夏休み
目を開ける……9時。
しばらくしてもう一度目を開ける……11時。
もうしばらくしてまた目を開ける…………13時、そこで起き上がる。
夏休みの学生にとってはなんら不思議ではない遅寝遅起きの習慣だ。
……もっとも、それも今日までだが。
夏休み最後の日。私は毎日の繰り返しのようにおおきな欠伸と共にリビングへと行き、作り置きされている朝食兼昼食を食べる。
今日は別段外に出る用事もなく、学校の課題が残っているもののやる気は出ない。
食事を終えたらそのままスマホを取り出し、SNSや動画サイトをだらだらと眺める。
そのまま時を過ごし、次に時計を見たら午後の4時手前。喉が渇いたとお湯を沸かし、何時ものようにこんな時期にも関わらず熱いお茶を煎れる。
「学生最後の夏休み……これで良かったのかなぁ」
内定が決まり、学生の身分として……いや、人生においては最後になるであろう1ヶ月を超える休暇。だというのに夏休みにした夏らしいことと言えば、近所の祭りを友達と回ったことだけである。それ以外は友達の家に泊まりに行ったり、遅くまでゲームしたりゴロゴロしていたりと普段と全く変わらなかった。
「せっかくだから特別なことをしよう!」とか「夏休みを満喫しよう!」だとかは全く考えていなかったけれど、いざ終わってみればこうして後悔にも似た感情がやってくる。
だがそれでも「あの時ああしていれば」という言葉は絶対に言わない。それは自分を否定することになるからだ。
「なんだかなぁ」
時間はあった、お金はあまりないけどそれでも夏休みらしいことはできたはずだった。でもこれが結果だった。
何時ものようにゴロゴロし、怠惰な毎日を送った。絵日記にしたらさぞ似通った文章になることだろう。そう思うと軽く笑えてすらくる。
しかしそんな毎日が嫌いではなかった。
学校に縛られず、さりとて将来の不安もなく毎日を過ごせたこの日々が。
きっと未来に後悔するだろう「あれだけ時間があれば色んな事ができたのに」と嘆くかもしれない。
だけど仮にまた同じような夏休みがあったとしても、私は同じ事をするだろう。これまでそうしてきたように。
その終わりの度に嘆くだろう「これで良かったのか?」と。
これでいいのだ。疑念はあれど不満などないのだから。
19歳の飲むお茶は、とても熱かった。