03
柊が車から降りて皆と一緒に離れへ向かっていると、灯に本邸の縁側から呼び止められて手招きされたので全員で近づいて行く。
「初詣楽しかったか?」
「うん」
「この後予定無いなら寄って行かないか?中に才達もいるぞ」
「なら俺は土産持って先に戻ってるぞ」
「わかった」
奏が杏路が持っていた荷物も回収して分家棟へ向かって行くのを見送って、柊達は縁側から靴を脱いで上がる。灯が出て来た所から部屋に入ると、中には京と才と夏目がいた。
「ひーちゃん、あけましておめでとう」
「ひー君、あけましておめでとうございます」
「柊、あけましておめでとう」
「あけまして、おめでとう」
挨拶を返し終わった所で灯に抱き上げられて膝の上に座らされた。
「ひーちゃん達は初詣に行って来たんだよね?」
「うん」
そう答えてから柊が燕の方を見ると、燕は手に持っていた紙袋を机の上に乗せた。
届かない柊の代わりに京が袋を取って柊の前まで運んでくれる。
柊は京にお礼を行ってから袋の中から買って来たお守りを取り出して渡して行く。
「皆の分のお守り用意してくれたの?」
「うん」
「私の分もあるのか」
「燕が挨拶に来るって言ってたから……」
「そうか、ありがとう」
嬉しそうに微笑んで柊の頭を撫でてから、京は着物の胸元からポチ袋を取り出す。
「礼にはならないだろうが、お年玉だ」
そう言って京は夏目にオレンジの和柄の袋を、柊には青地の雪の結晶柄の袋を手渡した。
だるまが描かれた袋と黒猫の描かれた袋と白猫の描かれた袋はまとめて才に渡す。
「これは茜とリトと稲穂に渡してくれ」
「分かった、帰って来たら渡しておくね!ありがとう」
「ありがとうございます」
「ありがと」
「どういたしまして。大事に使ってくれ」
そう言った京は、燕と杏路にも白地に手鞠の描かれた袋を手渡した。
「え、俺等も頂いて良いんっすか?」
「守役も家族みたいな物だからな」
「お気遣いありがとうございます」
「ありがとうございます」
夏目は才に、柊は杏路に自分の分を預けた所で、灯が口を開いた。
「俺と葉からのは才にまとめて渡してあるから後で受け取れ」
「ありがと」
「ありがとうございます」
「遠慮せず好きに使えよ」
灯がそう言って柊と夏目の頭を撫でた所で、襖の向こう側から声がかかった。
「飛沫です」
「おう、入って良いぞ」
灯の声に飛沫はそっと襖を開いて、静かに頭を下げる。
「ご歓談中に失礼致します、そろそろ挨拶の席に戻って欲しいと葉様から言付けがありました」
「分かった」
「残念ながら戻らないと行けないみたいだね」
「まったく、どうせならいっぺんに来てさっさと帰れっつうの」
「向こうにだって色々あるんだから、我が儘言わない」
「柊達は離れに戻るのか?」
「うん」
「図書塔に行くなら、ちゃんと中暖めてから中に入れよ。特に地下は寒ぃからな」
「ん、わかった」
灯は柊を膝から下ろして頭を数回ぽんぽんしてから飛沫と一緒に部屋を出る。
そのすぐ後に京と夏目も柊の頭を撫でて廊下に出て行き、最後に才にハグされた後に頬にキスを貰った。柊は廊下に繋がる襖の所から会場に戻って行く皆を見送る。
柊達は縁側から上がって来たので、灯達とは反対方向に廊下を進んで行く。
「いやー、この歳でポチ袋入りのお年玉を貰うとは思わなかったっすねー」
「そうですね」
「大体現物支給か振込のどっちかで済まされる事が多いっすからね」
「貰っても封筒とかですしね」
「しかも守役の人数分きちんと用意してくれるとか」
「まあ、新様の件の謝罪の意味もあるとは思いますが……」
「あの後すぐに大きいプロジェクト立ち上がって大変だったって話ですもんねー」
「まさかここまで時間がかかるとはご本人も想像していなかったでしょうし」
「2年がかりでようやく日本に来れたは良いっすけど、肝心のリトはいないし京様も災難っすよね」
柊は2人の話を聞きながら、縁側の上がり口に綺麗に揃えられた靴に履き替える。
履き終わったら差し出された燕の手を取り、そのまま手を繋いで離れに向かう。
「京様との挨拶も終わりましたし、暇になっちゃいましたね」
「図書塔へ向かいますか?」
「ん」
柊達は図書塔へ向かう途中で厨房に立ち寄る。
厨房の中では香坂が作業台の上でお昼に使うと思われる魚を捌いていた。
「あ?帰って来てたんか」
「さっき」
「今手ぇ離せねぇから、少し待ってろ」
「わかった」
柊は杏路が厨房の端から運んで来た椅子に座って香坂の作業が終わるのを待つ。
「この後何すんだ?」
「図書塔で読書っすかねー」
「羽子板とか福笑いとかはしねぇのか?」
「そんなもんまで用意してあるんっすか?」
「駒と凧もあんぞ」
「そろそろまた雪が降りそうなので、明日天気が良かったらやってみますか?」
「ん」
捌き終わった魚を業務用の冷蔵庫に仕舞い、手を洗った香坂が柊の椅子に近づいて来る。
「良し!で、俺に何の用だ?」
柊は横に立つ燕の持っている紙袋から無病息災のお守りが入った袋を取り出して渡す。
「お土産」
「お、ありがとな」
香坂はその場で柊に貰ったお守りを手早く腰紐に括り付ける。
「お礼にとっておきを出してやるよ」
そう言って香坂は休憩用の軽食と飲み物を用意している杏路のワゴンにタルトの乗ったお皿を追加した。
「栗きんとんとカスタードのプリンタルトだ」
「へぇ、面白い組み合わせっすね」
「去年プリンタルト作ってやったら祈が栗きんとんぶっかけて食ってやがってな……今年は最初からこの形で出してやろうと思って作っといたんだよ」
「ひぃ様に上げちゃって良いんすか?」
「これは多めに用意しておいた予備分だから問題ねぇよ」
「ありがと」
「かなり細かく調整した自信作だからな、味わって食えよ」
香坂はそう言って笑って柊の頭をがしがし撫で、作業に戻る為に手を洗った。
用意の終わった杏路がワゴンを押して向かって来たので、燕は扉を開けてから柊の座っていた椅子を片付け、柊と手を繋ぐ。
「昼飯になったら内線鳴らすかんなー」
柊は香坂の声に背中越しに手を振って、杏路と燕と一緒に図書塔へ向かう。
*
柊達が中に入ると、コントロールパネルからの遠隔操作のおかげで中は暖かい。
柊はコートとマフラーを外しソファーの背に引っかけ、おしぼりで綺麗に手を拭く。
柊は杏路が入れたミルクティーでほっと一息ついた。出店で色々食べてお腹は空いてないので香坂のお手製タルトは後で頂く事にして、読みたい本を探しに行く。
地下には行かず1階のソファースペースで柊がまったり読書をしていると、図書塔の扉が開いて分家棟に行っていた奏が中に入って来た。
「お土産、渡して来たぞ」
「ありがと」
「珊瑚は熱も下がって来たし、明日も1日様子見て問題なかったら復帰だ」
「反応どうでした?」
「珊瑚は普通に喜んで、綾瀬からは無表情で礼言われた。祈と柘榴は笑ってたな」
「ちなみに綾瀬さんにどっち渡したんっすか?」
「勿論、魔法少女だ」
奏と燕は親指を立て合って笑った。
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