06
「そこで大人げなく走り回っている皆さん、ご飯ですよ」
「昼間散々泳いだのに元気っすねー」
「一番若い奴が何言ってんだ」
「残念ながら、一番若いのはひぃ様っすよー」
「守役でって意味だよ」
「ってか燕は緋野だろう」
「体力の無さは問題だな」
「もし必要なら、休み中は俺が鍛えてやろう」
「え?そこに繋がるんっすか……飛沫さんの訓練とか地獄しか見えないっすよー」
「良かったなー、燕」
「緋野の鬼から直接指導なんて、滅多に無い機会だぞ」
「色々教えてもらえよ」
「俺の味方が誰もいないんっすけどー」
「ドンマイ」
「全然嬉しくないっすよー。ひぃ様、助けてっす」
「緋野の鬼って、何?」
「あ、そこにひっかかってるんっすね……」
「飛沫さんは、年に一度ある緋野家の主別トーナメント戦で4年連続総合優勝の凄いお方なんですよ」
「で、最小の動きで完璧に対象を沈める戦い方から付いた名が緋野の鬼」
「拳銃持った人間相手に丸腰でかったとか」
「10秒で7人沈めたとか」
「灯様に危害を加えようとした組織をたった1人で壊滅させたとか」
「ヤクザも裸足で逃げ出すってもっぱらの噂っすからね」
「流石に言い過ぎだろう……」
「あながち間違いでもねぇだろ」
「え、もしかして全部本当なんっすか!?」
「いや、それは……」
飛沫は柊をちらっと見た後に、気まずそうに視線を泳がせる。
どうやらせっかく懐いた柊に怖がられるのでは無いかと心配しているらしい。
「問題ないよな?柊だって男だぜ、強い奴の方がかっこいいよな〜」
「?うん」
「そうか、ありがとう……」
飛沫はそう言って笑って、柊の頭を撫でる。
「さあ、ご飯にしましょう」
「そうだな」
「美味そー」
「お肉ばかり食べずに、野菜もバランス良く食べて下さいね」
「「「いただきます」」」
「美味っ!」
「これが葉様の差し入れお肉っすかー」
「ええ、とても良いお肉ですよ」
「そう言えば、蒼士さんはどうしたんだ?」
「あ、蒼士さんって言うのはもう1人合流予定の灯様の守役ですよ」
「夕飯は一緒にって話じゃ無かった?」
「あぁ、あいつな」
「御昼過ぎには着く予定だったんですけど、飛行機が遅れているみたいですよ」
「飛行機って、どっか行ってたんっすか?」
「フランスまでお使いだよ」
「フランス?」
「あそこはシステム開発用の合同研究所があるからな」
「何だっけ?新しい追跡装置がどうとか聞いた気がすんな」
「へぇー」
「って事は来るの明日っすか?」
「いえ、今日中には着く様ですよ」
「あ、そうなんっすか」
「心配しなくても、蒼士さんの分はあらかじめ避けてあるので、遠慮せずおかわりしてもらって大丈夫ですよ」
「全くそんな事気にしてねぇやつもいるがな」
そう言って灯が指差す場所には、柊を膝に乗せたまま皿の上に乗ったチーズグラタンを食べ尽くす勢いの祈がいる。
「あー!!!!祈さん一人で全部食べる気っすか!」
「だって皆食べないみたいだし〜」
「いや、それにしたって食べ過ぎだろう」
「自由人に何言っても無駄なんだから、さっさと取り上げろ」
「そうですね」
頷いた綾瀬がさっさと祈の側からグラタンの大皿を遠ざける。
「あ〜、綾ちゃん酷い〜」
「貴方はもう少し協調性を身につけるべきですね」
「だって俺野菜もお肉もあんまり好きじゃないし〜」
「大体貴方は普段から……」
溜め込んでたイライラが爆発したのか、静かに切れた綾瀬がそのまま祈に説教を始めたので、柊は灯と飛沫の間に移動する。
「綾瀬さんって切れると理詰めで来るタイプなんですね」
「あのタイプって地味に心抉られるんだよな」
「わかる」
「そしてそれを全然気にせずソーセージ食ってんぞ祈」
「本当自由人だな、祈」
