最強少女は見透かされる
「測定?何かわからないことでもあった?」
思い当たる節がないのか、アルナは不思議そうな顔をしている
「測定してたとき、ちょっと測定器が不調だっただろ?でもアルナが何かやったあとに直ったじゃないか。何したんだい?」
エドワードの人の悪そうな顔は崩れていない
「エ、エドワード何を言っているの?たしかに不調だったけど、私は何もしてないし、ちゃんと測定もできたわ」
言葉とは裏腹にアルナの額には冷や汗が伝っている
「いやいや、DとかEが出てホッとするなんて違和感しかないよ」
確信があるのか、エドワードは追撃の手を緩めない
「あら、エドワードは優秀だからわからないかもしれないけど、Dは平均なのよ。私みたいな出来の悪い子はDが出ると嬉しいの」
さっきまで焦っていたアルナだが
今度は台本を読んでいるかのような、不自然な自然さのある言い方だ。
その変わり方が余計に違和感がある。
「いいや、あのホッとした雰囲気は嬉しさじゃない。すごく身に覚えがあるからね、そこは誤魔化せないよ」
「じゃ、じゃあ何だっていうの」
「本当はもっと強いんだろう?
あの時のアルナは『強すぎずに済んだ』『力を抑えることができた』そういう感じだった」
エドワードは、あの時のアルナを思い出しているというより、自分の過去を振り返っているような素振りだ
「...限界値は自分の意思で変えることなんてできないわ」
当たり前だ。限界値は、生まれた時からその個体に決められた数値である。もし自由に増やしたり減らしたりできるのなら、世界はもっと強者で溢れているだろう
「そう。だからそれを聞きたくて待ってたんだ。限界値を変える方法が知りたくて」
「随分と確信してるのね...さっきから私は何1つ肯定していないのだけど...」
態度からモロバレであることはともかく、確かにアルナは1つも肯定していない。常識に照らし合わせ、何の矛盾もない返事をしているはずだった。
「曲がりなりにも王子だからね。人の心の機微には敏感なんだ」
多少鈍感でもさっきのアルナはわかりやすすぎたが、そもそも返事にはなっていない
しかしエドワードは自分が間違っているとは全く思っていないらしく、限界値を変える方法を聞き出すまで諦めるつもりはなさそうな雰囲気だ
「...はぁ。じゃあ、あなたの話が先よ。」
「僕の話?」
エドワードは何の話かわからないらしく、キョトンとしている
「さっき言ったじゃない。『身に覚えがある』って。何で力を抑えたりしてるのか、何で限界値を下げたいなんて思うのか。その話よ」
アルナの言葉に、エドワードは少し驚いた表情をした後、苦笑いをした
「限界値を下げたいだなんて言ってないんだけどなぁ。アルナは人の心でも読めるの?」
「あら、読んでほしいの?お望みとあらばあなたが気づいていない気持ちまで暴いてあげるけど?」
「い、いや...遠慮しておくよ。とりあえず今日はもう疲れたし、明日また話そう。」
アルナの迫力に押されたのか、読まれては困る気持ちでもあるのか
とりあえずエドワードは話を切り上げることにした
「そうね、じゃあまた明日ね」
そう言うと、2人は男子寮と女子寮の方に向かってそれぞれ歩き始めた
アルナ...人の心も読めるのかな...
ブクマありがとうございます。さっきブクマ件数の見方を知りました(遅い)
15話ぐらいまで一気に投稿したら一旦止まる予定ですが、暇すぎて死にそうな時にでも読んでください