02
レースゲームは結果が分かりきっていると言う事でパズルゲームに変えたら、さっきの仕返しとばかりに綾瀬が無双し出した。
「綾瀬って落ちゲーは上手いのに、何であんなにレース下手なの?」
「さぁ、自分でもよく分かりませんね」
「ひぃ様、見てるだけだと暇じゃ無いっすか?コントローラーいります??」
「大丈夫だよ。見てるだけで、楽しいから」
「なら良いっす」
「あ〜、また負けちゃったや」
「病院勤務の間に随分やり込みましたからね……」
「そんなに暇っだたの〜?」
「いえ、私の担当ではなかったんですが"このゲームで自分に勝てたら手術を受けても良い"とおっしゃる患者さんが居まして……練習相手として付き合っているうちに私の方が上手くなってしまいました」
「へぇ、その後結局どうなったの?」
「どうしても勝てないと同僚に泣き付かれて、結局私が対戦して勝ちましたよ。最初はごねられるかと思いましたが、その後は大人しく手術を受けてくれましたし」
「ふ〜ん……その人、男?」
「いえ、可愛らしい女の子でしたよ」
「対戦したのって1回だけ?」
「その後もちょくちょくゲーム機片手に私の所に遊びに来ていましたよ」
「それってさぁ……」
余計な事を言おうとした祈の口を、燕が咄嗟に手で塞いだ。
「別のゲームにしますか?」
「今度は飛沫さんも勝てそうなのが良いっすよねー」
「別に気を使わなくていいぞ、柊のおかげで操作には慣れて来たからな」
「あ、メンテ明けてるから俺はいち抜けね〜」
時計を確認した祈が放置されていた鞄から携帯ゲーム機を取り出してソファーに寝転ぶ。
他の人間はそのままパーティーゲームに移行した。
わーわー言いながらゲームを楽しんでいると、飛沫の膝の上で柊が眠ってしまった。
「すまない、少し待ってくれ」
コントローラーを置いて飛沫が柊の体を抱き上げると周りの人間も状況を把握した様だ。
飛沫が声をかけるより先に杏路が部屋を出て行き、燕が眠って居る柊の顔を覗き込む。
「ひぃ様、ぐっすりっすねー」
そう言いながら柊の頬をつんつんしている燕を、綾瀬が襟首を後ろから引っ張って強制的に引きはがしながら小さな声で注意する。
「せっかく眠っているのに、起こしたらどうするんですか……」
「大丈夫っすよー、このくらいじゃひぃ様起きないっすから」
そこにブランケットを持った杏路が戻って来た。
「上に運ばなくて良いのか?」
「柊は人の体温が側にある方が良く眠れるみたいなので」
杏路はそう言って祈の方に掌を向ける。
「ちょうど良くそこに寝転んでいる人にベットになってもらいましょう」
「良いよ〜」
杏路の発言に、祈がうつぶせだった体勢を仰向けに変えながら両手を広げた。
飛沫は腕の中の柊を起こさない様に祈に近づくと、そっと柊の体を下ろした。
同級生に比べても小柄な柊の体は大柄な祈に抱き込まれていると余計に小さく感じる。
「ひぃ様って、朽木にしては珍しく小柄っすよねー」
「灯様も昔は小さかったそうなので、隔世遺伝かもしれませんよ」
「じゃあ高等部ぐらいになったらひぃ様もでっかくなるんすかねー」
「……なんか、あんまり想像できないね〜」
「どっちにしろ、将来は美人さんになるって事っすね」
「筋肉欲しいとか言い出したらどうする〜」
「それは……」
「心配しなくても、灯様か才様みたいな感じで落ち着くと思うっすけどねー」
「そうだな、少なくとも俺みたいにはならないだろう」
「飛沫さんみたいな体型の方が俺は羨ましいっすけど」
「そうなのか?実力的には申し分無いと思うが」
「俺と杏路さんだと、ぱっと見が強そうに見えないんっすよねー」
「それはありますね」
何となくそのまま柊と祈の眠って居るソファーの前に座り込んで話を続ける。
