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3Dプリンターで異世界調査はじめました!  作者: しゅーる君
調査報告書①
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調査報告書① 爆発は突然に

マーサさんの手下袋を回収するため、

日が落ちかけている草原に戻ってきた。

夜になれば魔獣が活発になるので、

村の周りには魔獣除けの結界が張り巡らされている。

日が落ちてから結界の外に出る人はまずいないらしい。

まぁ、今ならなんとか間に合いそうだから、

ついでにもう一匹ストレイキャットを捕まえようと、

自分自身を撒き餌とする捕獲作戦を決行する。

作戦と言っても、ここでじっとしているだけなのだが・・・


寝っ転がった方が魔獣は素早くやってくる。

魔獣は死肉を食べない。

もっとも食われるという事は死んでいる訳なのだが、

魔素(ナマ)を効率よく吸収するために、

新鮮な肉を食らうという事なのだろう。

基本魔獣はそれ以外の食事はとらない為、

死肉などあさる事はないらしいが、

弱った生き物をみれば、

本能的に襲い掛かってくるらしい。


日没まであと30分。

村まで走れば10分程度、

もう少し粘ってみるか。


それにしても虎の子の銀貨1枚はたいて得たのが、

『洗礼という経験』だけというのはもったいなかった。

金貨1枚という選択枝の事は、

悔しすぎるからこれ以上考えないようにしよう。


魔法が使えるってどんな感じなのだろう。

僕が魔法を使えるって知ったら、

兄さんはどんな顔をするのだろうな。

研究者であった兄は空想の世界とは一番縁遠い存在だと思っていたけど、

空想の世界をそのまま描いたようなこの異世界を研究対象としていたなんて、

今もって僕には理解することが出来ない。


ヘンだな。

いつもはそろそろやってくるはずの魔獣の気配が全くない。

天を仰ぎ見ながら、開いた右手の掌を高く突き上げてみた。

左手は右手の手首を逆手で握りしめる。

ライフルを構えたハンターのような気持にひたりながら、

空に輝く一番星めがけてこうつぶやいた。


「ばん!」


そして目の前が白一色の世界に包まれる。

洗礼の時に似た強い光の世界だった。

何が起こったのかは分からないが、

僕の周りを透き通る緑色の壁が円形状に包み込んでいる。

大地が、空が、空気が激しく振動しているのが分かったのだが、

それが何かという事だけは分からなかった。

右手に光が集約し天高く打ち上げられたかと思えば、

その反動で僕の体は地面にめり込む様な強い衝撃を受けた。

緑色の光の壁のおかげで、僕に直接的なダメージは無いけど、

足元の地面以外は全てえぐれている。


【マスター緊急事態です。今マスターの右手付近で『ゲート』が出現しました】


慌てた様子のエミリーからアナウンスがあった。

今のはいったい何だったのか。

この様子ではエミリーに聞いても答えは得られないだろうな。


「いや、『ゲート』より前に何か聞くことがあるんじゃないか?」


【まだ金貨の事を根に持っておられるのでしょうか】


「そうじゃなくて、いま僕の右手からなんかすごいものが飛び出していかなかったか?」


【『ゲート』出現に全センサーを集中した為、なにやら飛び出したと言われましても説明できません。マスター、また私を試そうとなにか高度なテクニックをお使いになられましたね。マジックの基本であれば飛び出すのは『鳩』が定番でしょうか】


「うーん、どう考えても鳩が飛び出した衝撃じゃなかったぞ」


半径30メートルほどが半円状にえぐれている。

僕が立っていたところだけがかろうじて残っている感じなのだ。

さっきの緑色の光の内側だけ被害を免れているようだった。


「エミリー、現在のシンクロ率はいくらだ?」


【現在5%。変わりありません】


「よくわかんないけど、いまのって『魔法』だったんじゃないか?」


【先ほどの洗礼では詠唱式の恩恵は無いとされております。マスターはなにか魔法の詠唱を唱えられたのでしょうか】


「いや、『ばん』とだけ・・・」


そんな擬音で魔法が使えるならば、

この世界の魔法使い全員を敵に回すことになるだろう。

魔法なには『長文詠唱』と『短文詠唱』ふたつの系統に分類されるって司祭さんから聞いていた。

もちろん『長文詠唱』の方が、より多くの魔素(マナ)を精製することが出来るため、

効果の高い魔法が発動できるという事だ。

『短文詠唱』は主に魔法剣士などが用いる、

比較的魔素(マナ)の消費が少ない効率的な魔法なのだが、

その分効果のほどは薄いらしい。

あの破壊力の「なにか」が短文詠唱の軽い魔法であるはずがない。

でも僕には神様から授かった詠唱式が無い訳で・・・

混乱しているのはエミりーも同じだった。

僕の上空ではサテライトドローンが数基、

敵の接近や情報収集の為ホバリングしている。

偵察用のマイクロドローンとは役割が違っていて、

僕のボディーガード用のシステムなのだが、

下からは遮蔽機能が働いており、

どこにいるののかまったく分からない。

けれど、先ほどの「なにか」によって1基残らず塵と消えてしまったようだ。

そのロストした事実をエミリーは見落としてしまった。



「・・・貴様、何者だ」


切り裂くような鋭い口調。

だれかが僕をみつけて話しかけてきたのだろうが、

さきほどのアレを目撃されていたとすれば厄介そうだ。

「あれは何だ」と問われても「あれは何でしょうね」としか説明できない。

声の主は甲冑に身を包まれたなんとも凛々しい騎士であった。

白馬にまたがり颯爽と僕の方に近づいてくる。

おお、これぞ異世界。ファンタジーだという感動に浸る間もなく、

口調より鋭い剣の切っ先が、僕を目掛けてロックオンされた。


まずい、非常にまずい。

ここ一番で沈黙するエミリーの対応も凄くまずい。

こうなれば下手な嘘をくより、正直に説明した方がいいのかもしれない。

絶体絶命のピンチで「話せばわかる!」と言った総理大臣がいたっけな。

・・・あっ、その人はそのあとすぐに撃ち殺されたんだっけ。



「まっ、魔物がですね・・・」


「なにぃ、いまのはやはり魔獣であったか!あの威力はフルンゲ山脈に巣食う赤龍の灼熱龍波(イルフェルノブレス)級。それでその魔獣はどこに!?」


・・・龍?

なんだか分からないが勝手に魔物違いをしてくれたようだ。

僕は魔物を狩っていたら身に覚えのない、

魔法のような「なにか」が出ましたと説明するつもりだったけど、

結果オーライ。

面倒にならないよう否定も肯定もしないでおこう。


「すみません、突然のことで、記憶が混乱してうまく説明できません」


「左様であろう。赤龍と遭遇して生きていただけでも奇跡なのだから。女神クリージュカルニスのご加護に感謝するがよい。どうやら近くに魔物の気配はないようだから、いずれかに飛び去ったのだろう・・・」


馬を降り、僕の様子をうかがう騎士。

怪我がないか心配してくれているのだろうか。

腰を抜かして尻もちをついている僕の方を下ろすように覗き込んだ。



「怪我はない?大丈夫?」



脱いだ仮面のその下から現れたのは、

筋肉隆々、顔にいくつもの傷跡を残す、

いかにもという職業軍人ではなく、

プラチナブロンドで碧眼の絶世の美女であった。






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