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02


落ち着いた頃を見計らって、操作していたスマホを片付けた灯が声を掛ける。


「そろそろ結論は出たか?」

「可能なら、一から説明が欲しいっすねぇ」

「そうなるよなぁ」

「とりあえず、双神の力は才様のお母様から引き継いだって事で良いですか?」

「いや、残念ながらアイツ、能力ゼロなんだよなー」

「え、そうなんすか?」

「能力者として生まれなかったからこそ、俺と結婚出来たようなもんだしな」

「……他家では、能力者関係の人間は基本的に、外には出さないからな」

「ったく、能力者を便利な道具か何かだと勘違いしてる奴が多くて嫌んなるぜ」


不機嫌そうに吐き捨てた灯の肩を、京が宥めるように叩いて隣へ座る。


「って事は、それより前の世代からの隔世遺伝って事っすか?」

「いんや、ぶちゃけ作用してるのがそっちの血だとは限んねぇんだよなぁ」

「灯様も双神の血が入ってたりするんですか?」

「俺と言うか、朽木の人間は分家も含めて全員だけどな」

「は?そんなの聞いた事無いんすけど……」

「普通は教えないからな」

「教えてしまっても、良いんですか?」

「知らなきゃ対処出来ねぇだろ?」


そう言って灯は抱き着いていた腕を外した柊の位置を座りやすいように調整して、隣に座った京の背中を叩いて話を促す。叩かれた京は苦笑しつつ口を開いた。


「細かい経緯を省くと、お前達も聞かされている初代の拾って来た人達、つまりは分家の人間の大本と言われている人間はほとんど全員、能力者の家系から逃げ出したり救い出したりされた人間だったと言う事だ」

「その時代は能力者が初めて認知され始めた時代だからな、色々闇が深いみてぇだぜ?」

「で、本家と分家の血が混じった結果が今って事ですか?」

「そう言う事だな」

「でもそれだと、朽木家由来の能力者しか生まれないのって、変じゃありません?」

「つまり、実際はそうではないと言う事だ」

「……それは、朽木家以外の能力者が生まれた場合、分家に入る事になると言う事でしょうか?」

「お、杏路の考えが正解だな」

「待って下さいっすよ、じゃあ能力者以外の朽木家の人間ってどう言う基準なんすか?」

「あぁ、アレははっきり言うと、血の濃さだな」

「?」

「つまり、初代の血を濃く受け継いでいるのが主家とされている人間で、一定以上薄まったと判断された人間は分家に移る、って訳だな」

「後は元々の朽木家の性質などと総合して区分けされる事になる」

「その選別も能力者の仕事の一部だな」

「任命式とか承認式の時に能力者の人達が必ず立ち会うのってそう言う意味なんすか?」

「そうだぞー」

「でも朽木って、恋愛結婚派っすよね?とっくに全員薄まってそうっすけど……」

「それが不思議な事に、いざとなると途切れねぇんだよなぁ」

「当主の間でも七不思議扱いになっている話だな」


そこに厨房から雨水がやって来てお茶と軽食をテーブルの上へ並べて行く。

作業が終わると、話に混ざる事なく足早に立ち去った。


全員が用意された飲み物と料理でゆったりとくつろいだ所で、灯が話を再開させる。


「まぁそれに、ぶっちゃけ朽木の奴らは皆、明日世界中の能力が一辺に消失しても問題無いようにしてるしなぁ」

「え、あの無節操な会社経営とかって、そんな意味があったんすか?」

「お前、そんな事思ってたのか?」

「いやぁこの際だからぶちゃけますけど、何で他の九家みたいにどっかしらの分野に特化しないんだろうとは思ってたっすねー」

「本当にぶっちゃけたな……」

「だって思わなかったっすか?別に本気出したらどの分野でもトップとか余裕で取れそうなのにって」

「思わない事も無いが、そもそも朽木は目立つのを避けてるって認識があるからなぁ」

「……この家は何と言いますか、分かりにくく怖いですよね」

「どう言う意味っすか?」

「いえ、よく考えたら他のどの家よりも、朽木家の在り方が一番驚異的だな、と思いまして」

「驚異的っすか?」

「だってそうじゃありませんか?各分野のトップではないけれど、確実に無視出来ない位置には居るんですよ?その上、あらゆる所と横のラインで繋がっているので……言ってしまえば、朽木には手を出した時点で終了と言う位置に、今まで誰にも気付かれずに存在して来たって事ですよね?」

