第1次ビルアラモス総攻撃
前線に配備された大砲は、古いものでは銘地時代から使用されている『二十八糎砲』までもが内地から運び込まれた。
「懐かしいな~。」
陸軍の古参兵からは日露戦争以来からの思い出の一品であった。
この砲の活躍が有ったからこそ、極東の小国日本が、世界一位の大国ロシアの勝利できたと言っても過言ではなかった。
「戦艦を撃沈できる威力を持っているからって、旧式化コイツを持って来るとわな。」
二十八糎砲の他にも、『四五式二十四糎榴弾砲』『三八式十糎加農砲』『三十一年式速射砲』等、日露戦争前後に生産された大砲が、引っ張り出されては前線へと送られていた。
砲台の設置完了の直前で、南方軍15万が合流。
敵首都『ビルアラモス』を1万mで全周包囲。1万を超える大砲の一斉砲撃と共に陸軍総攻撃が開始された。
「撃てーっ!!」
100万tもの量の砲弾が約10分間、ビルアラモスを囲む結界に撃ち込まれた。
「32番砲台、弾薬欠乏!」
「57番砲台、砲撃終了!」
「18番砲台、砲尾故障!」
しかし、一発として結界を貫通する事はなかった。
「砲撃やめーっ!」
「10万発近く受けてびくともしてない、だと・・・?」
帝国陸軍史上、前例の無い大砲撃に、結界はその効力を弱めなかった。
「旅順要塞さえも吹き飛ばしかねない量の砲弾を・・・、信じられん。」
前線からの報告を元に、計画の見直しが行われ、第二次総攻撃はおよそ一ヵ月後、シドミストンとサルミトル郊外に設営される飛行場の完成と航空隊の進出、弾薬の補給を待って行われる事になった。
「一ヶ月の間、暇になるな。」
「そうとも限りません。」
「と言うと?」
南方軍指令は、準備が整うまでの一ヶ月で敵が降伏した後の統治を計画していた。
「まず、この大陸は『ペル=トリートリア帝国』と呼ばれるこの世界の列強国が武力で支配しています。大陸にあった国々は併合され、貴族や士族、百姓全員が労働力となっています。」
「その列強国の地方政権を討ち、属国を解放した後、我が帝国の傀儡とする。か。」
首都包囲に10万、大陸掃討に25万が割り当てられた。更に周辺諸国の進駐軍排除のため、海軍陸戦隊2万4千・近衛師団1万2千人の増員決定。
戦争は最終局面へと動き出す。