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3Dプリンターで異世界調査はじめました!  作者: しゅーる君
調査報告書①
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調査報告書① 神様と桃

「女神クリージュカルニスの聖名(みな)において祝福を与え給え、パプテスマ!」


祭壇に司祭さんが唱えた福音が響き渡る。

銀貨1枚のお布施によって、ようやく洗礼の儀式が執り行われた。

神にささげる長い長い福音の言葉に、ついうとうとしてしまった。

といっても、目を開けたまま寝ているという、

人間業ではない事をやってのけている。

僕が見た画像や音声はエミリーによって録画される。

まぁ、容量はそんなに大きくないから、

長時間の撮影は無理らしいが、

この儀式くらいはすべなく記録されているだろう。

福音の言葉の解析は、地球にいる研究所のみんなに任せておけばいい。


アバターである僕のカラダは便利機能が満載だ。

エミリーのナビゲーションプログラムの他、

自動言語翻訳機能、

それに文字の視覚情報変換機能。

シンクロ率さえ改善されれば、

運動機能は人並み以上になるはずだった。


そんな人工物のカラダで、

未知の異世界で神様と契約をするなんて、

本来であれば正気の沙汰じゃない。

どのようなリスクがあるのか分からないけど、

試してみなければ、それは永遠に分からないままだ。


二流大学を平凡な成績で卒業し、

三流商社で平々凡々なサラリーマンをしていた僕にとって、

この調査隊に抜擢されたのは、青天の霹靂だった。

契約の関係上、すべて教えるわけにはいかないが、

僕がこの危険をともなう調査を承知したのは、

このプロジェクトの主要メンバーであった、

兄さんの存在が大きく関係している。

そうでなければ、こんなリスクを伴う冒険なんて、

ヘタレな僕は絶対に断っているところだ。


とにかく、現在の調査対象エリアを片っ端から調べつくし、

一刻も早く愛しの我が家に帰りたい。

あったかいご飯とお風呂。

それに愛用のマクラに埋もれて眠りたい。

契約金を受け取ったら、

夜の街に桃狩りにも出かけたい。

そう、夜の桃はぷにぷにだ。

神聖である洗礼の儀式の最中に、

欲望がこみ上げるのは不謹慎かもしれないが、

果て亡き男のロマンなのだから仕方がない。


「女神クリージュカルニス様のご加護あらんことを!」


司祭さんの声が一段と大きくなった時、

閉じている僕の目に、眩しい光の閃光が差し込んできた。

いったい何が起こったのか?

目を開けても目を閉じても、

この眩しさは変わらない。


白一色の光の中に、

ぼんやりだか人のシルエットが浮かんでいる。

もしかして、これがこの世界の神様なのだろうか。

僕は片膝をついて祈りのポーズをとっているのだが、

ゆっくり僕の方に近づいて、

じっとこちらを見つめてくる。

顔の輪郭はよくわからないが、

ひとつだけ分かったことがある。


これは女神様である。


屈んだ時に、胸の谷間がくっきり浮かび上がる。

なんとも深い谷底に眩んだはずの目が釘付けとなった。

間違いない。神様の桃は最上級品である。


【・・・ヘンねぇ】


人差し指を唇に添えて、

なにやらじっと考え込んでいる。

僕もこのサイズ感は何カップなのかと、

人生で一番の難問にぶつかっている。


【・・・作り物なのかしら?】


いや、あなたのそのけしからんサイズの戦闘力(バスト)は、

まごうことなき天然ものだろう。


【・・・うーん、しょうがないなぁ】


そんな声が耳に聞こえると同時に、

眩い光は教会の天井のある一点に吸い込まれるように消えていった。

まだ目がくらんでいるし、ひどい耳鳴りが始まっているのだが、

洗礼の儀式は成功したのだろうか。


まぁ、僕にとっては生きていれば成功なんだけどね。


「ふーむ、残念ですな。魔法の詠唱式はお告げには出ておりません。属性は・・・おや?そんなはずは・・・」


「司祭さま、それは・・・」


「儀式が終われば魔素(マナ)に記憶されているあなたの情報がこの羊皮紙に転写されるのです。女神クリージュカルニスの奇跡ですよ。先天性魔法が使える場合、必ず詠唱式が記載されます。ここに記載されないという事は、残念ながら先天性魔法の恩恵は受けてないという事ですよ」


虎の子の銀貨を投資して、

得たものは体験だけか。

期待はしていなかったのだが、

異世界で、あらためて僕の凡庸さを思い知らされるってのは、

けっこう心に突き刺さるものがある。


「・・・そうですか、それで僕はどの属性なんでしょうか」


「それが属性は分からなかったんです。こんなことはめったにないんですけどね。この6つの星があるでしょ。大抵は1つか2つの星に印が付いてるはずなんです。伝説の勇者様は5つも星があったと伝えられておりますが、まぁあくまでも伝説の話ですから・・・」


司祭さんが失敗したなんてことは無いだろう。

先ほどの光の中で、女神さまのようなシルエットと声が聞こえてたし、

なんだか女神さまも僕のカラダに戸惑っていたようだった。

やり直しを要求して墓穴を掘るより、

ここは引き下がるほうが良いだろう。


「魔法が授からなかったのはしょうがないです。昔から運のない星の下に生まれたものですから」


「はて、記憶がないと聞いておりましたが・・・」


「ははっ、も、もちろんないんですけど、そ、そんな気がするって話ですよ」


僕は慌てるように教会を後にした。

なんだか司祭さんが僕を追いかけて羊皮紙を手渡そうとしてたようだけど、

なにも書かれていない羊皮紙なんて、零点の答案用紙を突き返されるようなので、

気がつかないふりをして、全力で駆け出して『石の家』まで戻ることにした。


そういえばマーサさんからもらったお弁当の袋、

草原で腰かけてた石の上に置きっぱなしだ。

このまま草原まで足を延ばすとするか・・・



「渡し忘れてしまった・・・」


教会では羊皮紙をあらためて眺めている司祭さん。

☆のマークが全部★になっている事に気が付いた。

ということは全属性該当しているということなのだが・・・

いやいや、まさかそんなことかろう。

自分の転写技術も耄碌(もうろく)したものだと、

軽い笑みを浮かべながら、

僕の走り去った方向を目で追いかける。



「年は取りたくないが、それにしても全部に印が付いているとは、笑えない冗談じゃ・・・」



全属性適合。

この事実を僕はまだ知らなかった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] この回で、無理な描写と設定が多すぎます。羊皮紙の内容を神官がわざわざ伝えず、調査目的なのに本人が受け取らない。「作り物なのかしら?」と女神がつぶやいたのだから、当然体に合った神託がある…
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