3お嬢様になるための授業
後日、エレンがシーノのためにクッキーを持ってきてくれた。
「わーい、おいしい!ありがとう、エレンさん!」
シーノは満足げに笑っている。
「か、かわいい…。」
「何か言った?」
「い、いえ!喜んでいただき、恐縮です!では!」
エレンは慌てたように部屋を出た。
「そんなにびっくりしたのかしら?あ、シーノ。今日もユミリーが来るわ。でも、教育係として来るからね。言う事聞くのよ。」
「はーい。」
シーノはまだここに来たばかりで全然お嬢様らしくない。もっと礼儀正しくなればと思ったのでユミリーにお願いしたのだ。
まあ、リリはあまり礼儀正しくならなかったが。
「こんにちは。教育に来たユミリーです。」
「はい、こんにちは。シーノをよろしくね。」
ユミリーは早速シーノの元へ向かう。
「こんにちは妹様。今日は妹様が完璧なお嬢様になれるお手伝いをします!」
「頑張ってシーノ。これ、私がやった時は大変だったよ~。」
リリがため息をつく。
「よ、よろしくお願いします。ユミリーさん。」
リリの言葉を聞いて緊張したのかシーノは肩をすくめている。
「まずは、このお屋敷の人びとの呼び方を教えます。母のレイ様のことはお母様。父のジョーンズ様のことはお父様。姉のリリ様のことはお姉さま。そして、私たちに様なメイドは呼び捨てで良いです。」
「ユ、ユミリー?」
「はい!では次に言葉遣いです。何とかだよ!とか、なになにしよう!などは避けてもらいたいです。何とかよ、とか、なになにですわ、などにしてもらいたいです。自分のことは私と呼んでくださいね。」
「お姉さまはあんな言葉遣いでいいの、かしら?」
「うっ。まあそのぉ…私の教え方が下手だったのでねえ…。」
ユミリーは苦笑いをしている。
このように、ユミリーの教育は進んでいった…。
「シーノ、どうだった?」
一時間ほど経ち、私はシーノに尋ねる。
「とても良い授業でした。たくさんのことが覚えられてうれしいです。」
シーノは無事授業の内容を飲み込んでくれたようだ…
「…。」
「どうしたの?」
「あんな授業やだよーー!今までと同じしゃべり方でいいでしょーーー!!」
…と思ったのは私の勘違いでした。