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最強の成長するユニークスキル異界の心臓で、異世界無双 ~エルフ美少女に愛され養われ、精霊美少女にも愛されてハーレム状態~  作者: 手ノ皮ぺろり
第一章『精霊の森』五幕『異端の来訪者』

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耳は体を表す

 度重なる失敗に、少女は悔しさを全身で表現し、地団太を踏む。その美しい顔も少しばかりの歪みを露呈していた。

 可愛い顔なのに勿体ないな……。感情表現が豊かと言う事でもあるが。

 それだけこの妙なゲームに拘りがあるのか? 言葉探しゲームとでも呼ぶか。

 勝利条件は俺にとってクリティカルな言葉を探し当てて、それを口頭で解説させて恥をかかせる、ってとこか。

 ゲームに勝ちたい気持ちは俺にもよく分かるけど……。


「ぐぬぬぬ。許さぬ! 許し難い蛮行じゃあ! 儂の誇りを傷つけた罪、どう贖うつもりじゃ!?」


 怒り心頭って様子だな。前から気になってたけど、こいつ。ただの精霊じゃなくて何か特別な存在だったのか? 言動から察するにそんな感じがするが……。


 神とかだったりして? んな訳ないか。


「くふふ、くふふふっ。よかろう、儂も覚悟を決めたわ。これより背水の陣を敷く。おんし! 逃げ場はないぞ?」


 何か一人で盛り上がって、妙なテンションになってるな。何だよ背水の陣って。

 アイシャは少女の後ろで落ち着かない様子で見守っている。

 何度も続く、まったく無関係な言葉の強制、下ネタ化もここまで来れば一種の芸にも思えて来る。恥をかくのは目の前の少女なのだが。


 少女はまた俺の左手を取った。一段と強い力が込められる。


「此度こそ! 真なる符合を引き当てるぞ! 見ておれ、笑っていられるのも今のうちじゃ!」


 掌に噛みつきそうになりながら、唸り声を上げる。


「見えた! これじゃあ――! さいていちんぎん! さいていちんぎんとは何を示す!」


 もうそのちん縛りを止めたらいいのにな……。


「はあ、それは労働者に支払われる賃金の下限の事だよ。もう諦めたか……?」


 少女は頭上に稲妻でも落ちたかの様に、驚愕の表情を示し、その場に崩れ落ちた。


「なん、じゃとぉ……? 労働者の……賃金? おんしの下劣な一物がいきり立つ事ではないのか……? ぐすっ」


 ぶふっ! その想像力のたくましさに感服するよ。


「でも女の子がそんな下品な事を口にしちゃダメだからな!」


 すかさずフォローしておく、いや、これは死体蹴りか……?


「うううう」


 少女は放心しきった様子で、しばらく呻いていたが、再びこちらを向いた瞳は潤んでいた。

 泣くほど悔しかったのか……?


「まだじゃ、まだなのじゃ。負けぬぞ、儂は……!」


 目を潤ませながら言う事かよ。

 それに、俺の心は下ネタ百科事典じゃないぞ! そんな都合のいい言葉が幾つも転がってる訳ないだろ?

 アイシャは心配したのか少女の肩にそっと手を置いた。慰めようとしているのか?


「くひひっ」


 んなぁ!? 何だ今の不気味な笑い!?

 少女は俯きながら肩を震わし、口元から怨嗟とも取れる笑いを漏らす。


「くひひひっ。もうよい、儂が愚かであった。もはや――、おんしの心には頼らぬ! 儂みずからの力で道を拓いてくれようぞ!」


 はあ!? ゲームのルール自体が変わってるぞ!?


 少女は勢いよく立ち上がり、勝利宣言をする。


「さあ、心して答えるが良い! せいほうけいとは何じゃ!」


 その言葉を聞いたアイシャがすかさず答える。


「え? それって、辺の長さが等しくて直角で結ばれた四角の事でしょ?」


 少女はにやつきながらアイシャを一瞥する。


「これだから小娘は、儂の深遠なる智慧には思いも及ばぬか」


 いや、これもただの下ネタだろうがぁぁぁ!


「お、俺は――! かぶってなんかいないぞ!」


 こちらをみやる少女の眼光がにわかに鋭くなる。


 しまった! まんまとはめられたか!?


