8忠誠
ここ最近は雨が続いた。
シーノは大好きなお庭遊びが出来ないのでふてくされていた。
しかし、今日は昨日までの雨が嘘みたいに空はからっと晴れている。
燦々と太陽の光が降り注ぎ、冷えた地面を温める。
「エレン、買い物にでも行かない?私とシーノと一緒に。」
「はい!光栄です!」
「?」
私はエレンとシーノと一緒に買い物に行くことにした。
リリのことはお世話係に任せて私たちは家を出た。
別にリリを連れて行ってもいいが、この三人で行ったらメイド長がどんな反応をするか気になる。
「お野菜でも買いに行きましょうね~。」
「はい。」
私たちはキャベツやコーンなどいろいろな野菜を買って店を出る。
「お肉を買いに行きませんか?不足しているんです。」
エレンの言葉で私たちはお肉屋さんに向かう。
「わあ!いっぱいある~。」
「ふふふ。そうですねえ。」
二人は笑いあっている。
(やっぱり気晴らしはいいわね。たまにはあなたにも笑ってほしいのよ。)
私は心の中でくすくす笑う。
「そろそろ帰ろうかしら。」
「そうですね。」
私たちは家路をたどり始める。
やがて、花が咲き乱れる小道に出た。
「きれいなお花だね!」
シーノは喜んでいる。
「タンポポがたくさんあるわね。」
「そうだ!」
エレンがタンポポを一輪摘み取った。
「はい、お嬢様。」
「タンポポ?」
シーノがタンポポを手に取る。
「あなた様には、豪華なバラや花壇のパンジーよりも、道端で頑張って咲くタンポポが似合います。だってあなた様もこの花のように頑張り屋で、みんなを笑顔にしてくれるんですから。」
シーノがタンポポ、ね。
花言葉は誠実だったり、幸福だったり。
(エレンはスミレのような忠誠心を持っているのね。)
まあシーノが来て喜ぶのも当然だろう。
今までずっとこんなことなかったから。
「ありがとう、エレン!」
「喜んでもらえて光栄です、シーノ様!」