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04


柊は若干ぐったりした奏に抱き上げられたまま、恐怖の館の中を巡り終えた。


柊と奏が無事出口に着くと、先に出ていた杏路と燕が出口に一番近い場所に置いてあるベンチへ腰を下ろして待っていた。柊は奏にゆっくりと下ろしてもらうと、気が付いて笑いかける杏路と二人に向かって手を振る燕の元に近づいた。


「お疲れ様っす、どうでした?」

「ん?まぁ、かなり本格的な作りのわりにストーリーはそこまででもなかったな」

「一応全年齢対象なので、それは仕方ありませんよ」

「まあそうなんっすけどー」

「……後ろのも入るか?」


そう言って奏が指し示したのは、柊達の入り終わった洋館とは別のお化け屋敷だ。


「あっちって確か、ネットでもかなり怖いって話題になってヤツっすよね?」

「入り口で同意書を書かされるらしいな」

「折角だから入ってみます?」


燕がそう言いながら柊の方を見て来たので、柊は首を横に振る。


「僕は良いや。休んでるから、三人は交代で入って来たら?」

「私は以前入った事があるので、柊と残りますよ」

「本当に良いんすか?」

「ふふ、良いよ」


と言う訳で、二手に分かれる事になった。奏と燕は廃病院風のお化け屋敷に向かい、柊は流石に外でずっと待っているのは寒いので杏路と一緒に近くの建物の中へ移動した。


このテーマパークは童話やそこに登場する生き物などをメインに展開している。


杏路が柊と一緒に入ったのはパーク内で一番人気のケサランパサランの溢れる家だ。

ゆったり走るトロッコに乗ってふわふわ飛んだり転がったりしているケサランパサランを眺めるだけのアトラクションだが、良く見ると一匹一匹に少しずつ個性があるし踊ったり跳ねたり隅っこに固まって積み上がってる様子に結構癒された。


一周5、6分の短いアトラクションなのですぐに終わってしまう。

柊達以外には全く誰も並んで無いようなので柊はもう一度入り口の方へ並び直す。


杏路は文句も言わずに付き合ってくれる。


「飽きた?待ってる?」

「いえ、大丈夫です。見る度に新しい発見もありますし、十分楽しんでいますから」


結局その後にも2回乗ってとても癒された柊と杏路は、出口の手前に用意されているミニゲームコーナーをゆっくりと一緒に回った。


柊がパッと目に飛び込んで来た台へ杏路の手を引きながら近づくと、側にいたキャストのお兄さんがゲームの説明をしてくれる。何でも様々な種類のぬいぐるみの山から目の前のモニターに表示されたものと全く同じものを制限時間内に探しあてるゲームらしい。


1人3回までチャレンジでき、1問でも正解すれば好きなぬいぐるみを貰えるらしいので、杏路と柊も参加してみる事に。微妙に違う柄の個体などが紛れていて以外と難しいと説明されたが、二人は然程迷わずに1問目で正解する事が出来た。お兄さんに驚かれながら、柊は掌大のハリネズミ、杏路は同じ大きさの黒い甲羅の亀のぬいぐるみを貰う。


他にも気になるものを幾つか遊んでから休憩用のスペースでソーダを飲みながらまったりしていると、心無しか青ざめた表情の奏と燕が戻って来た。


「何て言うか、実物は想像以上だったっすよ……」

「だな、今は軽い気持ちで入った事を後悔してる……」

「とりあえず、暫くは机の下と本棚の隙間と洗面台の鏡を見るのは遠慮したい気分っすね」

「わかる」

「そんなに怖かったですっけ?」

「だっていきなりテーブルの下から手は生えてくるし、指示通り本棚の本を抜いたら血まみれの看護士と目が合うし、いきなり電気が点いたと思ったら鏡の中に真っ赤な手形が無数に浮かび上がって来るんすよ?しかも超リアル……」