「!え、あ、そう言う事っすか!?」

「うわぁ、そう言われっとマジだわ……怖ぇ〜」


京は奏と燕の反応に苦笑いを浮かべて、続ける。


「その意味に気付けるような人間は朽木家には手出しして来ないと言う事だ」

「気付けない人間は?」


京は静かに笑い、灯はにやりと笑って軽い調子で続ける。


「そんな人間を、分家の奴らが許すと思うか?」


言葉の意味と自分たちの在り方に思い至った奏達が若干引いた後、空気が弛緩した。


「まぁ、他の家じゃ身内で蹴落とし合いとかしてるっすけど、此所じゃそう言うのとは無縁っすもんねー」

「確かにな」

「ま、放っとけばうち程無害な家も無いしな」


灯がそう言って話が一段落した所で、灯の向かい側に座った燕が胸の前で手を挙げた。


「えーと、今更こんな事聞くのアレなんすけど……能力者の仕事って何があるんすか?」

「何だ、気になんのか?」

「今迄は別にひぃ様に関係ないって聞いてたんで、ぶっちゃけどうでも良いかなーっと思ってたんすけど……」

「あぁ、成る程。朽木と双神の能力持ち何て稀有な存在、他の能力者家系じゃ普通、使わない手はねぇってなるもんなぁ」

「あー、別に朽木がひぃ様を使い潰すとかは全く心配してないっすよ?ただ、本人がそっち方面で貢献しようってなったらなーって、ちょっと思っただけっすから」

「まぁな、その可能性はゼロじゃねぇよなぁ」


灯がそう言って膝の上の柊の頭を撫でて来るので、柊は灯の顔を見詰めて大丈夫と言うように小さく笑った。その様子を微笑ましげに眺めながら京が続ける。


「有り体に言えば、能力者専用の医師と警察官みたいなものだな」

「医師と警察っすか?」

「そうだ、力を使い過ぎてないか?使い方を誤ってはいないか?みたいな事を定期的に面会して把握したりするのが仕事だな」


灯は微妙そうな奏と燕と一人だけ納得したような表情を浮かべた杏路を見渡して笑う。


「今、それだけって思ったろ?」

「正直、少し思いました」

「だよなぁ、俺も初めて聞かされた時は何だそれって思ったしな」

「今は違うんっすか?」

「だって考えてもみろよ、相手は自分と同じ能力者だぜ?その心の中を覗くって、難易度高すぎると思わねぇか?」

「あ、」

「そう言われればそうっすよねー」

「なんでまぁ、能力者のまとめ役なんかになると身内を取り締まったりもしなきゃなんねぇ訳」

「まぁ、能力は悪用しようと思えば簡単に出来てしまいますからね」

「能力持ちの杏路の口から聞くと、余計重く聞こえんな」

「私も考えた事が無い訳ではありませんので」

「あー、まぁ、有れば使いたくなるのが人間だしな……」

「私には瀬戸際で立ち止まらせてくれる相手が居ましたが、全員が必ずしもそうと言う訳ではありませんからね」


杏路の言葉に奏達が深く頷いた所で、灯が膝の上の柊の手をひらひら振りながら続ける。


「それにさっきも言ったように朽木家の血かどうかの選別もあるし、思ったより楽じゃねぇんだよなぁコレが」

「あ、そっか!それもあったっすねー」

「しかも、それに輪をかけて面倒い仕事も残ってるしな」

「まだ他にもあるんすか?」

「おー、あるぞー……これが一番面倒くさいんだよなぁ」

「んー?残念ながら、思い付かないっすねぇ」


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