04
*ブクマ&評価&感想、ありがとうございます。
「顔会わせは3時のおやつの後だろ?それまでは何すんだ??」
「読書?」
「ほっとくと本しか読んでねぇだろうが、たまには子供らしく外で遊んでこい」
「んー、何処で?」
「そうだなぁ……リトも居るしな、アレなら良いんじゃないか?駄菓子屋」
「駄菓子屋?」
「皆が、遠足のおやつ買う所?」
「そうそう、それだよ。せっかく今日は天気が良いからな、昼飯の後にでも行ってこい」
「わかった」
「俺も話に聞いた事はあるが、行くのは初めてだ」
「ここの奴なら全員行った事あっから誰か暇な奴引っ張って行きゃあ良い」
「杏路に連れてってもらう」
「おー、そうしろ」
香坂はそう言って笑うと、二人に食べさせたカステラや種類の違うものが沢山乗せられた大皿を脇に止めていたワゴンに乗せてリヒャルトに押し付けた。
「これ、リビングまでよろしくな〜」
「俺は一応客だぞ」
「さっきカステラ食ったろ?」
「はぁ、分かった」
諦めてワゴンの持ち手を握ったリヒャルトを見て腕の中で香坂に向かって柊が手を出す。
「ん?柊もお手伝いしてくれんのか?」
「する」
「じゃあ、柊はこれ運ぶ係な」
そう言って香坂が柊に渡したのは、チョコレートの箱が中に入った手提げ袋だ。柊は渡された袋をしっかりと抱きしめて香坂に手を振りながらリヒャルトと厨房を後にする。
*
お昼を食べ終わった柊は、杏路の案内でリヒャルトと稲穂と一緒に駄菓子屋に行く。
「他の十家と違って、ここはのどかだな」
「仰々しい護衛やタイムスケジュールもありませんしね?」
「その通り」
「だからってこの対応が普通だとは思わないで下さいよ……」
「分かってる。緋野でなければ1人で2人も3人もまとめて護衛など出来ないだろうからな」
「それなら良いんです」
黒いうさぎのパーカーの耳を揺らしながら柊は杏路と手を繋いで歩く。
「可愛いらしい上着だな」
「守役の1人が柊の為にデザインしたものですからね」
「朽木の分家は本当に多才な方が多いですよね」
「何かしら主家の助けになる様な得意分野がある事が分家を名乗る為の最低条件ですから」
「気になっていたんだが、分家の設定するラインに達しない者はどうなるんだ?」
「本人の希望に合わせて巫斯梛、茅原、雪村の何処かに振り分けられます」
「そうなのか」
「その、不満とかは出ないのですか?」
「分家は実力主義なので、無理して残った所で堪えられなくなるだけですから」
「想像以上に厳しいんだな……」
「とは言っても、その事に文句を言うような者はそもそも分家にはいませんから」
「そういうもんか」
「そういうものです」
杏路は笑って、目の前に建つ古い商店を掌で指し示す。
「こちらがご所望の駄菓子屋です」
杏路は木製の引き戸を開き、3人を中へ促す。
こじんまりとした店内には沢山の駄菓子やおもちゃが並べられている。
入り口の脇には3畳程の畳スペースがあり、その横にアイスケースが置かれている。
「凄いな」
「日本の漫画で見たのとほとんど同じですね」
「喜んで頂けたのなら良かったです」
「見ろ、スーパーボールが大量にぶら下がっているぞ」
「中学生にもなって子供のおもちゃに柊よりはしゃぐのは止めて下さいよ……」
「お、こっちには大量のおつまみなんかもある」
「聞いてませんね?」
リヒャルトは柊の手を取ると、一緒に店内を回って行く。
稲穂はその後ろを少しばかり呆れた様な顔をしながら着いて行っている。
杏路がそんな3人の様子を見ながら畳スペースへ腰掛けると、扉に付いた鈴の音を聞いて店の奥からプリン頭の青年がのれんの分け目から顔を出す。店主の孫の小唄だ。
