分解処理
ミャオが受け取った情報は恐ろしいモノであった。機体が文字通り分解したからだ。恐ろしく古くいったい何年稼働してきたのか分からない外骨格は吹き飛ばされ、内部構造がさらけ出したのだ。そのとき、はじめて自分の身体の内部を知ることになった。永久炉によって稼働し続けてきた内部を!
かつて人間だったミャオは恐ろしい記憶が蘇って来た。生きたまま機械に改造されたことを! それも意識あるままで!
元の姿はほとんど覚えていないが、体中強烈な圧力で押しつぶされる感覚の後、体の中にとても熱いモノが挿入され、急激に自分が自分でなくなる感覚を受けた。しかし、元の自分とは一体何かは思い出せなかった。どうも、その熱いモノを引き抜こうとしているようだ。
ミャオを構成していた部品は容赦なく分解処理されていった。手足の動作装置、胴体の物質処理装置など、人間でいえば筋肉や内臓に相当する部分が急激に失われていった。機械の部分だけを! そんなことをすれば機械娘の自分の存在が消え、いえ永久に稼働停止するというのを理解できた。それは機械の活動停止、人間でいえば死を意味していた。
死? それはミャオからすればどうでもいい事なのかもしれないと思った。もはや自分の存在意義といえば海辺に集まる猫たちが飢えないように釣りをするだけだ。それから解放されるはずだ・・・でも気がかりがあった。クリスだ! こんなところに彼女を連れてきたままだ! 彼女だけはどうにかしないといけない! そのときだった、剥き出しになった電脳にあるメッセージが入った。心配無用と。どうやら、それはミャオを分解処理している何らかの意思と同じのようであった。
心配無用? なんだろうそれは? 機械娘を解体する目的なんて? 新規に作成? でも機械娘の残骸はあっても材料となる人間なんてもう存在しない! 修理? 修理したところでいまさら何の役に立つというのだろうか! 全てを終わらせる? むしろそっちの方がよさそうであった。かつて繁栄し滅び去った人類は消えてしまったのだから! もしかすると、この地球上で最期の人類の也の果てなんて、消えてしまえばいいんだ! そうミャオは思った。
その時、ミャオのボディに残ったのは、電脳と情報伝達装置の束と永久炉、そして何なのか分からないブラックボックスだった! そのとき、電脳と永久炉との連結が解除されてしまった! ああ、自分はこれで死ねるんだ! そう安堵した。自分の死が本当の人類の死のように思えたのだ。でも、本当の最後はまだやってきていなかった!