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03


思い当たらずに首を捻る燕に、柊の指を立てながら灯がヒントを出す。


「朽木の人間は分家も含めて全員、全ての能力者の血を持っている。朽木家由来の能力持ちは分家に入れられる。その能力者の管理を担当しているのが……」

「つまり、別の能力に対する対処法も完全に把握していないといけないって事か」

「奏さーん、先に言うの無しっすよー」

「悪い、悪い」

「ってか、そんな事可能なんですか?」

「朽木に仕える人間が情報を出し惜しみすると思うか?」

「あー……」

「集められた情報はまとめて管理してあるし、日々更新されてるからな。それを元に編み出した方法で他の能力の使い方やら対処の仕方やらを全部覚えなきゃなんねぇんだよ」

「……何かもう、朽木家を見る目が完全に変わりそうなんすけど」


そう言って燕はクッションを抱き締めながらソファーで奏と反対方向に寝転がった。

燕の様子に苦笑しながら杏路が灯の腕の中にいる柊を見詰める。


「その仕事が柊に回って来る事はあるんですか?」

「いや、病気持ちは対象外だから心配いらねぇぞ」

「でも灯様はやってるんすよね?」

「俺の時は他にやれる人間がいなかったし、発病したのは引き継いだ後だったからな」

「私の後に引き継ぐ人間は既に決まっている上に、その件は本人も了承済みだ。柊にお鉢が回って来るような事は無いだろうから安心して良い」


京が柊の頭をそっと撫でながらそう言うと、奏達は安心したような表情を浮かべた。


「問題は、朽木より双神の方じゃないか?」

「あ?まぁ、言わなきゃ分かんねぇんだから黙っときゃ良いんだよ」

「それは大丈夫なのか……?」

「知らせたりなんかしたら、確実に引き取るって言い出すだろ。なんせ、アイツらにしてみればずっと欲しがってた朽木の能力まで付いて来んだぜ?」

「自分と同じ能力持ちは自然と分かると聞いた事があるんですが……すぐにバレるんじゃ?」

「心配しなくても、能力者は囲い込んで滅多に外には出さねぇし、大丈夫だろ」

「双神って、能力何でしたっけ?」

「あそこは確か、予知だな」

「予知って言うと未来が分かるっていうアレっすか?」

「あぁ、概ねその認識で間違っていない」

「それって自分が見たい未来を見れたりするんですか?」

「いや、強さと制御によるな」

「大抵の場合は触れた人間の未来がランダムに分かるみたいだぜ?」

「へー、便利そうな能力っすね」

「残念ながら色々と制約があるそうだからな、思っている程良いものでも無さそうだが」

「ま、便利なだけの能力なんてねぇって事だな」


灯がそう言った所で、柊は膝から下りて寝転がっている燕の体の上に倒れ込んだ。


「あれ?もしかしてひぃ様、さっき上に乗ったの本当は怒ってたりします?」

「……じゃあ、そう言う事にしとく」

「えぇ、何すか?普通に怖いんすけど……」


柊は笑って燕の額にキスをしながら、軽く前世の記憶の一部(男同士のアレコレ)を流し込む。


「だから、自分で頑張ってね」

「えっ、ま、ちょっ……ひぃ様?」


流れ込んで来た情報に、柊を咄嗟に抱き止めながら動揺のあまり顔を赤くしたり青くしたりしている燕の様子に、奏が怪訝そうに声を掛ける。


「何したんだ?」

「燕が使えそうな情報、渡しただけ」


柊の肩に顔を埋めて混乱していた燕は、抱き締めていた柊の体を自分の体の上に引き上げてそのままソファーの上に起き上がる。下に落ちたクッションを拾いながら燕が呟いた。


「いやー、見てはならない世界が見えたっすよ……」

「一体何を見せられたんだよ……」


燕は少し考えるような仕草をしてから、真意を尋ねるように柊を見詰める。


「ズルは駄目だよ?」

「あ、デスヨネー……俺が悪かったんで、後で真面目に相談乗って下さいっす」

「ん」


