02
柊は燕と一緒に杏路の隣に座る。杏路の向かいに奏が、燕と柊の向かいに杏が座る形だ。杏路が鞄から取り出したブランケットを柊の膝に掛け、燕が柊の髪をゴムでまとめる。
「おー、大量だな」
「奏さん以外は皆大食らいだから問題ないっすね」
「柊と燕は何を買って来たんだ?」
杏の問いかけに燕はテーブルの端に置いていた袋の中身をテーブルの上に広げる。
「皆は何買って来たんっすか?」
「俺は鈴カステラと大判焼きだな、小倉カスタードとキャラメルとチョコだ」
「俺はいかやきと焼きそばを買って来た。塩とソース、両方あるぞ」
「私はフランクフルトと一緒に売られていたアメリカンドックです。後は飲み物を」
「あー、飲み物の事は頭からすっぽり抜け落ちてたっすねー」
「まあ被っても荷物になるだけだし、問題ないだろ」
「じゃがバターは味見させてもらったらチーズの方が美味かったんでそっち多めに買って来たっすよ」
「クレープって書いてあるから、てっきり手持ちの奴かと思ってたわ」
「俺もそっちだと思ってたんっすけど近くで見たらスティックタイプの奴だったんで人数分買って来たっすよー」
「味は何なんだ」
「いちごカスタードとチョコバナナと黒蜜きな粉っすね」
「飴はお土産」
「綾瀬と珊瑚に持って帰るそうっす」
「なら俺は帰りがけに綿飴でも買って帰るか」
「あとはお守りだな」
「さっき社務所で買えば良かったっすかね?」
「混んでいたからな、後の方が人が少なくてゆっくり選べるだろう」
「それもそうっすね」
「それより、来たんじゃないか?日の出」
奏が手に持ったフランクフルトでゆっくりと太陽が顔を出し始めた地平線を指す。
杏路の鞄からカメラを取り出した杏がすぐ横にある柵に近づいてカメラを構える。
少しの間昇って行く太陽を静かに眺めて、柊達は食事に戻る。
「にしても、こんな特等席良く取れたっすね」
「地元の方が快く譲って下さいましたので、お言葉に甘えました」
「あー、なるほど」
「どうせだから俺もカメラ持って来れば良かったな」
「私のでも良ければお貸ししますよ」
「いや、大丈夫だ。そのかわりさっき杏が撮ったやつ後で俺の分も現像しといてくれ」
「あ、俺も欲しいっす」
「分かりました」
満足いく写真が撮れたのか戻って来た杏は柊達に向かってカメラを構えた。
「撮るぞ」
「何時でも良いっすよー」
杏は2回程シャッターを切った後、データを確認してから杏路の鞄にカメラを片付ける。
「写真好きなんっすか?」
「いや、元々はカメラが好きで集めていただけだったんだが……写真を撮る様になったのは最近だな」
「祈に教わってから撮り始めたんですよ」
「ちゃんと教えられるんですか?」
「祈はああ見えて人に教えるのとか結構上手いぞ」
「へぇー、何か意外かも」
そう言いながら燕は食べ終わった容器をまとめて行き、柊を膝の上から下ろした。
杏路は回収したブランケットを畳んで鞄に入れる。
「俺、これ片して来ちゃうんで、先に行ってて良いっすよー」
「分かった、社務所でお守り買ってるから」
「了解っす」
両手に持った袋を揺らしながら燕に見送られて柊達は社務所の方へ歩いて行く。
「さっきよりは全然空いてるな」
「もう少ししたらまた一気に人が増えるだろうから、さっさと並ぼう」
「そうですね、並んでいる間に誰にどのお守りを渡すか考えておいた方が良いですね」
「父親の分はどうする?」
「一応バラバラに1つずつ買って行きますか?」
「そうだな、健康と交通安全で良いか」
杏と杏路が相談している所に燕が戻って来た所ですぐに柊達の番が来たので販売所の前に向かう。背が小さくて台の上が見えにくくて柊が困っていると、奏が両脇に手を差し込んで持ち上げ、台の上が見える様にしてくれる。
