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02


「おはようございます」

「はい、おはようございます」


保健室に入った柊は中で備品の確認をしていた養護教諭と思われる男性と挨拶をして、奥にあるカウンセリングルームに繋がる扉へ向かう。


扉を開けてすぐの所にソファーセットがあり、右側に簡易キッチン、左手側には個室が2つ並んでいる。個室の反対側にはカウンセラーの個人用のデスクが並んでいて、奏はそこに座ってPCを操作していた。こちらに気付いて席を立った奏に才が話し掛ける。


「おはよう。少し早いけど、ひーちゃんを休ませてもらっても良いかな」

「大丈夫ですよ、一通り資料の確認をしてただけなんで」

「ありがとう」

「おはよう、ひぃ様。体調はどうかな?」

「おはよう。今は大丈夫」

「なら良かった」


杏路が簡易キッチンに向かい人数分の飲み物を用意している間に、柊達は個室に案内された。個室の中には広めのテーブルと椅子が2脚にミニ冷蔵庫が置いてあり、奥にはベットが設置されている。テーブルとベッドの間はカーテンで仕切る事が出来るようになってた。個室の扉には中から鍵をかける事が出来る為、機密性の高い作りになっている。


「ひぃ様と才様はそちらの椅子にどうぞ」

「あぁ、僕は良いよ。この後すぐに、夏目の入学式に行かなきゃいけないからね」


才の返事を聞いた奏は、柊の後ろに立っている燕の方を向いた。


「燕、座るか?」

「俺は追加の椅子持って来るんで、奏さんが座ってくれて構わないっすよ」

「今日は他に利用者もいないし、隣の椅子持って来て良いぞ」

「了解っす」


燕と入れ替わるようにして、杏路がティーセットの乗ったワゴンを押して入って来た。


「お待たせしました。柊はココアで良かったですか?」

「ん、ありがと」

「才様にはコーヒーを、他の方の分は紅茶にしましたが、大丈夫ですか?」

「問題ないよ、ありがとう」

「大丈夫だ。悪いな」


燕が隣の部屋から椅子を運んで来たので、テーブルの両脇に配置し、全員が席に着く。

才は柊を膝に乗せて椅子に座った。


柊達が暖かい飲み物に口を付けている間に、杏路が飲みものと一緒に用意されていた箱を2つ、テーブルの中央へ置いた。


「今日のおやつは命様が届けてくださったものですよ」

「そうなんだ?後でお礼言っておくね」

「よろしくお願いします」


杏路が才に軽く頭を下げてから一つ目の箱を開けると、中には可愛らしい動物の顔が描かれたマカロンとが入っていたプリンが入っていた。一緒に入っていたカードによると、黒ごま(ねこ)、チョコレート(くま)、ヘーゼルナッツ(いぬ)、シトロン(ひよこ)、ピスタチオ(かえる)、バニラ(ぱんだ)、さくら(ぶた)の7種類の味があり、1種類につき4つずつ入っているようだ。プリンはミルク味と桜味の2種類が3つずつ入れられている。奏がもう一つの箱を開けると、中にはミニタルトが入っていた。味はミックスフルーツ、ミックスベリー、マンゴー、オレンジ、ティラミスの5種類が2つずつ入れられている。


