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ミトスター・ユベリーン 立ち昇る太陽  作者: カズナダ
新たな国
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第3海洋界の新盟主

 日ペル戦争後、建国当時のペル帝国領を全土併合し、植民地だった国々は日本の傀儡国となったが、日本の『内地拡張主義』に基づく統治はペル帝国の『搾取構造』とはまるで違い、道路・鉄道などのインフラ、学校・病院などの公共施設を次々に建て、第3海洋界は一気に近代化。


 各地の特産品の生産、加工行う工場では現地の住民を正当賃金で雇用。自然と日本に対する憎悪は生まれない環境が構築されつつあった。


 モブタザル大陸 リーチャ国 首都ラーマ・・・。

 ペル帝国に支配されていたが、地方政権は海軍陸戦隊の活躍もあり、打倒に成功。再占領を図るアグール・クローズの連合軍と、それらに駐在したぺル帝国軍との反攻も跳ね返し、逆に『アグール王国』と『クローズ共和国』に進行。両国もまた陸戦隊の活躍で短期間で制圧され、講和条約によってリーチャは両国を吸収。リーチャは大陸統一の目標を達成し、日本は忠実な傀儡国を手に入れた。


 解放軍のリーダーであったデモナは首相になったが、政治経験皆無の彼に国家が運営できるはずもなく日本から政治顧問団に頼りきっていた。


「税率を上げれば、国が豊かになるんじゃないのか?」


「上げすぎるものよくありません。反乱の原因になりかねなせん。」


「じゃあ下げれば良いのか?」


「税を下げる事は、その分を何かで補わなければなりません。天然ゴム以外目立った資源の無いこの大陸でそんなことしたら、たちまち崩壊しますよ。」


 デモナのさじ加減は『0か10』と言う極端なもので、政治顧問団は手を焼いていた。


 大日本帝国 帝都 東京・・・。

 ペル=トリートリア帝国に代わり、新たに第3海洋界を治めることになった大日本帝国であったが、陸軍の大部分が中国大陸に渡っていた事で陸軍と海軍のパワーバランスが崩れかかっていた。海軍に力をつけさせないように今まで均等に割り振られていた予算は、陸軍は現状の15個師団から50個師団に回復するまで優先されたが、海軍はそれに対し航空機の配備は海軍を優先にすることを条件とし、陸軍はこれを承認した。


 海軍省・・・。

「外地に配備の航空隊分は何とかなるでしょうが、『マル3計画』は暫し中断ですな。」


「些か不満は残るが仕方が無い事だ。余った時間は有意義に使う。」


「はっ!既に部内から、赤城及び加賀を戦艦に戻し、『天城』と『土佐』を再建造し『八八艦隊計画』を再び実行に移すべきとの声が上がっております。


 また、赤城と加賀の分は『翔鶴型』の廉価版と2隻新規建造します。」


 八八艦隊計画は年間国家予算のおよそ半分の維持費が掛かっていたが、ワシントン軍縮会議で破棄された。しかし、この世界で28ヶ国の傀儡国を手に入れたことで第1次世界大戦以来の経済成長を遂げる可能性があるので、実現できるかもしれないと言う空気が海軍部内で漂っていた。


「血迷って『マル4計画』まで進めるでないぞ?いくら国力が養えるからといって、そんなことすれば国が転覆する。」


「ご安心を。八八、マル4両計画を一つに統合した『八八八艦隊計画』として進めます。あくまで八八艦隊に正規空母8隻のみを組み込む形にします。」


「戦艦8隻。巡洋戦艦8隻、航空母艦8隻・・・か。」


 計画が完成すれば、戦艦30隻・正規及び軽空母20隻、重軽巡や駆逐艦、その他補助艦艇を合わせると合計600隻を超える大艦隊となる。


 第3海洋界の制海権を確保するには充分であった。


 陸軍省・・・。

 転移前は50個師団有ったが、その殆どが中国戦線に動員されていた事でペル帝国戦では本土の守りに就いていた15個師団全てを投入した。師団回復までの間予算が優先的に振り分けられている。これを良いことに、兵募を徴兵から志願に変え回復を意図的に遅らせ、その間に新兵器開発に注力することになった。


「火球魔法は九七式中戦車の25mm装甲を貫通するのか・・・。」


「ペル人が言うには火球は赤魔道士の基本魔法で、より強力なものもあるとか。」


「戦車の性能を底上げせねばならんな。」


 日本が新型戦車を開発する上で参考にしたのは、ドイツの開発資料や中国戦線で鹵獲した『Ⅰ号戦車』であった。


 求められた性能は・・・。

1、正面装甲圧:45mm

2、主砲:45口径47mm砲

3、速度:35km/h

 であり、これを実現しようとすれば重量は20tにも達し、ドイツの『Ⅲ号戦車』に届きかねない。


 これに合わせて新型の軽戦車の開発も進められることになり性能は・・・。

1、正面装甲圧:15mm

2、主砲:36口径37mm砲

3、速度:40km/h

 『Ⅱ号戦車』の車体に、九五式軽戦車の主砲を載せる感じだ。


 それ以降、陸軍が新兵器を開発する際、ドイツ軍の兵器を参考にする風潮が出来る。


 陸軍と海軍がお互いに補充と拡大を進める一方で、海軍の提案で両軍の航空隊を一つにまとめた『統合空軍』の設置案が提出された。


「空軍の設置に異論は無い。だが、艦載機はどうなる?」


「戦艦、巡洋艦、航空母艦に載せられる艦載機と水上機は海軍の管轄だ。」


「陸に揚がれば空軍の管轄だな?」


「艦載機以外は空軍です。」


 陸軍のパイロットは空母への着艦も水上への着水も出来ない。当然のことだが、これでは海軍の思う壺になる為指揮官には陸軍を抜擢する事を条件とした。


 海軍はわずかに渋ったが了承し、『統合空軍』の設置は青琶17年1月5日となった。

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