微笑んで肩に乗った燕の頭を撫でる柊を見て、灯は手を叩いて全員の意識を戻す。


「結論が出た所で、話を戻すぞー」

「あー、何の話でしたっけ?」

「双神の能力についてだな」

「柊の能力的にはどんな感じなんですか?」

「そこまで強くはねぇぞ?まだ発現したばっかで不安定だから、今後どうなるかまでは確かじゃねぇけどな」

「流石に2つとも歴代最強!とは行かないんすね」

「聞いた話だと後に発現した能力の方が弱い傾向にあるって事だったしな」

「奏さんって、何時も何処から拾ってくるんすか?そう言うネタ」

「学生時代の知り合いとか医者仲間とか趣味仲間とか……まぁ、色々だな」

「草薙じゃないのに情報収集能力高いっすよねー」

「一応、草薙の試験も受かってるからな」

「そうなんすか?」

「割と最後の方まで草薙に入るつもりだったんだが、知り合いの相談に乗ったり適性試験の結果が花森の方が高かったりで最終的にこっちにしたからな」

「そう言う燕は何で緋野にしたんだ?」

「俺はくじっすねー」

「は?」

「特にこれって言うのが無かったんで、基準値超えてる奴からあみだで決めたっすよ」

「何つう適当な……」

「杏路さんはどうなんっすか?やっぱ能力があるからっすか?」

「いえ、私の第一希望は久遠でしたね」

「普通に想像出来るっすね……何で緋野にしたんすか?」

「本試験までに仕えたいと思える主に出会えなかったので、一番役に立てそうな分野へ進む事にしたんですよ」

「じゃあ、もしひぃ様にその時出会えてたら、杏路さんは久遠だったかもしれないんすねー」

「そうですね」


スマホの返信をしながら話を聞いていた灯が、ふと気が付いたように杏路に尋ねる。


「ん?って事は、杏路は久遠の本試験も合格してるって事か?」

「えぇ、久遠と緋野は全種と草薙の情報は全部A+で合格しましたね」

「はぁ?」

「うわー、あの最高難易度の試験にA+とか……」

「お前、今からでも久遠に転向したらどうだ?基準値高すぎて、人数カツカツなんだよなぁ」

「いえ、緋野の家が私の性根には合っているようなので」

「じゃあアレだ、兼任しろ」

「分家の兼任って出来るんっすか?」

「そんなもん、当主全員の首を縦に振らせれば良いだけの話だろうが」

「まあ、そうなんですが……」

「それって、結局所属は何処になるんっすか?」

「杏路は緋野が良いんだろ?なら、今のままで久遠の権限だけ足せば問題無いだろ?」

「ですが、あくまでも本試験で合格しただけで、知識も経験も不足していますし」

「そんなもん、今からでも覚えりゃ良いだろうが」

「灯様は何でそんなに杏路さんを久遠にしたいんすか?」

「そんなもん、柊に付けるのにめぼしい奴がいねぇから以外にねぇだろ」

「そうなんすか?承認式までには久遠から合格者出るって聞いてるっすけど」

「能力よりも相性の問題なんだよな……上がって来る奴は全員チェックしてっけど、微妙にピンと来る奴がいねぇんだよ」

「あー、それは大問題っすねー」


深く頷いた燕の目が笑ってない事に苦笑しつつ、灯は杏路の方に顔を向ける。


「それにお前達にとっても悪い話じゃねぇと思うぜ?何せ久遠が入ったら筆頭はそっちになるからな……杏路が久遠の権限持つなら、守役筆頭はそのまま杏路が務められるしな」

「え、そう言う事になるんすか?てっきりもう一人の方が筆頭になると思ってたっす」

「なるんじゃ無くて、するんだろう?」

「当たり前だろ?そうでもなきゃ、杏路にメリットがねぇだろうが」

「そうですね……一度、緋野と久遠の当主に相談してから検討する形でも良いですか?」

「おう、話は通しておいてやるよ」


灯は頷いて、早速スマホで葉と各分家の当主宛にメッセージを送信すると、返信を待っている間に全員分の飲み物の追加を厨房に内線で伝える。


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