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04


柊達は廊下に出て向かいの部屋のドアを開ける。

中は柊の部屋より少し広めになっていて、奏と杏路と燕の3人でシェアして使うらしい。


「個室じゃ無くて良いの?」

「まぁ、俺等は寮生活で慣れてるっすからねー」

「距離感の測り方も皆心得てますしね」


個人のスペースと共有スペースがキッチリ別れていて、燕のスペースはモノクロで綺麗にまとめられ、杏路のスペースはオフホワイトとブルーグレーでシンプルにまとめられている。奏のスペースは資料や本が多く、大学の教授室のような感じになっている。


「荷物をまとめるのをお手伝いした時に他の守役の部屋も見ましたけど、インテリアって性格が出ますよね」

「奏さんのスペースが仕事一色な事以外は、大体イメージ通りっすけどね」

「貴方も原色っぽいイメージだって言われてませんでしたか?」

「あー、綾瀬さんとか柘榴さんには言われたっすけど、付き合い長い人には普通に納得されてたんで、ノーカンって事で」

「ふふ……では寝室に行ってみましょうか」


そう言って杏路に促されて入った寝室の中は、シングルベットが等間隔に3つ並べられ、間に仕切りが立ててある。右から奏、燕、杏路の順で使うそうだ。


奏のベットはアジアンテイストになっていて、燕のベットは黒フレームでその上にトランプ柄の掛け布団が乗っている。杏路は白いフレームに紺色の掛け布団が乗っている。


「特に問題も無さそうなんで、次、行きます?」

「そうですね、本館の上から順に回って行きましょうか」


寝室を出た所で、部屋のチャイムが鳴らされた。

どうせ出る所だったのでインターホンではなく直接部屋の扉へ向かう事にする。


「あれ?飛沫さんじゃないっすか」

「今、良いか?」

「えぇ、大丈夫ですよ。何か問題でもありましたか?」

「特に問題があった訳ではなく、個人的な用事なんだが……」

「何の用事っすか?」

「いや、警備配置と緊急設備についてのチェックシートを自分用にまとめたんだが、もし良かったら使わないかと思ってな」

「まじっすか?うわぁ、すっげー助かります」

「ありがとうございます、とても助かります。今から回ろうと思っていたので、ついでに確認しておきますね」

「あぁ、そうすると良い」

「どうせなら、飛沫さんも一緒にどうっすか?」

「時間はあるから、こちらとしては構わないが……」


そう言って飛沫が柊の方を見たので、柊はコクリと頷いた後に飛沫に向かって手を伸ばした。飛沫は笑って柊の体を抱き上げると杏路と燕と一緒に歩き出す。


「じゃ、まずは見取り図の確認からっすね」


そう言って燕がタブレットに表示させた見取り図を飛沫の腕の中から柊が覗き込むと、本館の2階部分には、リビング、ダイニング、キッチンと遊戯室が書き込まれている。


「2階は飛ばして1階から見ません?終わって上がって来る頃にはちょうどおやつの時間だと思うんすよねー」


柊達は燕の言葉に同意して、階段を1階まで下りて行く。


本館の1階部分は、メディカルルームとジムが入っている。

柊達がまず最初に向かったのは、一番手前にあるメディカルルームだ。


メディカルルームの中は、病院のように白系ではなくナチュラルベースで統一されており、どこかほっと息が吐けるような温かな雰囲気の静かな空間が広がっている。


柊達が部屋の中へ入ると、奏と弥生が分厚い資料を手に何やら話し込んでいる所だった。


「もしかして、お邪魔しちゃいました?」

「いや?お互いの集めたデータを摺り合わせてただけだからな、問題ないぞ」

「氷歌さんと綾瀬さんは居ないんすか?」

「あの二人なら多分、3階に居るんじゃ無いか?」


奏は手に持っていた資料を机に置くと、飛沫の腕の中に居る柊の顔を覗き込んだ。


「今日からは病院まで行かなくてもここで診察出来るからな」

「ん」

「それって、病院と同じ設備が揃ってるって事っすか?」

