甘美
静けさ漂う森の中、雲ひとつない空には数多の星々が輝く深夜に1匹の獣が目を覚ます。
「ステータスオープン」
Name 『鎖夜』 種族『キメラ』
生命 一九
耐久 七
筋力 一八
体力 七
魔力 七
理力 七
敏捷 二零
ユニークスキル
『植物創造』
『超学習』
『正体不明』
スキル
特殊魔法
『デットエンド』
トゥームの世界に降り立ち直ぐにステータスを開く、そこには空欄だったユニークスキルと新しく追加されている特殊魔法があった。
なるほど、この世界に来ないとユニークスキルは貰えないのか。取り敢えず全部詳細を確認してするか。
『植物創造』・・・プレイヤーが持っている知識の植物(魔物も含む)をそれに値する魔力を消費し創り出すことができる。
『超学習』・・・プレイヤーが目視、接触、捕食等を行う事によって多くの情報を得ることができる。得た情報によってはスキルや魔法を取得することが可能。
『正体不明』・・・あらゆる感知能力や索敵、鑑定等のスキルや魔法を無効できる。更に『復讐者』の感知も無効にできる。
『デットエンド』・・・その場で楽に死ぬ事が出来る。
はぁ、くそ…戦闘に関するスキルがひとつもない…これじゃ殺し回ることが出来ないじゃないか!『植物創造』はまだ戦闘に使う事ができるけどそれ以外は全く使えない!!
それに!この『デットエンド』ってゴミじゃん!こんな魔法いつ使うんだよもぉ……
大きくため息をつくと鎖夜は夜空を見上げる瞬く光る星々は嘲笑うかのように暗い表情を浮かべた鎖夜の姿を照らす。
森の新鮮な空気に心を落ち着けようとしたその時、酸っぱい汗とキツい油の臭いが鎖夜の嗅覚をくすぐる。
近くに人間がいる。初めての狩りだァ。
獣の顔でもわかるぐらいにニタリと歪むと近くの木々に身を隠し息を殺す。
「全くよぉ、さっさとキャラ作ってレベルあげようと思ったのに全っっ然!モンスターいないじゃねぇか!クソつまんねぇなこのゲーム。」
「まぁまぁ、落ち着いてブレッドさん。物凄くリアリティのあるゲームなんですしこういう仕様?もきっとあるんですよ!」
「そんなん知らねぇし!ったくよぉせっかく門番振り切って森に出てレベルあげようとしてんのにマジで無駄じゃねぇか!なーにが夜は危険な魔物が出るので出ないでくださいだ。そうだろ?癒しメガネ。」
「確かに何も出ないのは不気味だけどリスクを犯してる以上何か収穫が欲しいですね。」
くだらない話に花を咲かせながら剣を振り回すごつい脳筋ゴリラと頼りない杖を持ったヒョロガリな魔法使いが森を掻き分けてくる。
抑えきれない殺意を全面に出しつつも足音を殺し少しずつゆっくりと近づく。如何にも始めたばかりの無警戒なアホ達はそのまま死へと足を運ぶ。
「はぁ〜あ、獣でもなんでもいいからさっさと出てくれないかnザシュッ
獣が脳筋ゴリラの喉元を食いちぎり、男は口をパクパクさせながらそのまま絶命する。
一瞬の出来事で頭が追いついてないヒョロガリは慌てて逃げようと振り向くが腰を抜かし転んでしまう。
「はぁ…はぁ、くるな…来るなああああああ!!!」
錯乱しつつも必死の抵抗を見せるメガネは杖をブンブン振り回すも恐怖で目を開けておらず見事な空振り三振を決めるだけで虚しく空を切る。
疲労困憊のメガネが杖を振り被ろうとした瞬間、ブンッと振り下ろされた獣の蛇尾に腕ごとメガネは弾き飛ばされてしまい、苦痛に悶え苦しむ。
「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。」
右腕を抑えながら迫り来る恐怖に耐えきれず涙と鼻水でぐちゃぐちゃのメガネは、ブツブツと壊れたラジオのように呟きながら地べたを這いずろうと、逃げようとするが目の前には1匹の獣がギラギラと目を輝かせていた。
「初めての狩りは何とか上手くいったなぁそれじゃあ早速頂きます。」
しばらくの間、悲鳴と叫び声が森中に響き渡るが数分もしないうちに静寂が森を支配し、光り輝く星々が血に濡れ輝く1匹の獣を照らしていた。
「ご馳走様でした。こんなゴミみたいな奴でも楽に食われてくれればいいもんだね。さて、レベルも上がったしステータスでも確認して見ようかな。」
Name 『鎖夜』 種族『キメラ』Lv3
生命 一九
耐久 七
筋力 一八
体力 七
魔力 七
理力 七
敏捷 二零
ユニークスキル
『植物創造』
『超学習』
『正体不明』
スキル
『牙Lv1』
『捕食Lv1』
『気配察知Lv1』
『剣術Lv1』
魔法
『炎魔法Lv1』
『光魔法Lv1』
特殊魔法
『デス・タート』
取得可能なステータスポイント10
おぉ!レベルが上がってるし新しいスキルも色々手に入ってる!嬉しいなぁ!あれ?でもなんで剣術と魔法を取得してるんだろう?まっいっか!後で考えよっと。
アイテムボックスに《ボロボロの杖》と《錆びた剣》をしまうと夜明け前の不気味な森へ姿を消した。