「ってかあいつ、偏食で引きこもりの割には良く育ってるよな」
「遺伝子が優秀なんだろ」
「親父さんも大柄だしお袋さんは元モデルで両親ともに高身長だしな」
「の割には筋肉ありますよね」
「製作中は別人の様に俊敏に動き回ってるっすからねー」
「オンオフ激しすぎだろ」
「オフと言えば、飛沫さんって休みの時何してるんすか?」
「トレーニングしてる所しか思い付かん」
「確かに、常に道場に居るイメージしか無いな……」
「それ以外に何かしてる事無いんですか?」
「そうだな、行き着けのカフェで読書とかだな」
「行き着けのカフェ……」
「マジっすか……」
「あっ、杏路は休みの日何してんだ」
「私ですか?そうですね、柊とのんびり映画を見たり買い物に行ったりとかですかね」
「休みの日まで柊一色だな」
「睦月さんと弥生さんは何してるんっすか?」
「俺は医療研修の見学とか論文のチェックですかね」
「俺は情報収集とか息抜きにジムに行ったりとかですかね」
「人の事言えないぐらいには仕事人間っすね」
「そういう燕は何してるんだよ」
「ゲームセンター巡りっすかねー」
「「あー」」
「何っすか、その納得みたいなの」
「いや、イメージ通りだなーと思ってよ」
「だったら、奏さんは何してんすか」
「俺はドライブかLune noireでコーヒー飲みながら読書だな」
「以外とまともっすね」
「お前は俺にどういうイメージ持ってんだよ」
そこに綾瀬の説教から抜け出した祈が乱入して来た。
「何の話?」
「休みの時何してるかって話だよ」
「ふ〜ん」
「祈さんは何してるっすか?」
「何か作るか、寝る?」
「お前は少しくらいそれ以外の事もしろよ」
「気が向いたらね〜」
「それ絶対やらない人のセリフっすよね」
「それより柊、寝てない?」
祈の言葉に、全員が柊のいる場所に注目すると、柊はお皿と箸を抱えたまま灯に寄りかかってうとうとしていた。隣に居る飛沫がお皿と箸をテーブルに移動させる。
「ありゃりゃ、半分以上寝てるっすねー」
「はしゃぎ疲れたんだろ」
杏路の持って来たブランケットに包んで、灯がそっと膝の上に柊を抱き上げる。
「はぁー、子供って何か癒されるよな」
「何かその言い方オッサン臭いんだけど、弥生」
「ってか自分の子供見ていうセリフだろ」
「自分の子供なー」
「まずは恋人を作る所から始めないとな」
「この中でパートナー持ちって誰か居んの?」
「ルイスさんと綾瀬が結婚してる事しか把握してない」
「奏さんはひぃ様の担任とデキてるっすよー」
「情報収集目的とかじゃなくて?」
「普通に腐れ縁なだけだ」
「こんだけ居てパートナー持ち3人だけかよ、枯れてんなぁ」
「そう言うお前も人の事言えねえだろ」
「残念、恋人は居ないけど片思い相手ならいっから」
「そう言えば双子とかって同じ人好きになるって何かで見た気するんっすけど、本当なんすか?」
「いや、俺等はそんな事無いけどな」
「へぇ、ちなみにどんな人がタイプなんっすか?」
「弥生は小動物っぽい子が好みだよね」
「睦月はアレだろ、無口で暇さえあれば本とか読んでる子」
「本当に被ってないんすねー」
「そう言うお前等はどうなの?」
「俺は後腐れなければあんまこだわんないっすねー」
「会うの年に1回ぐらいでも文句言わない子?」
「……祈も燕も結婚は無理そうだな」
「杏路は好みのタイプは?」
「特には。ただ前提として柊を優先させる事に理解がある事でしょうか?」
そう言って灯の膝で本格的に寝入ってしまった柊を起こさない様に抱き上げる。
「では、お先に失礼します」
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