「流石に手術は出来ねぇけどな」

「灯様と才様があらゆる伝手をたどって最新の医療機器を惜しみなく揃えて下さったからな、そこら辺の病院より余程精密な検査が出来るぞ」

「凄いっすねー」

「病院までの移動がないのはとても助かりますね……それに桜ノ宮からでしたら、病院へ向かうよりもこちらへ戻る方が近いので、その点もありがたいです」

「あー、それはあるっすね」


そこまで話した所で、奏と弥生に柊達にも関係ありそうな設備について確認してから、4人は部屋を後にする。廊下を進んで次に向かうのはジムスペースだ。


メディカルルームの奥にあるジムスペースには、かなり本格的なプロ仕様の設備が完備されている。中にあるトレーニングルームでは、スマホや守役に配られているデバイスなどの端末を登録しておくと、自動で身体データが記録される機械がある。その上、データを元に適切なトレーニングメニューを組み立ててくれるシステムなどもある。


柊達は各自のスマホや端末を登録して、専用の部屋で身体スキャンを行った。

その後は入り口の脇に用意されていたタブレットを使い、基礎情報を入力して行く。


それが終われば、今度は来た道を引き返し、2階へ上がって行く。

本館の2階部分には、リビング、ダイニング、キッチンと遊戯室などが入っている。


2階に着いた柊達は、まず奥にある遊戯室の中から確認して行く。


遊戯室は灯の別荘を参考に作られており、ダーツやビリヤード、ボーリングやゲームの筐体などがある他、カラオケルームやバーカウンター、シアタールームもある。


ゲームの筐体が置かれている場所は大人のゲームセンターのようなイメージなっており、煩いBGMの代わりにゆったりとしたジャズが流れている。


「筐体1つとっても古いのから新しいのまで結構な種類があるんで、退屈はしなそうっすねー」

「むしろ、一部の人間は抜けだせなくなりそうだな」

「バーカウンターには簡易キッチンもありますし、入り浸る人が多そうですね」


会話しながらも燕に視線を固定している二人を見詰め返して、燕は視線を泳がせた。


「わかってますって、ちゃんとセーブしますから……」

「わかっているなら良いんですよ」


にっこり笑った杏路も連れて、柊達はシアタールームも覗いて行く。


シアタールームには、大画面のスクリーンの前に1人掛けのリクライニングチェアーが8台と、両脇に4人掛けのリクライニングソファーが少し斜めに並べられていた。


「高級シアターって感じっすねー」

「灯様の別邸よりスクリーンも大きいですし、こちらは3Dなどにも対応しているようですよ?」

「あ、本当っすね……」

「確か灯様が張り切って手配していた覚えがあるな」

「実は俺、酔うんで3Dは苦手なんっすよね……」

「酔う訳ではありませんが、私も特に好んでは見ませんね」

「うちの人間にもそう言う人間の方が多いぞ。何でも、この大きさのスクリーンで満足行く画質を求めたらこれしかなかったそうだ」

「あぁ、なるほど」

「実際、灯様も3Dはほとんど見ないからな」


そんな事を話ながら、柊達はシアタールームを出てキッチンへ向かう。

時計を確認したら14:40だったので、少し早いがおやつタイムにする事にしたのだ。


柊達がキッチンに入ると、広い作業台の前でせっせとシュー生地とエクレアをオーブンから取り出している雨水とその様子を横から眺めている祈の姿が目に入った。


「もう来たのか?まだ焼き上がったばかりだから少し待て」

「はーい。……祈さんはここで何してるんすか?」

「お腹減ったからご飯作ってもらってるんだよ〜」

「お昼食べてないんすか?」

「さっきまでアトリエに居たからね〜」


祈がそう言った所で、別のオーブンからパングラタンを取り出した雨水が口を開いた。


「昨日から蘢りっぱなしで1回も顔を出さないので、先程アトリエから引きずり出して来た所だ」


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