最強少女は学園に入る
アリネシア学園
ここでは魔術、剣術、体術のみならず一般知識も教えている。要は10歳になった全国民は、この社会の一員として最低限の技術と知識の保有が義務付けられているということだ。
そして『10歳になった全ての人間』には、当然王族も含まれている
今年は国王の第3王子が10歳になる年でもあった
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両親との感動の別れから少し経ち
カジットが心配するようなことは何もなく、無事アリネシア学園に着いたアルナは
学園の入り口に立つと、何か決意をしたような目をしていた
「...私の願いを叶える時が来たわ」
「願いって?」
アルナが独り言をもらすと、不意に後ろから声がした
「あなたは?」
アルナが振り向くと、金髪で優しそうな顔をしたイケメンが立っていたが、アルナに何を聞かれたのかわからなかったのかキョトンとした顔をしている
少ししてやっと理解したのか、苦笑いをしつつその男は自己紹介をした
「...あぁ、ごめん。僕はエドワード。今日からこの学園に入るんだ。君もだよね?」
「えぇ、私はアルナ。よろしくね」
人の良さそうな笑みを浮かべ、エドワードと名乗った男の子とアルナは軽く握手をした
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「それで、願いって何なの?」
アルナとエドワードは、挨拶もそこそこに新入生が集まるホールへ向かっていた
別段一緒に行こうと言ったわけではなかったが、向かう場所が同じなので自然と一緒に向かう形だ
「うふふ、秘密よ!それより、エドワードは荷物少ないのね?」
「君の荷物が多いだけだと思うけど...」
山のように運んでいる荷物を見てエドワードは苦笑いしている
「お父様が持って行けってうるさくて...過保護で嫌になっちゃうわ」
「言葉の割に嬉しそうだけど」
ニコニコしながら話すアルナに、微笑ましそうな視線を向けるエドワード
「あらわかる?私、養子なの。なのに本当の子供みたいに育ててくれた両親には感謝してもしきれないもの」
家を出る時のことを思い出したのか、アルナは少しウルッとしている
この世界で養子は特に珍しいものではないが、交渉などの道具として扱われたり不本意に預かってしまった場合などが多く、愛情を与えられることは少ない
アルナの特殊な状況を抜きにしても、この反応は過剰だとは言えないだろう
「優しいご両親なんだね」
証拠に、エドワードはアルナの様子を見ても怪訝に思う素振りもなく、むしろ感心したような顔をしている
「...エドワードの両親は?優しくないの?」
エドワードの様子に違和感を感じたのか、アルナはおそるおそる尋ねた
少し複雑そうな顔をしながらもエドワードは口を開く
「いや、優しいよ。でも両親は忙しい人だし、僕には兄が2人いるからね。アルナの両親みたいな感じではないかなぁ」
誤魔化すような口調だったが、アルナは特に詮索しなかった
そうこうしているうちに集合場所に着いた。
2人は早く来たらしく、ほとんど人はいない
「席が指定されているのね。じゃ、またねエドワード」
「うん、またねアルナ」
特にやることもないアルナは指定された席についてボーッとしていると、だんだんと人が集まり始めた
アルナがそろそろかな、と思っていると
不意に一角でキャアキャア声がした
「ねぇ、あそこにいるのエドワード様じゃない?」
「えっ!...ホントだ!エドワード様だわ!!
そういえば今年はエドワード様が入学する年だったわね、私たちすごくラッキーじゃない!?」
「1年でお近づきにならなきゃ...クラスが同じになることを祈るしかないわ....」
(エドワード様...?あ、もしかしてエドワードって第3王子のエドワード・ベンベートかしら)
さっきアルナに話しかけていたエドワードは国王の息子だったらしい
いきなり話しかけに行く者はいないものの、注目の的になっていた
しかしアルナは、さっきまで気楽に話していた相手が王子だと知っても特に気にした様子もなかった
エドワードへの注目も少し減ってきた頃、
集合時間になったらしく、筋肉隆々な男の人が現れ、今日の段取りなどを説明し始めた
「学園長のヌガーディオ・バイバーンだ。今日は入学後のクラス分けのために、限界値の測定と加護者の確認を行う。そのクラス毎に寮が与えられるから、測定が終わったら寮に行って部屋の場所を確認すること。
細かいことはその都度説明するが、何か質問はあるか?」
限界値というのは、魔術、剣術、体術それぞれに生まれた時から決められた値であり
努力して成長できる限界の数値を指す。
Gが最低ランクで、Aが最高ランク。
細かい数値も出るが、社会的にもランクで分けられているため、学園でもほとんどランクで力を判断している
加護者は力を与えている存在。自分で見ることは元より、他人の加護者を見ることもできないが
加護者の力の大きさなどは、専門的な機械があればわかるため、その結果から推測で加護者がなんなのかは知ることができる
ちなみに加護者は神界の住民だが、この世界線ができた時に降りてきた神界の住民の言い伝えにより、どんな者がいるのかは把握されている
「はい!能力値の測定はしないんですか?」
そして能力値というのは、今現在の力の強さだ。もちろん限界値と同様、数値でもランクでも表される。
「クラスは限界値で分けるから今日は測定しない。時期が近くなったら詳しく説明するが、実力試験が年に何回かある。その時に能力値を測定するんだ。」
「ありがとうございます!」
「他に質問はあるか?...ないな。
ここでは爵位は意識していない。Aランクの人間だろうとGランクの人間だろうと、同じ学園生だ。
Aランクの平民もいれば、Gランクの貴族もいる。差別は禁止だ。見つけ次第、俺と楽しい補講の時間が待ってるからな
話は以上だ。
じゃあ、前の列から隣の部屋で測定してくるように。」
そう言うと、ヌガーディオはホールから出て行った
何となくヌガーディオって名前が気に入ってます
ちなみにヌガーディオには名字があるので貴族です
エドワードは相棒ポジションになる予定です
いつかエドワード視点の話も書きます