最初に家族の分を選んでから、自分の守役と家族の守役の分等を選んで行く。
最終的に結構な量になったお守り達を神主のおじいちゃんが紙袋に入れて渡してくれる。
沢山買ってくれたおまけと言って、棚に飾ってあった狐のストラップを柊の手に渡す。
「良いんですか?」
「本来は御朱印を5回以上貰った人に配っとるもんなんだがの、まあ構わんじゃろ」
「ありがとうございます」
「ありがと」
柊が手鞠に乗った可愛らしい狐のストラップを両手で大事そうに包みながらお礼を言うと、おじいちゃんは笑いながら柊の頭を撫でてくれた。
帰りがけに杏路の後ろから柊が小さく手を振るとおじいちゃんだけでなく横にいた巫女さん達まで手を振り返してくれた。柊が照れてはにかむのを見てキャーキャー言っている。
「おー、大人気っすねー」
「燕よりキャーキャー言われてんな」
「まぁ、ひぃ様っすからねー」
のんびり歩きながら出店でお土産になりそうな物を選んで行く。
「綿飴の袋、魔法少女とライダーどっちが良いっすかね」
「どっちも買って渡せば良いだろ」
「いや、柘榴さんにも買って行こうかと」
「祈の分も入れて2個ずつ買えば良いんじゃないか」
「あー、そうします」
「甘い物だけだとアレだし、何か食事系も買って帰るか?」
「たこ焼きとじゃがバターで良いんじゃ無いっすか?」
「それで良いか、結構美味かったしな」
「あとはヨーヨーっすね」
「それは必要なのか?」
「出店のお土産って言ったら定番じゃないっすか?」
「まぁ好きにすると良い」
「どうせだから皆で誰が一番取れるか競争しましょうよ」
燕の提案で全員でヨーヨー釣りの出店に並ぶ。順番が来てぎゃーぎゃー言いながら挑戦し、杏と奏がゼロ、燕は1つ、杏路と柊が3つと言う結果になった。
柊は自分の取った物の中から黄緑色の物を選んで、残りの2つを奏と杏に渡す。杏路の取った物は来ていない守役の中から欲しい人に渡すらしい。
「ひぃ様と杏路さんの勝ちっすね」
「勝ったら何かあんのか?」
燕はにやりと笑うと、コートの内ポケットからキャラメルの箱を2つ取り出した。
「俺が華麗に撃ち落とした可愛い子ちゃん達をプレゼントっす」
「いつの間に射的なんてやってたんだよ……」
「さっきゴミ捨てから戻る途中っすねー」
「アホか」
「ひぃ様にはチョコも付けるっすよ」
「ありがと」
柊は燕の体温で若干ぬるくなったキャラメルとチョコレートバーを受け取る。
明太バター醤油味のたこ焼きとチーズがたっぷりかかったじゃがバターを買って、杏路に抱き上げられながら階段を下りて駐車場に向かう。
先に下りた燕が回した車に乗り込み、燕が助手席に移り杏路の運転で本邸へ帰る。
「いやー、楽しかったっすねー」
「あぁ久しぶりに初日の出も見たしな」
「そう言えば燕は年越しはほとんど海外で過ごしていたんだったか」
「そうっすよー、ひぃ様付きになる前はほとんどフランスかドイツだったすね……極稀にハワイとかもあったっすけど」
「そう言う杏さんも海外組じゃなかったですっけ?」
「あぁ、研究所がフランスにあったからな。と言っても、新年の祝いには参加していなかったからこういう感じは子供の頃以来だな」
「あー、何かそんな感じするっすねー」
「俺と杏路はずっとこっちだからな」
「毎年初詣とか行ってたんですか?」
「今日行ったのとは反対側にあるでかい神社に本家に残ってる奴は毎年全員で行くんだよ」
「へぇ」
「多分今年も挨拶回りが落ち着いたら行くと思うから、興味があるなら行って来たら良いんじゃないか?」
「後で当主に確認しとくっす」
そんな事を話している内に、杏路の運転する車が本邸の前に着いた。
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