そう言って燕は杏路が買っておいた飲み物に口をつけながらマップをテーブルに広げる。


「とりあえず次は何にします?」

「燕は何が良いんですか?」

「俺は出来れば、気晴らしに激しいのに乗りたいっすね」

「その条件で近くにあるのだと何だ?……フリーフォールとかで良いのか?」

「お、良いっすねー」

「柊もそれで良いですか?」

「ん、良いよ」


戦利品のハリネズミのぬいぐるみを見せたりしながら少し休憩したあとで、柊達はフリーフォールのあるエリアへ向かって移動する。


柊が燕と手を繋いで歩いていると、反対側から秋羅達が歩いて来るのが見えた。


柊の視線に気付いて驚いたような表情を浮かべて、手を振って来る。

柊も軽く手を振り返してから秋羅達の集まる場所へ向かって歩いて行く。


「そっちから来たって事は、お化け屋敷か?」

「ん、それとケサランパサラン見て来た」

「そうか」


柊が大和とのんびり会話をしながら穏やかに笑い合っていると、後ろで待っていた朔夜が大和の肩に手を置いて話し掛けて来た。


「すっげぇ久しぶりだよな……元気してたか?」

「うん」

「相変わらずちっこいなー」

「そう言う朔夜も、人の事言えないでしょ」

「俺と七花と柊でちびっ子同盟だから、別に良いもんねー」


そう言って朔夜は、大和の後ろからはにかみながら小さく手を振る七花と手を振り返してほわほわと笑い合っている柊の手を引いて、まとめてぎゅっと抱き締める。


「羨ましいだろー、でも無駄にでかいお前らは入れてやんないもんねー」


きょとんとした表情で見詰め合った七花と柊は朔夜と手を繋いでくすくすと笑い合う。

小柄な3人が集まって笑い合っている様子は、どことなく小動物感が溢れている。


(「癒し空間が広がってるっすねぇ」)

(「眺めているだけで和むな」)

(「何て言うか、あの茶髪の子が元気いっぱいの子犬で、ミルクティー色の子が手乗りハム。んでもって、ひぃ様が子猫って感じっすかねー」)

(「あー、わかる」)


少し離れた所でほわほわとした空気を発しながら固まっている柊達を見ながら奏と燕が頷き合っている様子に気付いた柊がそちらを見ると、つられて朔夜達も視線を向ける。


何を話していたか聞き出すと、秋羅と大和は同意するように頷いた。


小動物に例えられた3人は複雑な表情を浮かべ、納得出来るけど同意はしかねる……みたいな雰囲気を漂わせている。


「朔夜はコーギーっぽいよね?」

「えー……」

「柊が子猫はそのままって感じがする……」

「ちっこい黒猫って感じだな!」

「七花のハムスターも、納得」

「手に乗せたらずっと振動してそうだよなー」

「何それ、どんなイメージなの?」


朔夜の言葉に頬を膨らませた七花がわちゃわちゃと戯れるちびっ子達を微笑ましげに見詰めていた大和の周りをぐるぐると走り回り始める。


その様子を呆れたように眺めた秋羅がそっと柊に近づいて来る。


「あー、何処か行く途中だったんだろ?アイツらの事は放っといて良いから」

「本当に良いの?」

「良い良い。気が付くと煩いから、今の内に行った方が良いぞ」


柊はその言葉に笑って頷くと、守役と一緒にその場からそっと移動した。



秋羅達と別れた柊達は予定通りフリーフォールを楽しんだ。


その後もいくつかのアトラクションを回った後、柊達は学園側の決めた終了時間よりも少し早めにテーマパークに併設されているホテルへと移動する。


レストランで手早く夕食を済ませて自分の部屋に戻ると、柊は備え付けのシャワーで汗を流した。さっぱりして上がった後は、杏路が柊の髪を丁寧に乾かしてくれる。


柊がゆったりと読書をしている横で3人は持って来たゲームを広げて遊んでいる。

柊は時折その輪の中に入って参加しながら読書をして過ごした。


明日の予定と荷物の確認を終えて、杏路と柊、奏と燕に別れて早めにベッドへ潜る。

杏路の体温と心音に包まれて柊はゆっくりと目を閉じた。


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