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ティータイムも終わり、弥生と柘榴と杏路は荷物の整理の為2階へ上がって行った。
杏と燕と柊はそのままリビングに残ってボードゲームを始める。
始めはリバーシで遊んでいたが、何回かやっても全く結果が変わらないので負け続けて飽きた燕の提案により、他のボードゲームに切り替える事にした。
リビングの棚に仕舞われているボードゲームを色々と引っ張り出してどれにするか相談する。チェスや将棋等は同じ結果になる未来しか見えないので運要素の多い物にした。
燕が飲み物やお菓子を取りに行っている間に、杏と柊は人生ゲームの準備をする。
準備をしている所に荷物を片した3人が戻って来たので、燕が連れて来た。
「どうせなら人数は多い方が良いと思って、連れて来たっすよー」
「そうか、特に用事がないなら一緒にどうだ?」
「特にせんといけん事は無いけ、良かよ」
「人生ゲームですか、懐かしいですね」
「これ、灯様が強いんだよな」
じゃんけんで順番と車の色を決めて、燕(橙)→柘榴(青)→杏路(赤)→弥生(緑)→柊(白)→杏(黄色)の順でルーレットを回す事になった。杏路を銀行家に決めたらゲームを始める。
「何かこれなら勝てる気がして来たっすよ」
「ただじゃんけんに勝っただけだろ」
「弥生さんもリバーシでこの2人にこてんぱんにやられたら分かるっすよ……」
「俺等が降りて来るまでに何があったんだよ」
「ひぃ様とやると序盤でどんなに勝ってても想像もしてない様な所からひっくり返されるっす。杏さんとやると最初から最後までどうやってもひっくり返せないっす」
「どっちも心が折れるやつだな」
「杏とちぃさんだとどっちが強いん?」
「能力を使わないまま、ひぃ様の全戦全勝っすね」
「強いんやね〜」
序盤は皆順調に進んでいたが、燕が無職になったり、弥生の持つ株券が大当たりしたり、柘榴が車に乗りきれないぐらい子供が生まれたり、杏が全部の休みマスに止まる珍事を引き起こしたりしてかなり盛り上がった。
「無職辛いんで、ギャンブルコースへ突き進むっすよ……」
「また子供が生まれよんのだけど、乗り切らんのどうしたらええん?」
「無理に乗せなくても手元に置いておけば良いんじゃないか」
「次は杏路さんっすよ」
「おや、職業のグレードアップが出来る様ですね」
「お、分岐か……金あるし、俺もギャンブルコースに進むかな」
「柊のマスは家が購入できるみたいですよ」
「ここにする」
「一軒家よりタワーマンションが良くないっすか?」
「それより、杏さんがまた1回休みになってんだけど」
「ある意味凄い才能っすね」
最終的な結果は、柊が4着で427000、杏路が1着で374000、燕が3着339000、柘榴が2着で261000、杏が最後で115000、弥生が4着で借金28000となった。
「最下位から3位まで上がったんで、満足っす」
「人生ゲームは初めてやりよんけど、ゴールした順に勝つん無かゲームなんね〜」
「そうっすよー、最終的にどれだけ資金があるかで勝ち負けが決まるんす」
「あ"ー、ギャンブルコースが間違いだったな」
「途中までは良い所行ってたっすけど、最後で借金地獄に入ったっすよね」
「燕は良く逆転したな」
「俺、ギャンブル運は良いんで」
「順調なのは杏路と柊だけだったな」
「もう1回やるか?」
「今度は別のにしません?」
「アトリエだけ確認しときたいで、僕は抜けてもええ?」
「場所は分かりますか?」
「ここ来んの初めてやないけん大丈夫やよ」
「館内図にアトリエなんて書いてあったか?」
「いえ、アトリエは隠し部屋にあるので館内図には載ってないんですよ」
「2階の廊下にある本棚の裏に隠し扉があって、そこから行ける様になってんだ」
「そうなのか……俺も一緒に行っても良いか?」
「かまわんで」
「あ!でもさっきルイスさん買い物行くって言ってたっすから、今行っても居ないんじゃないっすか?」
「今ルイス以外にアトリエの鍵を持っているの誰か居たか?」
「灯様も飛沫も本家だしな」
「柊が持ってますよ」
「ん、一緒行く」
「遊んでる邪魔するん悪いけん、後でもええよ〜」
「大丈夫、僕の絵も乾いてるか見たいから」
「では行くか」
柊は立ち上がった杏と手を繋いで、柘榴と3人で2階へ行く。
部屋へ行く途中の廊下にある本棚の前へ着くと、柘榴が本棚の横に手をかけて前に引く。
本棚の裏に現れた真っ白い扉のドアノブに柊が首にかけていたアンティークの鍵を翳し、柘榴が扉の横にあるコントロールパネルへ暗証番号を打ち込む。
扉の向こうは階段が続いていて、そこを上がると屋上に出る。
屋上には庭園が広がり、所々にクラシカルなベンチやアート作品が飾られている。
その真ん中に、下から見上げても気付かない様に計算して建てられたアトリエがあった。
煉瓦とカラータイルの敷かれた小道を抜けて、真っ白な壁と同化する様に存在するドアからアトリエの中に入る。中は両脇の壁にドアが1つだけあって、部屋の真ん中には円形のステージ、その脇に椅子が綺麗に4脚並べられていて、それ以外は何も置かれていない。入り口の向かい側の壁は一面ガラス張りになっていて、そこから外に出る事もできる。
「ここがアトリエか」
「初めて来っと驚くやろ?」
「あぁ、横の部屋には何があるんだ?」
「右が現像室と道具がしまってある部屋になっとって、左が作品の保管庫やよ」
「見て来ても良いか?」
「僕は道具の確認しよるけん、好きにしっとてええよ」
そう言って柘榴が右の部屋に入って行ったので、柊と杏は左の作品ルームへ行く。
部屋に入り上を見上げると、壊れかけの檻の外に満点の夜空が広がり、壁には檻の奥に豪奢な部屋が広がっている。部屋は途中から崩れていて、瓦礫の山の向こうには壊れた廃墟が広がり、床の上には絨毯が描かれている。
部屋の所々にテーブルが置かれていて、その上や足下に色々な人形や彫刻、ガラスや金属細工などが飾られている。ドアの向かい側の壁一面は左右に開く事が出来る収納になっていて、大きさや高さの違う棚の中にはぎっしりキャンパスが詰め込まれてる。
「凄いな、この絨毯も絵なのか……床にある物は良く見ないと本物かどうか区別が着かないな」
「来た人が少しずつ書き足していった結果って言ってたよ」
柊は部屋の隅に立てかけられてるキャンバスを確認する。
きちんと絵が乾いているのを確認して棚に仕舞おうとすると、壁に描かれた景色や置いてある物を興味深そうに眺めていた杏が近づいて来る。
「それが確認したいと言っていた絵か?良かったら見せてくれ」
柊が杏に渡した絵には、夜の湖と月灯りに浮かび上がる小舟に座る黒猫が描かれている。
「上手いな……」
「ありがと」
「家には持ち帰らないのか?」
「これは頼まれたものだから」
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