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*修学旅行

*ブックマーク&評価&感想、ありがとうございます。


季節は秋へと変わり、今日から柊は3泊4日の修学旅行に出掛ける事になっている。


朝早くに目が覚めた柊は隣で眠る灯の腕の中から抜け出し、寝室のカーテンを開けた。

深夜に降っていた雨も止み、濡れた草木が朝日に煌めく様子を眺める。


暫くそのままの姿勢で窓の下に広がる庭を見下ろしていた柊は、灯がベッドの上に起き上がった気配を感じて振り向いた。スマホで時間を確認している灯に近づいて柊が隣に潜り込むと、まだ起きるには早い事を確認した灯もその横へもう一度寝転んだ。


「楽しみで眠れねぇ、って顔じゃねぇな」


灯は肩まで布団を引き上げた後、そう言って柊の頭を撫でながら呟く。


「杏路達も一緒に行くし、無理なら途中で帰って来ても良い」


柊は掌の感触に目を細めてから、灯の体にピットリとくっついてみる。


「どうしても嫌なら、行かなくても良いぞ」

「……ううん、行く」

「そうか?無理したり、我慢したりだけはするなよ」

「うん」


そのまま灯と柊は起きる時間になるまでベッドでゆったりと微睡んで過ごした。



寝室へ呼びに来た飛沫の持って来た服に着替えて、柊は奏のいる診察スペースへ向かった。

一通りざっと見て問題無しの診断をもらいダイニングへ。


家族全員で朝食を終え、玄関で仕事へ行く才と生徒会の用事がある夏目を見送る。


そのすぐ後に柊も杏路の回して来た車に乗り込んでから玄関先に並ぶ灯達に窓を開けて手を振り、見送られながらゆっくりと学園へと向かう。


初等部の修学旅行は学園の所有する宿泊学習用の施設にて行われる事になっている。


宿泊所は初等部の修学旅行以外に中等部や高等部の運動部が合宿に使う為、宿泊施設以外にも、体験学習用の工房、キャンプ場、ハイキングコース、プラネタリウム、室内競技場、運動場、温水プールなど、様々な施設が用意がされているようだ。


