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ミトスター・ユベリーン 立ち昇る太陽  作者: カズナダ
新たな国
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第2次ビルアラモス総攻撃

 ビルアラモス包囲軍 司令部・・・。

「大本営から電文が届いた。」


 そこには、結界が展開されているかの都市を敵国の首都と認定し3月10日、つまり陸軍記念日までに陥落させろということだ。現在は10月末であるが、越冬を想定した日時設定であった。

 だが、包囲軍の実態は大本営の思っていた以上に深刻なものであった。


「まず第1に、先の砲撃で設置した火砲の約2割が故障している。」


 包囲網を形成している砲台群の主な大砲は殆ど泰勝たいしょう以前のものばかりで、廃棄直前のものを引っ張り出してそのまま配備している為整備が行き届いていなかった。


「第2に、今の物資では越冬が精一杯であること。」


 約5万人の将兵が越冬した後故障した砲を直し、物資を補充した後攻撃を開始するとして、現実的な再攻撃の時期は2月末であった。

 またこの攻撃に失敗することになれば3月10日を過ぎてしまう。


「第3に、いまだにあの結界を突破できる方法を確立させていないことだ。」


 ビルアラモスを覆う結界は10万発もの砲弾の1発たりとも貫通を許さなかった。

 そもそも攻撃が一切通用しない時点で突破など夢のまた夢であった。


「攻撃方法なら有ります。」


 だが楠木がもたらした情報はこれらの問題を一気に解決できるものであった。


「坑道戦です。」


「坑道戦?」


「はい。ローマ帝国時代から続く堅牢要塞の突破法です。砲撃でびくともしなかったあの結界、その内部を確実に攻撃できます。」


「何故そう言い切れる?」


「これです。」


 楠木が出したのは、先端が槍のように鋭い木の棒であった。


「これは元々鍬でした。結界の外円部を掘り起こしていたら、スパッと。」


「確かに、真上から鋭利な刃物で切断しなければ、こんな断面にはならないな。」


「軍指令、直ぐに坑道戦に出ましょう。」


 仏印や台湾、中国大陸に多くの爆撃機が配備されていた事が災いし、現在あるのは緊急増産された60機程度。第1次総攻撃と同規模の砲撃にあわせ爆撃を行う予定であったが、単なる焼け石に水であった。


 よって、飛行場の設営に派遣されていた工兵30個大隊約2万人に飛行場の設営を一時中断させ、坑道掘削に当てた。


 1ヵ月後・・・。

 ビルアラモスは結界を展開したときに備え、住民1万が3年生活できる量が完備され、飲料水は地下水を使用していた。大量の爆発で結界の外が見えなくなったときが一回あったが、それ以降は全く音沙汰なし。だが外を歩く兵士達の数は一向に減らないので諦めていない事が窺える。


「ふん。シツコイ奴等だ。」


 外界観察用の水晶玉を納める。


「首都の実態を察知した各都市の首領が兵を集めていることでしょう。」


 ペル帝国の『非常体制対策第零号』と言う、一種の非常事態宣言のようなものが有った。

 内容は、ビルアラモスから来る定期連絡員が1ヶ月に渡って途絶えた場合、各都市は速やかに兵を集め首都に急行せよと言うもので、この定期連絡員はビルアラモスから1週間おきに各都市に向けて送られるが、それが途絶える事態とは、ワイズマンがそれらの往来を断ち切らなければならない事態、つまり結界魔法が発動されたときのことを言う。


 だが、これは各地に展開した帝国陸軍にとってもチャンスであった。各都市で集めることの出来る兵士の規模は、属国の旧首都で約5千。そのほかの都市で2千~3千人程度。しかしペル人の正規軍はその2割にも満たない上、正規軍と言っても政治将校で、彼らさえ潰せばこれらの軍団は瓦解する。


 だが、外界から隔てられたビルアラモスではワイズマンですら知りえなかった。


「それとワイズマン。結界魔法を展開する魔導師から魔法地脈に乱れが生じていると。」


「乱れ?」


 魔法地脈は肉眼では決して確認することは出来ないが、地中内の空洞を無理矢理でも避ける傾向にあるので、その回避先の魔法地脈にぶつかり乱れが生じる。


「まさか奴等、地中から?」


 ワイズマンは敵軍が地中から攻撃を仕掛けてくるのではないかと思った。

 そして命令を下そうとしたその瞬間。


 ガァァァッ バオゴォォォォオオオオンンンンンン


 ビルアラモスの中心部から巨大な火球が噴出した。

 その熱波は家屋を根元から捥ぎ取り、破片が勢い良く数百mも飛んでいった。そして結界魔法を展開させていた魔方陣は、爆発によって跡形もなく消し飛び、結界が頂点から消失する。


 ワイズマンが居た宮殿は石造りであった為爆風で吹き飛ばされることは無かったが、室内は木片や土埃で無茶苦茶になっていた。


「何が・・・?まさか、爆裂魔法・・・?」


 だが、ワイズマンが知る爆裂魔法とは比べ物にならないほどの威力であり、自分の身やビルアラモスに何が起きたのか、理解しようとする彼の目に地表近くの最後の結界が消えるのが見えた。


「敵が来る・・・。」


 これだけは直ぐに分かった。


 ビルアラモス包囲軍・・・。

「突撃ーーー!!!」


 結界の消失にあわせ、塹壕に身を隠していた歩兵が『突撃ガロップ』の後押しを受け全力疾走でビルアラモス市街に突入。

 敵歩兵や魔道士のわずかな抵抗を排除しワイズマンの宮殿に達した。


 そしてその奥で一人の男を発見した。


「貴様がワイズマンか?」


 だが話しかけても反応が無い。

 兵士が駆け寄り鑑識する。


「死んでいます。」


 その男は舌を噛み切り自殺していた。


 後日、自殺体はワイズマンと判明。

 ビルアラモス陥落と程時を同じくして非常体制対策第零号にて集められた軍団と帝国陸軍が交戦。敵の指揮官を狙った精密射撃と奇襲で射殺。思惑通り軍団は瓦解。


 ペル=トリートリア帝国が治めるディートリア大陸全土は大日本帝国が占領。

 モブタザル大陸を含む衛星大陸でも日本軍は反ペル帝国勢力に協力し地方政権を討伐。

 大日本帝国は名実共に第3海洋界全域をペル=トリートリア帝国に取って代わり支配することになる。


 帝都 東京・・・。

 正月に合わせ第3海洋界の国々の主を招き日ペル戦争の戦後処理が完了した。

 結果、ペル帝国の建国当時の領土を日本の直轄領とし、その他100以上の国々は独立した。日本はそれらの自治自体は認めていたが、内政は完全に日本が主導する、傀儡国となった。


「捧げーーーっつつ!!」


 そして、それらの国々の支配者たる偉容を見せ付けるため戦勝記念観兵式が盛大に執り行われ、第3海洋界の国々は改めて日本軍の力を実感した。また、それとは別に東京湾でも総勢300隻を越える艦艇で観艦式が行われた。


 約1ヵ月後 12月16日 呉・・・。

「遂に竣工したか・・・。」


「はい。工員一同、この艦の完成をどれほど待ったか・・・。」


 呉海軍工廠の工員が血と汗と涙を流し、新たな艦船が生まれた。


 その艦は、名実共に、大日本帝国をこの世界の頂点へと導く存在となるとなり、守護神となる。


 長門より、連合艦隊旗艦の座を譲り受けたその戦艦の名は・・・。


「『大和』・・・。」

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