流石に全部は量が多いのでタルトとプリンは冷蔵庫へ入れておく事にした。


「相変わらず凄い完成度っすねー」

「どれも可愛らしくて迷うな……ひーちゃんは、どれにする?」

「ねこといぬとかえる」

「全種類制覇したいっすけど、半分くらいは残しといた方が良いっすよねー」

「タルトとプリンもあるし、問題ないんじゃないか?」

「メニューカードにはこちらの箱は待機組でどうぞとあるので、構わないと思いますよ」


マカロンとはいえそんなに沢山は食べられないので、柊は選んだものを才と半分こにして、他の味は守役の3人に一口づつ味見させてもらって、全種類味わう事が出来た。


のんびりしながら暖かい飲み物とおいしいお菓子に舌鼓を打っている所に、車を置きに行っていた雀が到着したので、席を立った才は抱き上げていた柊を椅子に下ろす。


「雀も来た事だし僕は中等部の方へ行くけど、後はよろしくね」

「はい、御任せ下さい」

「ひーちゃん、後でね」

「うん、いってらっしゃい」

「行ってきます」


最後に柊の頭にキスをしてから、才は雀と一緒に個室を出て行く。

才と雀を見送って少ししてから、柊の右隣に座った燕が杏路と柊を見てから口を開いた。


「杏路さん、何か任命式の時よりもひぃ様と親密になってません?」

「そうですか?」

「だって、いつの間にか呼び捨てになってるし……」


柊の左隣に座っている杏路が目を合わせて来たので、柊はそのまま小さく首を傾げる。


「ほら、何かめっちゃ仲良くなってる気がするんですけど!」

「昨日遅く帰って来たのと、関係ありそうだな」

「えー、昨日何があったんすか?」


杏路はにっこり微笑んで特に答える気が無い様なので、燕と奏は柊に視線を移した。


「ドライブに行って、色々と話しただけだよ?」


恥ずかしいので大泣きした事なんかは省いて、かなりざっくりとした説明をする。


「その()()の部分の話が聞きたいんっすよー」

「能力の事とか、分家の性質の事とか?」

「そうですね……後はいかに私にとって柊が大切な存在であるかをお話しさせて頂きました」


柊が嘘ではないけど本当でもない事を言って誤摩化したら、援護射撃に打ち抜かれた。


「そんなん……俺だって、ひぃ様が世界で一番大事ですよ!!!」

「そうだな。俺もひぃ様が唯一の主だと確信したからこそ、受理されないと分かってて正式な移動願い出したんだしな」


そう言った奏と燕からは、昨日の杏路と同じくらい強い感情が2人から伝わって来る。

横に座る杏路からは「何も心配要らなかったでしょう?」と微笑ましげな優しい気配が伝わって来て、柊は昨日までの自分がどれほど分家の人間の性質を甘く見て見当違いの心配をしていたのかをこれでもかと思い知らされた。今の柊は、何時この幸せが終わるのかと怯えていた過去の自分をぶん殴りたい気分でいっぱいだった。


「ありがと。僕も皆の事、大事にするからね」


柊の言葉に荒ぶった燕が柊の向かいに座っている奏の腕を掴んでガクガクと揺らす。


「わかるが落ち着け。後、地味に酔うから止めろ」

「おっとすいません、つい気持ちが高ぶって……」


奏と燕がわちゃわちゃしているのを眺めながら柊が杏路の入れてくれた紅茶を飲んでいると、机の横の壁に設置してあるモニターの上にある時計を見て奏が口を開いた。


「そういえば、入学式どうする?」

「どうするってどう言う意味っすか?」

「いや、そこにあるモニターで入学式の様子が見れるようになってんだよ」

「へー、便利っすねぇ」

「燕は興味無さそうだが、どうする?一応流しておくか?」

「うん」


テーブルの下から取り出したリモコンで奏がモニターの電源を入れる。


「入学式なんて退屈なだけっすから、出なくて良くてラッキーじゃないっすか?」

「それは燕だけだろ」

「えー、校長の長い話聞くのも、一人一人名前呼ばれるの待つのも、めちゃくちゃ面倒くさくなかったっすか?」

「入学式なんて大抵そんなもんだろ」

「って事は、奏さんも面倒くさいと思ってたんっすね」

「まぁ、否定はしないが」

「後あれっすよ、同級生の名前覚えて、付き合う人間はどうするのかーとか」

「まぁ、桜ノ宮は各家ごとにグループが出来上がってますからね」

「中立派もそれはそれで面倒だしな……」

「久遠の分家は影響力強いんで、無駄に気ぃ使った覚えがあったっすねー」

「それはあるな」

「能力持ちはまだいいっすけど、俺らの学年には転生者がいたから余計面倒だったっすよ」

「転生者?」

「能力者の家系には時々、前世の記憶を持っている子供が生まれる事があるんですよ」


柊は知らなかったが、この世界では“転生者”は当たり前の存在らしい。


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