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母は帰国後、サングリア王国の王太子であった現国王・リービッヒ叔父様にすべてを打ち明けた。一夜の迷いである男性と関係を持ってしまったこと、そして帰りの道中で発覚した妊娠のことを。ただ、その男性が王様であったことは伏せて。もちろんリービッヒ叔父様は激怒したが、母はばれずに自分の手でこの子を育てたいと叔父様を説得し、オジサマの伝手である男爵の養女として生活を始めた。しかし、疫病が流行り、私が3歳の年にあっけなく息を引き取った。
母はきっちりと遺言を残していて、
「あなたがこの手紙を読んでいるということは私はもう死んでいるのですね。
今まで言わなかった本当のことをを伝えします。
この子は、セントブルーム皇国の王様との子です。
黙っていてごめんなさい。
この子を愛した人との子を奪われるのが怖かったのです。
彼には愛する妻がいて、私はただの一夜の迷いの女です。
彼の愛した人も傷つけたくありませんでした。
ですが、私が死んだとなれば、この子を守れるのは彼ただ一人です。
この国では、未婚の母である私の娘ではこの子が生きにくいと思うのです。
お兄様が間違っても育てるのはをやめください。
必ずこの国での争いのもととされてしまうでしょう。
彼ならばこの子を大事に育ててくれるでしょう。
今まで黙っていたことは、私の死をもって許してくださると願っています。
そして彼の愛した彼女ならば、彼の子であるこの子を守ってくださるでしょう。
いつか、お兄様に預けた箱の中にそれを証明するものが入っています。
それとともにこの事実をを伝えしていただきたく存じます。
これはお兄様にしか頼めないことです、叔父としてしっかりとこの子を遠くから支えてやってください。
兄不幸な妹でごめんなさい。
娘がアンジェリカが幸せになることが私の最後の願いです。
アンジェ、幸せになりなさい。」