学園に集合した生徒達はクラスごとに大型バスに乗り込み、施設まで移動する。


もちろん特待生と支援生は別なので、柊は奏と杏路と燕と一緒に少し離れた所に用意されているミニバスへ向かった。他は誰もいないので、柊達は一番奥の席に座る。


出発まではまだ時間があるので柊がマグボトルの紅茶をお供にタブレットで読書をしていると、ドアが開いて大きな荷物を持った大和が乗り込んで来た。


「おはよう」

「おはよ」


大和は荷物と脱いだ上着を前の方の空いている座席に置くと、柊の方へ歩いて来る。


「俺もこっちで移動しても良いか?」

「僕は構わないけど……秋羅達と一緒じゃ無くて良いの?」

「あぁ、何時も一緒にいるから、たまには離れてみるのも良いだろうと思ってな」

「そう」


大和はお礼を言いながら奏が空けた柊の隣に座ると、柊の手にあるタブレットを指差す。


「今は何を読んでいるんだ?」

「暁を待つ騎士」

「あぁ、敷島(しきしま) (まもる)の新作か……俺も気になっていたんだが、荷物になりそうで置いて来てしまった」

「読む?」

「まだ読んでいる途中じゃないのか?」

「もう一度読み返してただけだから、良いよ」

「ありがたいが、今借りてしまうと柊が暇になってしまわないか?」


柊は表紙ページに戻したタブレットを大和に渡し、燕から予備のタブレットを受け取る。


「大丈夫、予備のタブレットもスマホもあるから」

「それなら遠慮なく……ありがとう」


大和は受け取ったタブレットの画面を確認してから、膝の上に置いて柊の方を向いた。


「敷島 衛、好きなのか?」

「うん。言葉選びが綺麗で人物描写が繊細だから」

「それに場面展開も丁寧だしな」


柊の言葉に深く頷いた大和は胸ポケットから取り出してスマホの画面を見せる。


「今度の映画、柊は見に行くのか?」

「公開初日に家で観ると思う」

「そうか、シアター契約していると自宅で観れるのか……」

「祖父が特別会員だから、劇場特典も頼めば郵送で送ってもらえるよ」

「それは良いな」


観終わったら感想を話し合う約束をして、柊と大和は読書へ移る事にした。


読書を始めて少しするとようやくバスが動き出し、大和が真剣に読み込んでいる横で、柊が時折守役の会話に混ざりながらタブレットを眺めているうちに目的地へ着いた。


「お、着いたっすね」


燕の呟きに顔を上げた大和は柊にお礼を言ってタブレットを返す。


バスの外のクラスメイト達と合流する為に先に降りて行く大和を見送って、柊は温かい紅茶を飲んで一息ついた。ゆったり窓の外を眺めていると、少しずつ生徒達が移動を始める。


人の居なくなった駐車場へ降りてしおりを確認すると昼食を自分達でカレーと豚汁を作る予定になっているので、柊は燕と手を繋いでキャンプ場へ向かう。


「カレー作りっすか……まともに作れる人間なんて、いるんすかね?」

「まぁ、ほとんど指導員が作る事になるだろ」

「金持ちの子供相手に下手なものは食べさせられないっすからねー」


そんな事を話しながら到着したキャンプ場の炊事場では、皆が騒がしく動き回っていた。

柊達は管理小屋の脇に用意された作業場に移動し手早く自分たちの昼食を作り始める。


危なげなく作り終えてテーブルに並べ、作業員に確認してもらってから食べ始める事に。

杏路が追加でさりげなく作っていたデザートまでしっかり食べて片付けを済ませた。


昼食の後は宿泊所の側にある工房へ移動する。


「荷物置いて泊まる所の確認済ませて来るんで、少しの間お別れっすね」

「俺も確認したい事あるから、少し離れる」

「ん、よろしく」

「了解したっすよー」

「また後でね」


柊は杏路と一緒に工房の入り口で奏と燕を見送ってから中へ入る。


入り口の脇に立っている教員に幾つか用意されているコースから各自好きなものを作るよう言われたので、柊はブックマーカーを作る事にした。


沢山あるモチーフやチャームの中から自分の好きな物を組み合わせて作るようだ。

時間をオーバーさえしなければ幾つ作っても良いらしい。


柊は猫と月、リーフと星、雪の結晶と雪だるま、小鳥と花の4種類を作る。

猫と月は自分用で、リーフと星は奏、雪の結晶と雪だるまが杏路で、小鳥と花が燕だ。


柊が作業している横で杏路が作っていた巾着に入れてリュックに仕舞う。


もの作り体験を終えて宿泊施設へ移動すると、ロビーで自分の部屋へ運び込まれている荷物をチェックするよう言い渡された。夕食の時間までは自由時間となるようだ。


柊は教員用の階に泊まる事になっているので、杏路と一緒にそちらへ移動する。


荷解きと確認は既に燕が終わらせたようなので、柊は杏路と一緒にお茶をしながらバスの中で読みかけだった本の続きを読み始める。暫くして戻って来た奏と燕も混ざって、夕食の時間までソファーでまったりとくつろいだ。



夕食とお風呂を済ませた後は宿泊所の裏にあるプラネタリウム館へ移動して星空鑑賞だ。

40分程映像を見た後は外に出て、配られた冊子と本物の星空を見比べる。


「山の上だからっすかね?星がくっきり出てて綺麗っすねー」

「……うん」

「手を伸ばしたら届きそうだな」

「何だか圧倒されますね」


柊達は他の人達から少し離れた階段に並んで腰掛け、空を見上げる。


「あ、茜様に写真送ったらどうっすか?」

「それは喜ばれるかもしれませんね」

「ついでだから皆で撮った写真も送りましょうよー」

「それなら、誰かに撮ってもらわないと」

「誰かいないっすかね?……あ!あそこにいるの蘇芳さんじゃないっすか?」


燕が引っ張って来た蘇芳に星空をバックに4人の写真を撮ってもらってから、タイマーの存在を思い出し、階段にセットして蘇芳も入れて撮り直した。


*宜しければ、ムーンライトノベルズ様にて「君の瞳が瞬く明日。」連載中です。

 →https://novel18.syosetu.com/n6343fc/


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