4お嬢様の洋服
「お母様ー!綺麗なお花を見つけたよ!」
シーノが私に寄ってくる。
言葉遣いを変えるのは失敗したが家の人たちの呼び方は覚えたようだ。
「きれいねえ…あら?シーノったら服も手も汚れてるじゃない!」
シーノは土でも掘ったのか手や服が汚れていた。
「早くお風呂に入っちゃいなさい。」
「うん。」
私はシーノの持ってきた花を花瓶に挿して、シーノに服を渡す。
(そういえば、いつもシーノが着てる服ってリリと全然違うわね。)
シーノの服はここに来たとき着ていた服と(孤児院から持ってきたと思われる)お気に入りの三着の服だ。
しかし、普通の服より少し丈が長いワンピースだった。
リリが着る服はリボンがついていて裾も長いひらひらした服だ。
「シーノ、お姉さまが来ているような服を着てみたいと思わない?」
「うん!着てみたい!」
「じゃあこれはどうかしら?」
私はリリが着ているような服を取り出す。
「これ、ぶかぶかだよ?」
「あ、これリリのだったわ!今度、エレンと一緒に買いに行きましょう。」
「はーい。」
私はエレンが掃除している廊下へ向かう。
「エレン!今度、シーノと私と一緒に服を買いに行かない?」
「ええ、いいですよ。喜んで。」
エレンの了承を得たので、数日後に服を買いに行くことになった。
「どんな服にしようか、シーノ。」
「うーん、あ!あの服がいい!」
シーノは駆けだす。
「危ないから走らないでくださーい!」
エレンが慌てて追いかける。
「これって、いつも来てる服と同じようなやつよね?あっちにある、お姉さまが着てるような服は?」
私はもっとかわいい洋服のコーナーを指す。
「やっぱりこっちの方がいいよー。」
「えー、でも…。」
「まあ、シーノ様がそう言うなら、いいんじゃないですか?」
エレンが言った。
「なら、まあいいかもね…。」
こうして新たにワンピースを二着買って家へ戻った。
「ねえ、本当に良かったの?」
「うん!よく来てるやつの方がいいって気付いたもん!」
シーノはにこにこしている。
確かに、着慣れているものの方がいいかもしれない。
でも…。
(授業も失敗したし、服もいつもと同じだし、なんかお嬢様のかけらもない気がする。)