最強少女は戦いに備える
生物同士を戦わせないためにとった苦肉の策です
「ええっと...僕の方がオマケ?」
困惑気味のエドワードはヌガーディオの言葉を繰り返した
「オマケって言うと語弊があるな。
まぁ、とりあえずだ。現状について話そう」
これ以上オマケ発言については言及するつもりがないらしく、ヌガーディオは真剣な眼差しになった
これ以上聞いても仕方ないと思ったのか、エドワードは意識を切り替えた
「...所属不明ロボットによる襲撃、ですよね」
「そうだ。しかも今回は今までより数が多い」
「それ毎年言ってますよね。そもそも破壊できずに撃退しかしてないんですから、増えるに決まってるんですよ」
エドワードは現状を憂いてため息をついた
所属不明ロボットによる襲撃。
50年ほど前に突如現れたロボットだが襲撃にくる時期も数も決まっておらず、わかっているのは人間の殺戮ではなく捕獲であるということだけ。
もしこれが他国からのロボットだとしたら再び戦争になりかねない事態なので国家機密とされているが
不干渉条約のせいで会議も開けない現状が裏目に出ており、どこの所属なのかは未だにわかっていない
そして、これが平和になった現在も戦力を増強させている理由であった。
「あのロボットの仕組みは人間、いや、他国でも理解することすらできない。だから他国からの攻撃ではないことは明白だが...
まぁ、国民がそれを理解するかといえば別だろう。本当は全国から戦力を集めて戦いたいのだがな...
なのに国王の部下だけで今まで撃退できていたのが奇跡だとしか言いようがない」
「確かにそうですね。僕は実際に戦いを見たことはないですが...
前回は相当ギリギリだったとか」
「あぁ。そして残念なことに
...今回は前回の20倍である200体がここアリネシアに向かってきている」
「200体!?前回の10体と文字通り桁違いじゃないですか!!」
「だからアルナを呼んだのだ」
「...へ?」
今まで傍聴をきめていたアルナは突然名前を呼ばれてマヌケな声を発した
「アルナ、国のために力を貸して欲しい。本当はこんなことを頼むために呼びたかったわけではなかったのだが、状況が状況だ
アルナが何者でどの程度力があるのか、俺にはまだわからない。だが少なくとも国王より強いのは確かだろう」
「ええっと...学園長?
ちょっと何言っているのかよくわからないんですが...」
アルナは言われたことの理解ができなかったようだ
「そうだよな、すまない。
順を追って話そう。そもそも俺は国王からアルナが何者なのか探ってほしいと言われていた」
ヌガーディオは椅子に座りなおすと、少し息をついてから話し始めた
「父上から?」
国王という言葉にエドワードが口を挟む
「えっと...何で学園長が国王から頼み事を?」
国王は基本的に、貴族でさえも干渉することはほとんどない
国王による贔屓を防ぐためでもあり、逆に国王による圧政を防ぐためでもある
「それはもちろん、俺が唯一の大公爵だからだ。
国王とは幼馴染なんだが、そもそもほとんど力が同じぐらいだしな」
「...学園長、大公爵だったんですね」
アルナは驚いた様子だ
「それで、父上がアルナのことを探れと言ってきたというのは?」
エドワードはそのことよりもこっちの方が気になっているらしく、少し心配そうな顔をしている
アルナを王宮に連れて行ったせいなのではと思っているらしい
「あ、エドワードがとかじゃないぞ。アルナに害意があるわけでもない。
アイツがただ個人的に確認したがってるだけだからな
まぁ、細かいことは俺も聞いてないんだが、どうも5年以上前に国王とアルナに面識があったみたいだ」
5年以上前ということは、アルナの記憶にない5歳以前ということだろう
アルナが声を出すより早く
ヌガーディオは「ともかく」と前置きをして話し始めた
「もし国王が思ってるアルナだとしたら相当強いらしいと聞いた。
だから、ロボットの撃退に協力してほしい」
「...なるほど」
5歳以前のアルナがどんな人間だったのかはわからないが
少なくとも今のアルナは強いだろう。
「アルナ、父上と面識あったの?」
エドワードは驚いたような顔でアルナを見ている
「さぁ?わからないわ。5歳以前の記憶はないもの」
「記憶がない?」
「そう、全くないの。記憶喪失...なのでしょうね。今まで困ったことなかったから気にしてなかったけれど、この件が片付いたら少し探ってみた方がいいかもしれないわ...」
「...そうか」
あっけらかんと言い放つアルナに、何を言ったらいいかわからないエドワードは相槌を打つだけだった
「そんなことより、戦いに向けて準備をしなきゃいけないわ。
1秒でも早い方がいいわよね、とりあえず今日は帰りましょう」
「あ、あぁ」
自分の記憶喪失を『そんなこと』と片付けてしまうアルナに驚き、エドワードは返事がぎこちなくなっていた
「すまないな、迷惑をかける」
ヌガーディオは話を聞いていなかったのではないかというぐらい自然な対応だ
「いえ、私がやりたくてやるだけですから。それでは」
「えっ、あっ、えっと...失礼します」
なので残念ながら、アルナの空気について行けてないのはエドワードだけだった
エドワードがアルナのオマケだというヌガーディオの言葉はあながち間違いでもなかったかもしれない
ある程度、アルナが今後戦う敵についての情報は出せたかなと
世界中の生物と友達になるには、戦う相手は生物以外でないといけないですからね。うんうん。
ヌガーディオは大公爵でした。
国王の次に偉い人ですね。しかも幼馴染だったんだって。これ書いてて作者も初めて知った。
次回はアルナが武器を調達しにいきます
そして登場人物が1人増えます。頑張って覚えます。