の一つもできたのに。
ええーと、『鑑定』のレベルがどうとか言ってたよな。
『鑑定』なんて能力を俺はいつ習得したんだ?気にはなるけどひとまずはおいておくか。
スキルがあるってことは、これは異世界ってことが確定になったのかな。
俺がある程度『鑑定』という行為を行ってからレベルの上昇が確認できたってことは、経験値が存在している可能性が高いという事だな。
この世界はゲームの世界によく似ているのかもしれない。
命の危険があるとはいえ、自分の体でそのようなものを体験するとは思ってもみなかった。
ゲームに酷似した世界と言うことは、こちらで生きる際にゲームの知識が生きる可能性も大いにあり得ることだな。
もちろん過信は禁物だけど。
なんで『鑑定』が使えるかはよく分からないけれど、使えるならば使った方がいいだろう。
とりあえずはレベルが2へと上昇した時の変更点の確認でもするか。
【インフェリアタッドポール:♂】
性別かよ。いやまぁ全く役に立たないって言うほどじゃないだろうけどさ、正直いらないよね。
鑑定はレベル2ではそれほど役に立つ状態ではないようだ。
それがあったところでって感じだし。
でもただいま絶賛卵状態でやることないし、ひとまずは繰り返し『鑑定』を繰り返し行ってレベリングを行うことから始めようか。
そして3日が経過した。
俺たちの卵はものすごくたくさんの量があるので隠れる気が一切無かった。
なので、もしかしたら他の生物に全部食べられてしまうのでは無いかと心配していたのだ。
だが俺が目撃したように親ガエルが武器にする程度の毒が卵の外側の部分には入っているらしいので、それを知っている生き物たちはこれを食べようとは思わないらしい。
しかし、全くいないわけでも無いようだ。
毒に強いやつなのかは知らんけど時折数個をぱくついていくやつもいたのだ。
意味が無いと分かっていても、自分が食われないように必死に息をひそめてしまったくらいだ。
本当にあれは怖かった。
何もできなくてごめんよマイブラザーズたちよ。
いつまでも卵の状態ではそういうときに怖すぎる。
早く動ける状態になりたい。
俺を含めた兄弟達が最初はただの黒い球(多分授業で習った胚)だったのが徐々に尾びれが生えつつあるので誕生の瞬間も近いのかもしれない。
ただ、毒のシールドの保護を失うのもそれはそれで怖いので、痛し痒しといったところだろうか。
うん?ところで『鑑定』の方はどうなったかって?まあまあそうあせんなって。
『鑑定』は無事にレベル5まで上げることができましたよっと。
いやー、これがほんとにきつかった。
レベル3までは比較的すぐに上げることができたが、そこから先が長すぎた。
卵ライフは前世に比べると時間が有り余る生活だ。
一応の仕組みとして、一度『鑑定』したものを再度『鑑定』する時には一定以上のインターバルが必要なようである。
しかし、それを差し引いても尚莫大な経験値を強いられるスキルであることに違いないようだ。
変更点としてはレベル3で視界全ての『鑑定』と個別ターゲティングでの『鑑定』をセレクトできるようになった。
これは非常に有能なアップデートだ。いや今までがゴミ仕様なだけというのもあると思うが。
今までは1回『鑑定』する事に視界が鑑定結果で覆われてしまい結果を確認しづらかった。
それに脳がクラクラするのだ。
経験値を稼ぐ面では視界を一括っていう方がいいが、実践的なのは個別のものだろう。
次にレベル4の時の変更点。
これは『二重鑑定』だった。
最初は何も変化がなくて戸惑ったが、鑑定した結果をより詳しく鑑定できることだった。
まだ情報が不足していている俺にとっては何よりもありがたいことであった。この結果についてはまた後でってことで。
最後にレベル5。
これはHP、MP、SPゲージの表示であった。
これによりステータスが存在することがわかった。
ますますゲームじみた世界だぜ。ちなみに表示されるのは俺だけだ。
まだ俺以外のステータスを表示することはできない。
多分もっとレベルをあげたら見えるようになるんだろう。
まじで初期に持っていて良かったスキルだぜ。
有用そうなスキルだけにこれからも引き続き適宜『鑑定』を実施して、レベルを上げて行きたいところである。
そして次の日。
体にエラが形成された。
もう体が完成し、卵を突き破れと本能が命じる。
今までの卵世界を別れることは惜しいが、悔しいけどこのゲームみたいな世界に少しだけワクワクしている自分を感じている。
でもクソゲーすぎんのは勘弁な?