野菜の日
今日は、「野菜の日」最終回です。
高校受験で本格的に忙しくなる前に家族で田舎を訪れた。勿論
妹の顔見せが1番の目的ではあったが。親戚宅に到着し怒涛の
抱っこラッシュに見舞われた妹は、終盤いよいよストレスを感
じ大泣きした。すぐさま母が抱き上げあやすとすんなり泣き止
むのは、やはり母娘の絆の大きさかと勝手に推測した
はいはいを覚えた妹はミルクの時間以外は何かと私に寄ってくる
それが愛おしくて可愛くて仕方無かった
「おい、季節外れのまつりやってるけど見に行かないか」
盆に訪れたまつりと場所が同じと父に聞き出掛ける気持ちが私の
背中を押した
盆とは違った盛り上がりを見せるまつりが盛大に開催されていた
「こんな時期に珍しいね」と父に話すと
「そうでも無いよ、俺達は盆休み中に帰るけど毎年こうして違う
まつりも行われてるんだよ。」と意外な事を教えてくれた
出店や雰囲気は、ほぼ一緒だが訪れるお客さんの格好が浴衣から
普段着へ変わった違いに気が付いた。やはり盆休みは特別な空気
感があるなと実感した。その時、一際賑わう出店が目に入った
途端にあの時と同じ感覚に見舞われた。まさか!と駆け寄り前と
同じ様に人混みを掻き分け最前列から顔を出すとそこに居たのだ
何年も気になり追い求めていたあの女が。同じ様に目隠し
してハサミを器用に操っていた。切り絵のレベルは年月が経ち
下がるどころか、ますます磨きが掛かった様に見えた。そうか
家へ帰ってきてたのか。まるで古い友人に再会した様な感動が
あった
「あ、あなた。何か切り抜きましょうか?」私の方をじっと向
き囁くその姿は、いつか見た夢の再現を見てる様な不思議な感
覚を覚えさせた
「あ、じゃあ・・・・」
「何だ、そこに居たのか・・お?ソレは?」味噌田楽を頬張り
遅れてやって来た父が私の持つ鳥の形をした切り絵を指差した
「妹への、ミ・ヤ・ゲ。」
「きっと喜ぶよ、母さん似だから。」笑顔で父が応えた。父と
感覚が似てる事が嬉しかった
家へ帰ると、父から日帰りと聞いていた婆ちゃんが母と共に
ウチの車を野菜で一杯にしてる最中だった。私達の気配に気
付いた婆ちゃんは、振り返り割れんばかりの笑顔で手を降っ
てくる。父と顔を合わせた
「婆ちゃんの野菜が美味い訳だ。」
終
単なる思い付き連載企画「8月物語」無事完結しました。長かった。長過ぎた。
中には、キーワードに対して強引だったり本当にカスっただけの回もあったと思いますが、毎日違ったテーマをネタに起用する書き方は難しくもあり、面白くもありでとても良い経験になりました。気が向いたらまた○○月物語に挑戦したいと思います。
最後までお読み頂いた方、ありがとうございました!。
ご意見ご感想など頂けると嬉しいです!