「くふふっ。何を言っておるのじゃ? 儂は正方形とは何じゃと問うただけよ。おんしは一体なにを思い描いたのかのう? 想像は、内面を映す鏡なのではなかったかの?」


 くそぉ! 藪蛇! 頭を抱えてうずくまりたくなる。久しぶりだな、この感覚。


「くふふっ。それに、言葉では何の証にもならぬぞ? 是非ともこの眼で確かめねば!」


 ぽんっ! その光景に自然と擬音が再生される。

 なんとアイシャが少女の頭部を軽く叩いたのだ。

 少女は恨めしそうに振り向いた。


「小娘! 何をするか! 儂を誰だと心得る!」


 アイシャはそのまま少女を抱きしめた。困惑した様子の少女は罵倒も出来ずに、無言になる。


「もういいんだよ? お化けさん。これだけ頑張ったんだから負けを認めたって、誰も貴方を馬鹿にしたりしないよ?」


 少女は無言のまま震えている。

 何だ? 感極まったか?

 抱きしめられる少女からは小さく「ありがとう」と聞こえた気がした。


「え? 今なんて?」


 アイシャの優しさに触れて、傲慢な発情精霊も心を入れ替えたのか? 感動的なシーンだな。


 だが――。


 そう思ったのも束の間。

 少女の口からは思いもよらない言葉が躍り出す。


「くふふっ。精を出す! 精を出すとは何じゃあ!?」


 そのままアイシャを押しのけ、俺に向き直った。


「え!? 一生懸命はたらくとかそういう意味じゃ――あ!」


 何かを想像してしまったアイシャは赤くなって俯いた。その身体は小刻みに震えている。


 ここ、こいつぅ! 見事に恩を仇で返しやがったなぁぁぁ!?


「くひゃひゃひゃ! 良いぞ! 真に良い反応じゃあ!」


 もう笑い声も滅茶苦茶じゃねえか!?

 その場にはしばらくその珍妙な奇声が響き続けた。


「はあ、こいつ。テンション上がると無茶苦茶になるんだな。理知的な態度を崩さない大人かと思ってたのに……!」


 笑い疲れたのか、大人しくなっていた少女が、こちらを満面の笑みで見つめる。


「こんなに腹の底から笑ったのは生まれて初めてじゃ! まったくおんしとおると初めての経験に事欠かぬな! 実に気分が晴れやかじゃ! 今の無礼な言も聞き流してやろう」


 無礼なのはどっちだよ……。まだ赤くなって部屋の隅で震えるアイシャを見て気の毒に思う。心底。

 しかし、ここで終わってくれるのなら、アイシャの苦労も報われた事になるのか。


 だが、予想は裏切られ、少女は新たな凶事を呼び込む。


「穴があったら入りたい」


 はあ!?

 少女はアイシャをみやり、無情な言葉を投げかける。


「とは、今のそなたの状態を示す言葉かのう? しかし、穴とは一体なにを示しておるのじゃろうな? くふふふっ」


 お、おまえぇぇぇ!

 睨み付ける俺に気付いた少女が、勝ち誇った笑みで答える。


「おんしの入りたい穴は果たしてどちらかのう? のう? カイト」


 もうやだこのヘンタイ!


