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お題シリーズ

乙女ゲーム 手紙

作者: リィズ・ブランディシュカ



 バリン!


 しまった。


 やってしまった。


 怒りに任せてゲーム機を破壊してしまった。


 いやだって、納得できるかあんなエンディング。


 さっきまで部屋の中でベッドに転がりながら、だらだら乙女ゲームをプレイしてたんだけど、目が覚める思いだ。


 エンディングがひどいのなんの。


 攻略対象者達が勝手すぎる。


 婚約者をあっさりとポイ捨てして、ぽっと出のヒロインになびくなんて、人としておかしいだろ!


 くそっ、珍しくしつこく姉貴がすすめてきたゲームだからやってみたけど、胸糞じゃねーか。


 なんでどいつもこいつも、彼女(婚約者)がいるのに、そう簡単に捨てられんだよ。


 なんて文句を言ってきたら、当の姉貴が部屋に入ってきた。


「で、どうだった。感想聞かせて」

「ぜんぜんダメじゃねーか、このゲーム作った会社クソなんじゃねーのか?」


 俺は延々と駄目だった点を姉貴に述べていった。


 するとなぜか姉貴は「ふむふむ」とメモ。


 何やってるんだ?


 一通り愚痴り終えた俺は、姉貴の手元を覗き込む。


 俺が言った事ほとんど書いてあるじゃん。


「合格!」

「は?」

「いやー、純情な弟君にプレイさせて良かったよ!しっかり感想くれたしね」


 姉貴は、満面の笑顔で答えを述べた。


「実はこれ、試作品なんだよねー」

「なんっ」

「まだ開発中で、手詰まりだから誰か感想くれないかなって」

「んなっ」

「それで、女の子と付き合った事なさそうな弟君に、白羽の矢がたったわけ」

「おまっ」


 わずか数秒の間に、公開される怒涛の情報。

 俺は言葉をはさむどころか、ついて行くだけで精一杯だった。


 ていうか、姉貴がそんなもん作ってるなんて聞いてねーっ。


 俺も姉貴もまだ学生だろ!


「じゃあ、弟君はどうやって主人公ちゃんに告るのかな? どうやって元カノをふるわけかな?」

「い、いやそれはっだから」

「んんー?」


 姉貴は余裕の表情でこちらをおちょくってくる。


 それは、完全におもちゃを見つけた人間の目線だ。


「よし、純情が作った乙女ゲーとして売り出そう。コンセプトはどうて「やめろぉぉぉっ姉貴は俺を殺す気か」」


 そうなったら、もはや恥ずかしさのバーゲンセールだ。

 俺は必死の思いでメモを奪い取って、ビリビリやぶいた。


「あ、ちょっと何すんの!」


 そして、部屋から退出。


 もうやだこの姉。


 ちょっと外で時間つぶしてこよう。





 自分の部屋から出ていった弟の姿を見送った姉は、部屋のごみ箱に捨ててある手紙を見つけてつまみ上げた。


「恋文もらったなら、読まずに捨てるなっての。あんたモテるんだから、この先全部そうするつもり? さて、ゲーム部にいる彼女候補ちゃんにどうやって報告しよっかな」



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