16熱を出したお嬢様
今回からシーノが語り手です。
「うーん、むにゃむにゃ…。」
朝日の光が目の奥に差し込む。
(あれ、頭が重い…。)
いや、頭どころか体が重い。
「うー、起き上がれない…。」
体も熱くてだるい。
「ねえシーノ、どうしたの?まだ起きてなかった…の?」
「お母様~、風邪ひいちゃいました~。」
「シーノ様ーー!だーいじょーぶですかあ!」
「おはよう、エレン。今日も元気だねー。どうしたの?」
「お母様から言われてきました!」
「ねえエレン。シーノが熱を出したの。看病してくれない?」
「えっ、シーノ様が熱を出した!?ご安心ください、わわわ私が必ず治して見せます!」
「というわけで大病にかかったシーノ様を看病したいと思います。」
「大病じゃないっす。」
「あらあら、口調もお変わりになって。大病じゃなくても病気なんでしょう?」
「ただの風邪です。」
こりゃ騒がしい人が来た…まあいい薬になると思う。
「冷やしたタオルを当てますよ~。」
「うーん、気持ちいい~。」
「おかゆですよ。」
「ありがとう。」
「熱が下がってきましたね。」
「そうだね。昔から風邪はすぐ治ったから。あと、エレンの看病のおかげよ。」
本当に、この家はいい人ばかりだ。
私はなんて幸せなんだろう。
「今夜は何食べます?おかゆにしますか?」
「ええ。」
(名前、いつ言おうかなあ。)
なかなかいう機会がない。
「では、皆様のご飯を作ってきます。」
「ねえ。」
「?」
「あの、今日はありがとう!」
「…どういたしまして、ですわ。」