*1月4日
今日は緋野家主催の守役別トーナメントの個人戦が行われる。
柊の守役からは、緋野 杏路、緋野 燕、花森 奏、草薙 杏、日下部 祈が出場する予定で、灯の守役からは、久遠 睦月、花森 弥生、花森 雨水、草薙 零が出場する予定だ。
守役別のトーナメントは朽木家本邸の裏にある分家の本拠地で行われる。
分家の本拠地は通称分家棟と呼ばれていて、敷地の中には道場が3つもあるらしい。
今回のメイン会場はその中で1番大きい第一道場だ。第二道場では非戦闘員の心得講座や応急処置等の講習会が開かれ、第三道場では予選落ちした人達の順位確定戦が行われる。
大会は午前中に予選、昼休憩を挟んだ午後に本戦と言う流れになっている。
出場者の中で本戦に出場できるのは予選での成績が上位だった12人のみで、トーナメントの最初の対戦相手は本戦の直前にくじ引きで決まる。
会場となる第一道場は6つに区切られており、同時に6試合ずつ行われる。一試合5分の点数制で、終了時に点数の高かった者が勝ちだ。12人全員と戦い勝ち点の多い者から順位が決まる。勝ち点が同数の場合は試合点数の合計によって順位が決まる。
*
本来なら今日の柊の守役は杏と奏と杏路の予定だったが試合にエントリーしている関係で、珊瑚と柘榴が代わりに柊の側に付いている。それと前から約束していた飛沫がいる。
柊は午前に行われる予選会場には行かずに離れのリビングにあるモニターで観戦する事になったので、お昼休憩の時に本戦の会場まで連れて行ってもらう予定だ。
柊はリビングのこたつで飛沫と一緒にまったりと映し出された会場の様子を眺める。
その結果本戦に勝ち上がったのは、柊の守役の杏路、燕、杏。灯の守役の雨水、零。葉の守役の緋野 夏夜、久遠 緑。京の守役の緋野 光輝。夏目の守役の緋野 冬歌。楓の守役の緋野 笹芽。夜の守役の緋野 鶉。咲久の守役の緋野 汐流の計12人となっている。
午後から始まる本戦の会場では第三道場で行われる12位以下の順位決定戦の様子も観戦ルームのモニターに流れるそうなので、柊は試合時間をチェックしておく。
「奏と祈は残念だったな」
「みんな強かったから……」
「そろそろ移動するか?」
「まだ珊瑚と柘榴が来てないけど、良いの?」
「第二会場で足止め食らってるようだから、第一会場で合流しよう」
「わかった」
人が多くて迷子になるといけないので、柊は飛沫に抱き上げられながら移動する。
柊達が向かっているのは第一会場の二階席にある能力者専用の観戦ルームだ。
観戦ルームの手前には守役ごとに割り振られた選手の控え室があって、飛沫と柊は2階へ上がる前に差し入れを渡す為に灯と柊の守役がいる控え室を尋ねる事にした。
柊が自分の守役がいる控え室の扉を開けると、中には灯と夏目の守役も揃っていた。
初対面の人もいるので、柊は杏路と燕がいる所に素早く移動する。
「ひぃ様、来てくれたんっすねー」
「ん、差し入れ」
「ありがとうございます」
「香坂さんからっすか?」
「アップルパイって言ってた」
「じゃあ飛沫さんが持ってるのが昼食っすね」
「うん」
柊達の視線に気付いた飛沫は、控え室の真ん中にある大きめのテーブルに籠を置いた。
「香坂さんから昼食の差し入れだ。足りない分は各自調達しろとの事だ」
飛沫の言葉に初めて見る顔ぶれの3人から嬉しそうな感情が伝わって来る。
「わぁ、僕香坂さんのご飯って初めてです」
「そうなんっすか?」
「はい、夏目様に付く前は海外組だったので」
「俺もひぃ様に付く前はは海外組だったんすよー」
「一緒ですね」
会話の内容から言って、飛沫の隣でおっとりのんびりとした空気を纏っている大柄な男性が夏目の守役の緋野 冬歌のようだ。柊と目が合うとにっこり微笑んだ。
「柊様ですよね、夏目様から何時もお話伺っています。これからは会う機会も出来ると思うので仲良くしてくれると嬉しいです」
「……ん、よろしく」
柊が冬歌に返事を返すと、杏と一緒に話していた黒髪黒目の銀縁眼鏡をかけたしなやかな体型の男性と、金色の目と褐色の肌をした長身の男性にも話しかけられた。
「俺は花森 雨水だ。灯様や他の守役から話は聞いている、俺達とも仲良くしてもらえると有り難い」
「……」
「横にいるのは草薙 零だ。あまり話さないが嫌っているとかでは全くないので気にせず付き合ってもらえると有り難い」
「わかった、よろしく」
挨拶も済んだので飛沫と杏路が広げた昼食を頂く事にする。
柊は燕と杏路の間に座って渡されたクロワッサンサンドを口に入れる。
厚めに切られたハムと濃厚なチーズに自然と笑顔になった柊が視線を感じて顔を上げると、何故か会ったばかりの3人に注目されていた。不思議そうに柊が小首をかしげると、3人は気が付いたようにはっとしてから視線をそらせて食事を再開させた。
「気にしないで良いですよ、次はどれにしますか?」
「タマゴ」
「チキンも美味しかったんで、半分こにしましょー」
「良いよ」
「燕は半分じゃ足らないだろう」
「全く足りないっすよー、後で杏路さんと一緒に外の売店にでも行くしかないっすね」
「悪いな、流石に燕と杏路の食事量を1人で運ぶのは難しくてな」
「いえ、俺と杏路さんの燃費が悪いのが原因なんで気にしなくて良いっすよー」
「それに、それを言うなら飛沫も足りないだろう?」
「俺は観戦室で取れるからな」
「あぁ、能力者用の観戦ルームって食事頼めるんでしたっけ」
「飲み物と軽食の他におやつまで頼めるぞ」
「しかもモニターで全試合流れるから試合の度に移動する手間もないしな」
「へぇー、かなり快適そうっすねー」
「灯様が先代当主と魔改造していたからな」
「うわぁ、簡単に想像付くっすね」
のんびり会話しながらあっという間に大量のクロワッサンサンドが空になった。
「じゃあ、ちょっと売店まで行って来るっすねー」
「私も席を外しますね」
「おー」
杏の気のない返事と雑に振られた手に見送られて杏路と燕が控え室を出て行く。
食後のデザートにアップルパイを堪能してから、飛沫と柊も観戦ルームへ移動する。
クッションの沢山置かれた大きなソファーの前には、試合会場が映し出されたモニターが設置してある。大きなモニターの両脇に小さなモニターが設置されていて、そこに第三道場で行われる予定の下位の順位決定戦が映し出されるようだ。
食べ足りなかった飛沫が内線で注文している所で、柘榴と珊瑚が合流した。
「迎えに行けんで、ごめんなぁ」
「ううん、大丈夫」
「第二会場はかなり混んどって、列から出られやんかったんよ」
そう言いながらソファーに座った柘榴と珊瑚に飛沫が受話器を離して声をかける。
「2人は昼食は取ったのか?まだなら一緒に頼むが」
「ありがとぉございます、そんなら適当に頼んでもらえますか?」
「分かった」
*ブクマ&評価&感想、ありがとうございます。




