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04


柊は、ずっと気になっていた分家について色々と聞いてみた。


朽木家の分家は久遠家、緋野家、花森(はなもり)家、草薙(くさなぎ)家、日下部(くさかべ)の5家で、分家によって得意分野が違うらしい。久遠家は主に秘書や対外交渉役などを担当する頭脳派集団。緋野家は主に護衛や運転手などを担当する肉体派集団。花森家は主に医療や教育などを担当する専門家集団。草薙家は主に技術や生産、情報操作などを担当する技術者集団。日下部は主に芸術や伝統工芸方面を担当する個性派集団だと思っておけば間違いないと言う事だ。


分家の人間は12歳までにどの分野に進むのかを決めて、その分野に特化した家へ入る。

なので家格に差は無く、5家全体が一つの家族と言う認識だそうだ。


朽木家の人間1人に対し各分家から最低でも1人(能力者の場合は2人)ずつ守役として仕える事になっていて、分家の人間は1度自分が仕えるべき相手と決めたらその主以外の人間に鞍替えするような事は絶対にない。仕えるべき相手かどうかの判断は一緒に過ごす内に自然と理解出来るようになる人間もいれば、会ったその瞬間に分かる人間もいる。


その逆で、朽木家の人間も自分の守役となる人間は自然と本能で嗅ぎ分けられるらしい。

勿論、仕えるべき相手かどうかの判断は一緒に過ごす内に自然と理解出来るようになる人間もいれば、会ったその瞬間に分かる人間もいて、能力者であっても変わらない。


今日迎えに来た杏路も実は柊の守役候補らしく、柊がその話を聞いた後に杏路に会った瞬間に感じた不思議な感覚の事を伝えると、才はとても驚いていた。確かにいるとは話したが、会ったその瞬間に分かるのは本当に珍しい事らしい。


柊の守役候補に関しては、入学前に顔合わせの機会が作られるそうなので、その時に杏路とも正式な顔合わせが出来るそうだ。才から心の準備だけしておくように言われた。


もし20歳までに主の決まっていない分家の人間は、新しく生まれた朽木家の人間に優先的に顔合わせが出来る。流石に産まれたばかりの赤ちゃんに会っても分からないんじゃないかと思ったが、不思議な事にお世話している内に何となくわかるので問題ないそうだ。


そう言う訳で、朽木の血を持つ人間は総じて分家と言う名の人脈チート持ちと言える。


不思議だなとは思うけれど、能力者が普通に存在しているような世界なのであまり難しく考えずにそう言うものとして受け入れておいた方が精神衛生上は良さそうに思う。


柊が次に聞いたのは、桜ノ宮(さくらのみや)学園と逢坂(おうさか)学院の違いについてだ。


桜ノ宮学園では、本家(主家)や分家の次期当主と側近候補、一般企業の跡継ぎや御令嬢等の教育に力を入れていて、家庭環境を考慮したサポート体制が万全に整っている。


初等部から単位制が取り入れられていて、申請すれば特別試験を受ける事ができる。

試験に受かりさえすれば授業免除が認められるので、初等部で既に家業の手伝いをしている人達などは、受けられない分の単位はここで取れる様になっている。


ただし、通常よりも試験難易度(合格基準点)が高いので、本当に優秀な生徒しか合格する事は出来ないらしい。一応救済処置として、再再試までは受けられる。


また、特別な事情を抱えた生徒や保険室登校の生徒などのサポートも充実していて、特別支援制度などもあり、対象者は年間行事なども申請すれば免除してもらえるらしい。


十家の子供は全員、セキュリティーやら学習施設の関係上、桜ノ宮学園か逢坂学院に通う事になっているので、必然的に柊は桜ノ宮に通う事になるらしい。


まあ水鷹と違って柊には秋羅もいるし、あまり心配や不安は必要ないと思う。生徒の大半は幼稚舎からの持ち上がりなのもあって、友達作りにそこまで苦労もしないだろう。


実は桜ノ宮学園はそもそも、朽木家の能力者が安心して学校生活を送る為だけに分家の人間達が建てた学校らしい。当時の桜ノ宮家当主が、他にも能力者で困っている子供がいると相談した所、朽木家と久遠家は入れ替わりを画策し始めた時期だったので、代わりに運営してくれるならという事で話がまとまって今の桜ノ宮学園が誕生したらしい。