「あれ、杏路だ。珍しいね」
「今日は柊とお客様の付き添いです」
狭い店内で楽しそうに駄菓子を選んでいる3人を見て、小唄は杏路の横に腰掛ける。
「おばあさまはお元気ですか?」
「うん、今日は老人会で出掛けてるけどね」
「だから代わりに店番ですか?」
「そうそう、扉閉めてんのに入って来るのなんて知り合いしか居ないからね」
「高校はどうですか?」
「新しい友達も出来たし、楽しいよー」
杏路と小唄がのんびり雑談をしていると、カゴに大量に駄菓子を詰め込もうとするリヒャルトとそれを阻止しようとする稲穂を置いて柊が戻って来る。
「やっと実物見れたやー、初めまして小唄だよー」
小唄はそう言うと、いきなり立ち上がって柊の体を持ち上げ、その場でくるくる回った。
ビックリして固まっている柊をすぐに杏路が取り返してくれたので、柊はそのまま杏路の首筋に確りとしがみついた。
「あれ、これやるとちびっ子はみんな喜ぶんだけどなー」
「初対面でこの対応はまずされないので、ビックリしたみたいですね」
「そうなの?ごめんね、仲良くなりたかっただけなんだよー」
後ろからオロオロする気配が伝わって来たので、柊は杏路に合図して下ろしてもらう。
「ん、大丈夫」
「あ、めっちゃ警戒されてる!」
「元々人見知りなだけですから、心配しなくても良いですよ」
「そうなの?」
小唄がほっとした様に息を吐いて元の場所に腰掛けたので、杏路もその横に柊を膝に乗せて腰掛けた。
「柊の事、誰に聞いたんですか?」
「杏さんは今でも結構遊びに来るから」
「あぁ……」
「後はこの間ひょっこり顔出した灯様だねー」
「良く来るんですか?」
「たまにこの上でばーちゃんとお茶してる」
「そうなんですか」
そこにリヒャルトと稲穂が戻って来た。
「話は聞こえていた。俺はリヒャルトだ、リトと呼んでくれ」
「私は稲穂と申します」
「おれはこの店のばーちゃんの孫で、小唄だよー」
「悪いが会計を頼む」
「はいはい、そんじゃあこっちに置いてくれる?」
リヒャルトのカゴ一杯の駄菓子を畳みに広げながら小唄が電卓で計算し始める。
「大量だねー」
「あまり来る機会も無いだろうから、気になる物は全て入れた」
「ふふ、お買い上げありがとうございまーす」
「柊は買わなくて良いのですか?」
「柊の分はこっちだ」
そう言ってリヒャルトは手に持ったままだった子供用のカゴを差し出す。
「お会計分けようか?」
リヒャルトが返事をする前に、柊はパーカーのポケットから五百円玉を取り出した。
「お小遣い貰ったんですか?」
「ん、奏から」
柊から五百円玉を受け取った小唄が駄菓子とお釣りをまとめて袋に入れて渡してくれる。
「ありがと」
「どういたしましてー」
その後は杏路のおごりで5人で並んで座りながらアイスを食べながら暫くのんびりした。
「気が付いたら、こんな時間ですか」
「そろそろ戻りますか?」
「そうだな」
「何かあるの?」
「この後、柊との顔合わせにお客様が来られる予定なんですよ」
「そうなんだー、残念だけど、また来てねー」
「あぁ、また来る」
「お邪魔しました」
店の前で手を振って見送ってくれる小唄に手を振り返しながら、柊達は来た道を戻る。
帰りがけに和菓子屋に立ち寄ってお客様用のお菓子を受け取って本邸に帰った。
*ムーンライトノベルズの方で、
新連載の「君の瞳が瞬く明日。」が本日より公開されています。
https://novel18.syosetu.com/n6343fc/