「片方はいつでも空いておるぞ!」


 ある考えが頭に浮かび、無言で少女に近づき、人差し指で唇を塞ぐ。


「むぐぅ!?」


 不意を突かれたのか、まったく抵抗できずに指を受け入れた少女は、頬をほのかに染めながら、大慌てで離れた。


「ぶ、無礼者! 儂の高貴なる唇に無遠慮に触れるとは……! いくら儂が認めたおのこでも分は弁えねばならぬぞ?」


 くくく、思った通りの効果だ。もう少し黙ってもらおうか。

 再び指を伸ばし、唇に触れる。


「むぐぅ!?」


 少女は目の端に涙を溜めながら、こちらを無言で睨んだ。


 くくく、やはり相手から触られるのは、相当こたえるようだなぁ。いいぜぇ。その下品な口。お望み通り俺が塞いでやるよ。


「な、何をするの――むぐぅ!?」


 あらあら可愛い言葉遣いになっちゃってぇ。


 少女が逃げ出すたびに指を伸ばし、唇に触れる。それの繰り返し。

 しばらくすると少女は息を荒げ、朱色に染まった頬を隠す様に俯きながら動かなくなってしまった。


 ふぅ。ミッション完了。


 いつの間にかアイシャもこちらに戻って来ていて、大人しくなった少女の様子に苦笑する。


「もう、カイト? あんまりいじめちゃダメだよ? こんなに可愛い子に好かれてるんだから大事にしてあげなきゃ」


 はあ、アイシャは大人の余裕と言うか、風格があるなぁ。伊達にお姉さん風は吹かせてなかった訳だ。さっきのキス騒動の時はどうなるかと思ったけど。


「なあ、そろそろ本題に戻らないか? 服、どんなのが好みか知りたいんだろう?」


 俯き動かない少女に声をかける。

 するとぱっと笑顔の花が咲き、こちらを覗き込む目に期待がありありと見て取れる。


「くふふっ。愛いやつじゃ、初めから素直にそう申しておれば良かったものを」


 ははは、態度は変わらないな。


「では、カイト。この食卓の前の椅子に腰かけよ」


 言われるままに椅子に座った。


「そうではない、食卓の反対側を向くのじゃ」


 反転し、食卓を背にした瞬間――太腿のあたりに重みを感じた。

 みると少女は俺の膝の上に座り込んで、楽しそうに脚を振っていた。鼻先に触れる距離にある銀髪がかぐわしい匂いを放つ。


 何だ、この状況は?


 隣に立っていたアイシャに目をやると苦笑しながらも、状況を受け入れている様だ。

 

 膝の上の少女からは鼻歌が漏れ聞こえる。何やら一気に幼くなった気がするな。

 少女はそのまま俺に身体を預け、すり寄って来た。


「くふふっ。やはり肉体は良い。なければ斯様な経験は出来なんだ。それに、この状態が最も良く心の内を引き出せるのじゃ!」


 そして、俺に手を握る様に促す。


「手よりも今は、儂を後ろから抱きすくめたい気分かの? ならば、そうしても良いのじゃぞ?」


 上機嫌だが、誘惑してくるのは相変わらずだ。


「はいはい。……このまま手を握ればいいのか?」


 少女は無言で頷く。少し、恥ずかしいな。

 腹部に揃えられた少女の両手を後ろから回り込んだ左右の手で握る。

 ああ! これだと抱きしめてるのと変わらないじゃないか!?


「くふふっ。かかったの! ああん! カイトが儂に欲情して斯様な大それた真似を……! これ、そなた! 何を呆けておる! はよう助けぬか!」


 んなぁ!? 何いって!? てか、そんなわざとらしい嬌声どこで覚えたんだ!?

 アイシャは苦笑しながら状況を見守っていたが、少女の傍若無人な態度に徐々に苛立って来たのか、不満気な表情に変わる。


「も、もう! 私だって、そこに座りたいのを我慢してたのに……! そんな事までして! ずるいよっ!」


 アイシャの言を受けて、少女は楽しそうに笑い転げる。


「くふふ、くふふふっ! そうであろうな! 真に愉快な小娘じゃ!」


 いや、アイシャが座りたいのならいつでもウェルカムだけど、ちょっと大きすぎて、居心地が悪いかな……?


「むぅ。カイト? 今、何を考えたの?」


 頬を膨らましたアイシャに問い詰められる。

 心を読まれた!?


「ほれ、余興はそこまでじゃ、さっそく始めるぞ!」


 自分で始めたくせに勝手に仕切るなよ……。

 少女は握られた手を小さく動かしながら、何事かを呟き始めた。


「ふむ、ふむぅ。そうじゃ、まずはもっと良い外見の模索じゃ……」


 今度こそ心を読まれてるのか? 何かくすぐったい感じがするな。


「ふむ。獣耳……? とは何じゃ?」


 獣耳? 猫耳とかそういうのか?


「ほう、ほほう! これは、中々に愛らしいではないか! これじゃ! 儂が求めておったのは……!」


 何だ!? 俺の記憶を探ってるのか……!? 獣耳ならゲームで良く見るが……!

 続く少女の言葉を待っていると、髪の毛がふわりと揺れたので、無意識にそちらをみやる。すると――!