なので、学園には朽木家専用エリアと理事達に呼ばれている場所が存在している。


保健室登校の生徒専用玄関&通路や個別カウンセリングルームに図書館の個室や食堂の個室などの無駄に充実した設備は全て、分家の人間が朽木の為にと暴走した結果だそうだ。


(ひいらぎ)も、能力者特別支援制度の対象なので、(さい)から朽木家専用エリアで過ごしても良いよー、と許可をもらった。今のところは普通に通う気でいるが、柊の能力がどの程度のものかまだ完全には把握できていないので、実際にどうなるかは分からない。


乙女ゲームの掲示板で【隠しキャラよりサポートキャラに合う方が難しい】【サポートキャラなのに協力する以前に会える気がしない】【柊君が既に最高難易度の隠しキャラ】【バグで、実はそもそも存在してない】【柊君??BL版で会えるよ】【BLゲーのデフォルト名で、初めて存在を確認した】とか色々と言われてた理由を知った。

もしもゲームの中の柊が朽木家の特権を使って個別カウンセリングルームに登校している生徒なら、これだけの隔離体制が整ってたら出会うのはまず無理だろう。


逢坂学院では、その他の本家、分家の人間や、優秀な一般生徒に対する教育に力を入れているらしい。こちらも単位制が取り入れられていて、それ以外にも、仕えるにあたって必要な技術やサポートの仕方など、専門的な分野を学ぶ事ができるらしい。それにくわえ、特待生には、授業料全額免除、寮費&生活補助費の支給(返済不要)制度などがある。


将来的にどの立場に立つのかによってどちらの学校に通うのかが決まっているそうだ。


能力者は、幼少期~中学卒業までは力の制御や発動に不安定な部分が多く体調を崩しやすいので、特別支援制度や授業免除を目当てに、桜ノ宮に通う者が多いらしい。


ちなみに今までに確認されている能力は、二階堂家分家の双神【予知】、東雲家本家の【念写】、禄宮家本家の【危機察知】、八雲家本家の【思念同調(サイコメトリー)】、朽木家主家の【精神感応(テレパシー)】、冬道家分家、犬飼家の【身体能力】で、発現者自体はそれほど多くは無いらしい。


そこまで聞いたところで、目的地に辿り着いてしまったようなので柊は話を中断する。


「さっき百貨店で食べて帰っても良かったんだけど、せっかくお出掛けしたからね」


才に食事の為に案内されたのは二階建ての煉瓦造りの洋館だった。家の入り口には小さなプレートが掛かっていて【cafe : Lune noire/本日営業中。】と書かれている。


柊が才に促されて木の扉を開けると、チリンと涼やかなベルの音がした。


柊達が中に入ると、ゆったりした音楽が控えめに流れるアンティーク調の家具の置かれた落ち着いた雰囲気の空間が広がっていた。どうやら、隠れ家風のカフェらしい。


「ひーちゃんの好きそうな雰囲気でしょう?」

「ん」

「ここは学園からの帰り道にあるから、気に入ったのなら学校帰りに来ると良いよ」

「ありがと」


柊が才の言葉にコクコク頷いていると、カウンターの奥から背の高い男の人が出て来た。

柊は人見知りを発動して、咄嗟に才の後ろに隠れる。


「いらっしゃい。ってなんだ、才か」

「久しぶりに会ったのに、なんだって言うのは少し酷くないかな?」

「再婚してから一度も来ねえ奴よりはマシだろ?」

「あー、その事については本当にごめんなさい……これからはまたちょくちょく遊びに来ます」


そう言って才は顔の前で両手を会わせてから、そっと片目だけ開けて表情を伺う。


*ブクマーク&評価&感想、ありがとうございます。

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