「2人は今度あるトーナメント戦はどうするんだ?」
「一応、能力無しなら出ても良いとは言われています」
「はっきり言って杏路さんは反則カードみたいなもんっすからね」
「そうなのか?1度も会場で見かけなかったから、てっきり出場を止められているのかと……」
「能力を使わなくてもフィジカルの面で普通の人とは違うので、あまり他者と戦う事に意欲を見い出せないんですよね……」
「あぁ、そう言う事もあるのか」
「飛沫さんは最近出てないっすけど、今年は参加するんっすか?」
「いや、俺は既に4勝しているから出場資格が無いんだ」
「そうなんっすか?」
「合計して4勝した時点で、殿堂入りという扱いになるらしい」
「そこは役無しの試合と変わんないんすねー」
「そうだな、武器の使用が認められる様になるのと他家の人間が出場して来る以外にはあまり変わらないな」
「緋野の人間に勝てる他家の人間なんているんですか?」
「普通に居るっすよー」
「お前達に馴染みのある人間で言うなら、杏とか祈がそのタイプだな。俺の所で言うと蒼士がそこそこ強い」
「強いって言っても、良くて真ん中ぐらいだけどね〜」
「まぁ、流石にそこは本職っすから」
「失礼かもしれませんが、杏さんが強いのはあまり想像できませんね……」
「杏さんは目と判断力がずば抜けて良いタイプっすね」
「あぁ、あまり当たりたくない相手だな」
「あれでも一応半分は犬飼の血が流れているので、戦闘系は得意なんです。それ以上に機械いじりが好きなだけで」
「そうだったんですね」
「綾瀬は出場しないのか?」
「私は運動はあまり……」
「チーム戦なら司令塔とかで活躍できそうな気もするが」
「役付きなら見学だけも出来ますから、興味があるなら見に行かれては?」
「横の会場では非戦闘員の心得講座なんてもんもあるっすよー」
「そんな物まであるんですか?てっきりトーナメントの参加者しか入れない物だと思っていました」
「役付きの試合は主が見学に来る事もあるので、結構お祭りみたいな感じになっているんですよ」
「気になるので、来年は覗いてみます」
「そうすると良い」
「じゃあ、試合終わったら案内してあげるよ〜」
「そうですね、休みが取れたらお願いします」
綾瀬が頷いた所で、葉に呼ばれて本邸の方に出向いていた灯が帰って来た。
「お前等、そんな所で固まって何やってんだ?」
そう言いながら荷物片手に近づいて来た灯は、祈りの上で眠っている柊に目を留める。
「なるほどな……で?何の話をしてたんだ」
「緋野のトーナメント戦の話ですよ」
「あぁ、正月にあるやつか」
「灯様は見た事がおありなんですか?」
「毎年見学に来られているぞ」
「正月はやる事無くて暇なんだよ。今年は柊も連れて行くか?」
「本人に聞いてみない事には分かりませんが、能力の制御については問題ないので行きたがるかもしれませんね」
「あ?試験通ったのか?」
「いえ、夏目様と茜様の任命式が終わるまでは試験は受けない事になったので」
「そうか」
「柊が通常教室に通っていないのは、試験に通ってないからなのか?」
「いえ、学年の途中で戻るより中等部入学してからの方が良いんじゃないかと話し合った結果ですね」
「まぁ、桜ノ宮はエスカレーターなんで途中から戻っても問題ないっすけどね……小学生に馴染ませるより中学生の方がマシじゃないかって事になったんっすよ」
「普通に考えて、浮くよなぁ」
「この容姿ですから、別の意味でも浮きそうですけどね」
綾瀬の言葉に、全員が無言で柊を見た。
視線を感じたのか柊が目を覚ましたので、灯も混ざってゲームの続きに戻る事にする。
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