機械と子猫 荒野を往く
ミャオが出発して一昼夜が経過した。進むにつれ、かつての大都市の跡のような場所を通過していた。そこは高層ビルの残骸のようだった。人類の文明の象徴であった高層ビルは長い風雨にさらされ腐食が進行し、ついには倒壊していた。その残骸の上に草木が生え人類が作り出した醜い造形物を覆い隠そうとしているかのようであった。
籠の中でアリスはミャーミャーと泣いていた。お腹がすいたようであった、それに閉じ込めていてかなりイライラしてるようでも見えていた。それにもかかわらず籠の蓋を開けても逃げ出そうとしなかった。どうも彼女はミャオに保護されているという感覚があるのかもしれなかった。そして何かいいことがあるとでも思っているのでかもしれなかった。
ミャオの電脳の中で発せられたオメガ指令は、ある地球上のポイントに行けというものであった。そこはどうもに何があるんだろうかと考えていたが、封印されていた情報にアクセスすることができた。そこはかつての宇宙港であったようだ。そこに向えというもののようだ。しかし何のために?
旅を続けているうちに、ミャオはだんだんと自分は何者であったかっていうことを思い出してきた。かつて終末の戦争の末期、孤児になった素体となった少女は、いずれかの軍事勢力かによって機械兵の材料とされたようだ。
人格は否定され破壊と暴力のための道具とされた。生身の体は部品として使われ、金属と樹脂とその他まがい物の材料と合成されてロボットとされたわけだ。それにしてもロボット兵をそんなような作り方をしたかは分からないが、おそらくは一から作るよりかは早かったのかもしれない。まさに鬼畜の行いであった。そんなことをした報いはすぐに現れた。戦が続くにつれて新たな人類が生まれなくなったのだ。そして戦いが終末を迎えた時、この地球上には人類という愚かな種族は消えていった。
そんな絶滅した地球人類のことはもう関係ない。今のミャオにとっての謎はオメガ指令を出した存在は誰だということだ。もはや人類はいないというのに一体どんな存在であるの行ったのだろうか? ただそのポイントにだけ向えという事であった。無論ミャオはそれに従わないこともできるはずであったが、なぜか従っていた。神様にでも導かれるかのように!
ミャオは漠然と行きたくて仕方がなかった。そこにいけばアリスとずっと平穏に暮らしていけると思ったからだ。アリスに餌をあげてる間、空を見上げていた。鬱蒼とした密林の上に広がる、あの空の向こうに一体何が待っているだろうかと? 指定された期日まで、あと3日とせまっていた。