「ええ!? そ、その耳! どこから出てきたの!?」


 アイシャの驚愕の声が響く中、俺が目にしたのは、少女の頭部に生えた猫耳らしき物体だった。


「どうじゃ? これは? 愛らしい儂によくにおうておるじゃろう?」


 少女は嬉しそうにみせびらかす様に、声を弾ませる。

 アイシャは羨ましがっているのか、口をきつく結んで頬を紅潮させているが、瞳は輝いていた。

 ふむ? 猫耳とかは女の子にも受けがいいのか……?

 そうえいば、アイシャは猫が可愛いから好きって前に言ってたっけ。


「ふふん。羨ましいか? 小娘、儂にしか出来ぬ事じゃ、そなたは一生、その長耳で暮らすが良いぞ!」


 目の前に現れたぴょこぴょこと動く可愛い耳に目を奪われ、思わず手を伸ばしそうになる。

 それが伝わったのか、少女は半分こちらを向き、片目で俺の心を覗き込む。


「何じゃ? 今、手が動いた様じゃが。……触れてみたいのかの? くふふ。おんしになら良いぞ? ほれほれ。どうじゃ? この動きは、本物の様じゃろう?」


 耐えるんだ。触ったら負けだ……! くそぉ、そんな誘う様な動きで惑わして……!


「だ、ダメだよカイト! そんな可愛い耳に触ったらダメなんだから! えっち!」


 横からおかしな罵倒が飛んでくるが、この衝動は確かに抑えがたい……。

 アイシャは自分の耳が触られた時を思い出しているのか。赤くなり、落ち着かない様子で耳を隠す。


「ふむ? 必死に堪えておるのかの? 愛いやつじゃ。おんしらには受けが良い様じゃが。儂はもうちと大きめが好みじゃ。どれ――」


 何だ? 大きめ――? そう考えた一瞬のうちに耳は更に伸び大きくなる。

 ふおぉぉぉ! 耳の中を覆った柔らかそうな毛が外側に飛び出て……! さ、触りたい!


「ふむぅ。これは――狐耳と呼ぶのかの。ふむふむ。配色は髪色に合わせても良いし、本物の狐を元にしても良い、と――ならば、儂の美しい銀の髪に合わせて」


 狐耳!? これは猫耳よりもどこかマニアックな気配がするな……!


「おんしの心は便利じゃのう。ふむふむ。この耳は先ほどよりも気に入ったぞ。では、これに相応しい装飾を――」


 アイシャが震えながら口を挟むが、全身から羨むオーラが噴出していた。……元気だして、エルフ耳も十分に可愛いよ。と心の中で慰めておく。


「狐はそんなのじゃないよ! 本物の狐は耳の先に口があるんだから!」


 えええ!? 突然、何いいだすんだ!? あ、でもあの鹿の例があるし、この世界ではそうなのかも?


「ふむ? 口とな? カイトの心の中の図像と異なる様じゃのう。……儂はその様な化生の身は好かぬ。これでよい。」


 「むむむ」アイシャは悔しさで唇を震わせた。


「ふむふむ。耳に合わせたあくせさりーは……? あくせさりーとは何じゃ? ふむ。耳飾りの事かの? まあよい、図像を見れば、言葉がなくとも分かる。……耳元で結んだりぼんも可愛らしいが、さらにそこに大きな鈴を合わせて、和洋を融合させたでざいんを取ってもいい。……でざいん? ふむ。言葉はいまいち釈然とせぬが、こうかの?」


 少女の狐耳の根元あたりに赤いリボンが結ばれ、リボンの紐に括り付けられた大きな金色の鈴が現れる。思わず横から覗き込んで、成り行きを見守ってしまった。


「ふむ! こうじゃ! これが良い!」


 横から見た少女の顔は輝いて見えた。それに対して、アイシャはやはり羨ましそうに顔を紅潮させ、もはや我慢できない様子で涙目になっていた。結ばれた口は震えて頬も膨らんでいる。


 耳とその装飾品が決まり、心から嬉しそうな声を上げる少女を眺めながら、俺のゲーム人生も人にプラスの影響を与える様な何かがあった事に喜びを隠せない。満ち足りた気持ちになりながらその様子を見守った――。

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