05
柊達が駄菓子屋から帰って来ると、離れへ向かう途中で葉に会って引き止められた。
「もうすぐ着くとヨナスから連絡が入った所だ」
「本邸と離れのどちらで迎えますか?」
「離れでいいだろう」
「では準備して来ますね」
杏路はそう言うと、柊の体を優しく持ち上げてリヒャルトに預ける。
「3人は買って来たお菓子でも食べながらゆっくりしていて下さい」
「分かった、離れのリビングスペースにいれば良いんだろう?」
「はい。お願いしますね」
購入して来た駄菓子の入った袋を稲穂に渡して、杏路は足早に本邸の奥に歩いて行く。
その様子を不思議そうにリヒャルトと稲穂が眺めていた。
「離れの準備をするんじゃないのか?」
「本邸に手配してある食事や部屋の変更作業があるんだろう」
「なるほど」
柊とリヒャルトと稲穂も、葉と一緒に離れへ移動する。
柊達が離れのリビングに移動すると、才と夏目と茜の他に柊の守役の杏、奏、綾瀬、燕、祈、柘榴、珊瑚が勢揃いしていた。
「おー、帰って来たのか」
「うん」
「随分大人数だな」
「能力持ちの守役としては少ない方だぞ」
「これ以上増える可能性があるのか?」
「常に全員が側にべったり居るって訳じゃないから知らないだろうけど、灯様の守役もこのくらいいるぞ」
「そうなのか?知らなかった……」
「灯様は何時も多くても2、3人しか連れて行かないからな」
「少し挨拶して来るから、その間荷物と柊を頼む」
「あいよ。……んじゃ、ソファーの所で一休みしようぜ」
守役の固まっている所に向かって行くリヒャルトと稲穂を見送って、柊は奏と一緒に家族の座っているソファーに向かい、空いている才の隣に座る。奏もその隣に座った。
「駄菓子屋に行って来たんだって?何買ったんだ?」
柊はテーブルの上に袋の中から缶入りのドロップ、笛ラムネ、ベビースター、鈴カステラ、ソース味のスナック、麩菓子、チロルチョコ、小包装のマシュマロなどを広げた。
「甘いものが多いね」
「皆の事考えたら、甘いのばっかりになった」
柊はソファーに座っている才の前に麩菓子、夏目にベビースター、茜に笛ラムネを置いた後、奏に鈴カステラを渡し、守役の名前を呟きながら残りのお菓子を袋に仕舞って行く。
「ちなみにどれが柊のなんだ?」
「ドロップ」
「開けてやろうか?」
「うん」
柊が奏に開けてもらったドロップを受け取った所で、リヒャルトと稲穂が戻って来る。
奏が柊の隣を開けると、リヒャルトは柊を自分の膝の上に乗せてソファーに座る。
稲穂が奏の居た場所に座り、奏は向かいのソファーの茜の隣へ座った。
柊が手に持ったドロップをリヒャルトの掌を広げて出すと、隣の稲穂にも缶を差し出す。
リヒャルトと稲穂がお礼を言って受け取った後は反対隣の才に。
柊は向かい側の三人の掌にも手を伸ばして1粒ずつ出すと、最後に自分の分を出す。
「挨拶は終わったのか?」
「あぁ」
「守役の皆とは、上手くやって行けそうかな?」
「柊の守役は面白そうな奴が多いから、仲良く出来そうだ」
「ふふ、なら問題なさそうだね」
才がそう言うって笑った直後に、リヒャルトと稲穂以外の端末が一斉にメッセージを受信した。それを確認した守役達が柊に軽く挨拶してからリビングから立ち去って行くのを見て、リヒャルトが不思議そうに奏に尋ねる。
「顔合わせなのに、何故全員出て行くんだ?」
「先に着いてるリト達を確認する為にここに居ただけで、俺等の顔合わせは柊の後に設定されてるからな」
そう言って、奏も柊とリヒャルトの荷物をまとめて立ち上がる。
「これは部屋に入れとくぞ?」
「あぁ、頼んだ」
奏が後ろ手に掌をひらひらさせて扉から出て行った少し後に、杏路がやって来て茜側のソファーの後ろへ立つ。稲穂も立ち上がりリヒャルト側のソファーの後ろに立った。
才が奏が座っていた所へ移動したのと同時に、リビングに葉と大柄な男性が入って来た。
葉が一人掛けのソファーに、リヒャルトを少し厳つくしてそのまま大きくした様な男性が柊を膝に座らせたリヒャルトの隣に座る。
杏路がワゴンから飲み物とお菓子を並べ終わると、才がその男性に話しかけた。
「ヨナスに会うのは久しぶりだね、元気にしてた?」
「あぁ」
「そっか、他の人達も変わりないかな?」
「全員無駄に元気だぞ」
そう言ってヨナスはリヒャルトを軽く睨んだ後、膝に座る柊に目を移した。
「コレがお前の息子か」
「そうだよ。そこに居るのは柊、こっちの2人は会った事あるから分かると思うけど、僕の隣に座ってるのが茜でその奥が夏目だよ。」
「あぁ、大きくなったな」
「2人はまだ小さかったから覚えてないかな?」
「いえ、2週間程我が家に滞在されていましたよね?」
「そうそう」
「俺は覚えてないです」
「あの時はまだ赤ちゃんだったからねぇ」
「まぁ10年も前の話だ」
ヨナスはそう言って向かいの夏目と茜から視線を戻し柊を見つめる。眉間に皺がより元々厳つい顔が更に凶悪な人相になっているが、だだ漏れの思考からは『何処もかしこも小さくて愛くるしいな……』と伝わって来たので、柊は気にせずじっと見つめ返した。
「……柊は今いくつだ?」
「7才」
そこで言葉に詰まったまま眉間の皺を深くしてゆくヨナスに、柊は握りしめたままだったドロップの入った缶を差し出す。
「食べる?」
「……頂こう」
「はい」
「これは何の味だ?」
「あ、チョコレート……」
「そうか……薄荷に変えても良いか?」
「ん」
柊がヨナスの掌に薄荷味のドロップを出すと、ヨナスは柊の口にチョコレート味のドロップを入れた。柊は小さくはにかんで、葉にもドロップを差し出す。
そんな柊の様子を見て分かりにくくでれでれになっているヨナスに才が尋ねる。
「本当にうちで良いの?」
「あぁ、構わん。お前が居なくとも末っ子とその守役は居るんだろう?それに、アレは放っとけば好きにやるだろうから無理して構う必要も無い」
リヒャルトは膝の上に座っている柊の頬をむにむにしながら同意を示す。
「あぁ、俺もそれで構わない」
「それで良いならうちは大歓迎だよ」
「そうか、なら何時からなら都合が付く?」
「空いてる部屋はもう整えてあるからね、何時からでも構わないけど……」
「それはこのまま一緒について行っても良いと言う事か?」
「うん?僕はそれでも構わないけど、ディーは寂しがるんじゃないかなぁ」
「母とはここへ来る前に話はつけてある」
「そうなんだ、じゃあ明日柊と一緒に帰って来ると良いよ」
こうしてドイツ組と柊達との顔合わせは無事に終わった。
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