タクシーの日
今日は、「タクシーの日」。
車内に響くハザードをたいてるカチカチ音がさっぱり気に
ならない程、親子3人は、その女の姿を固唾を飲んで見守っ
ていた。連れは無いらしく屋店で広げていた備品を詰め込
んだと思われる大きなトランクひとつ傍らに陣取っている
和服にたなびく縛った後ろ髪が優雅に舞う姿は、まさしく
大和撫子。ちょっとしたファッションモデルでも通用しそ
うな佇まいだった
「あなた、乗せてあげたら良いんじゃないの?」母の突拍子
も無い提案に男2人は思わず固まった。本来なら父の本心も
少なからず送ってあげたいと考えていたのかもしれないが、
目隠しするその異様な姿が戸惑わせ拒絶に転じたんじゃない
かと私は感じていた
バ・・バカな事を言うんじゃないよ!そんな父の声が上がる前
に女はタクシーを捕まえ乗り込もうとしていた。運転席から降
りて来た中年の運転手が、さも重たげに大きなトランクを抱え
車のトランクへ収めたところで一息ついた。袖口で額の汗を軽
く拭うと運転席へ乗り込み、やがてタクシーは走り去った
その一部始終をまるでお芝居を観る観客の様に家族3人が見届
けた。それから家へ着くまで不思議と誰もその話題を口にしな
かった。皆何を思ってたのか。あの女の行き先か、目隠しの理
由か、私は加えてあの素晴らしい切り絵と器用にハサミを操る
女の切り絵姿を思い浮かべていた。
つづく
明日は、「太陽熱発電の日」。
第4話目訪問者数7名でした。