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ミトスター・ユベリーン 立ち昇る太陽  作者: カズナダ
世界大戦
25/29

防衛体制

 1ヶ月半後 ルテレベーラ・・・。

 1万隻を超える大艦隊。市民の目に圧巻たる全容を見せ付けていた世界最大の艦隊。市民の考えは一つ、「損害は出ようがそれは弾除けの蒸気帆船のみで、聖皇国海軍の艦艇には一切の被害が無く帰港し、大々的に凱旋が執り行える」っと。だが、市民の前に再び姿を現した艦隊に市民は老若男女問わず絶句。膝から崩れ落ちる者も出た。


 そう、まさに誰一人として予想しなかった事態。帰港した・・・いや、出来たのはたった49隻の駆逐艦のみ。大惨敗であった。


 そして、市民は陸に上がった水兵に詰め寄り問いただす。最愛の夫や、愛おしい我が息子を探して。だが見つけることが出来たのは全体の1割にも満たない。さらに帰還できた1万人もの兵士は心身ともにボロボロにもかかわらず、腐った果実や小石が投げられ、連日の如く脅迫に遭い、追い詰められ、遂に自殺や家族との無理心中が大量に発生。


 また初代総統が勧めた『国民皆拳銃計画』で一家に一丁以上の拳銃が存在していたことも災いし、怒りに狂い暴徒と化したルテレベーラ市民とそれを鎮圧する為に出動した警官隊との間で銃撃戦が発生。最終的に陸軍が2個連隊で街全域を制圧した。


 その後、海戦の敗北と暴徒鎮圧の失敗の責任を問われた海軍に止めの一撃とばかりに軍事裁判が開かれた。結果、高級幹部や一兵卒を問わず多くの者が粛清され、軍として機能不全に陥った。有名どころが残ったのは、海軍長官のルッペ元帥程度だった。


 ベルマギーア 軍事法廷・・・。

「何故私だけ生かすのです?」


 ルッペは海軍のトップ。真っ先に処刑されても可笑しくない筈なのに無罪となった。部下を見殺しにして自分だけが生き残るなど、あってはならないはずなのに何故・・・。


「貴官は此度の海戦を敗北を予想したな。」


「はい。ニホンの艦艇は高射砲を備えていました。それは海上での対空戦を前提にしているためです。

 これはあくまで私の推測ですが、ニホンのかつての敵は航空機を海上で運用することができた。敵が持っていれば自軍が一方的にやられる。なら自分達も同じ能力を身に付けようとする。それによってニホンは海上での航空機運用能力を手に入れた。」


 ルッペの持論は非常に説得力のあるものであった。敵が持っているものと同等以上の物を持たなければ敗北は必至だ。


 ニホンが世界会議で語った『転移』の意味が少しだけ分かった。そしてようやく気がついた。ニホンには聖皇国が作り上げたこの世界の常識が通用しないということに。


「本職の立場から申し上げて、海戦においては聖皇国は決してニホンに勝てません。」


 帰還できた兵士から話を聞く限り、ルッペから聞かなくともそれは予想できる。違う所は兵の多くが海戦後に気付いたという事。対してルッペは艦隊が集結する前に気付いていた。


 ルッペが粛清の対象から除外されていた理由はそこにある。実はヘッケラー総統も同じ考えを持っていた。彼は自分と同じ考えを持つルッペは新生される海軍には必要な存在となると考えた。


 陸軍参謀本部・・・。

 海軍を壊滅させられたものの、陸軍も空軍も被害を受けていない。制海権を奪われても水際で敵を跳ね返し、一矢報いる。これが聖皇国がとれる最善の戦術であった。


「西部方面軍は厳戒態勢です。」


「空軍も夜間を除き、偵察機をルリエナ洋に飛ばしています。」


 ワーシュラット大陸とデトラント大陸の航空基地には20基を超える88mm高射砲に多数の37mmと20mmの多連装対空機関砲と主力戦闘機『ヴァリアン』で4重の防空網を張り、その周辺の駐屯地には合計で2個機械化歩兵師団と1個機甲師団が命令一つで2時間以内の作戦行動に移れる。


 まさにこの二つの衛星大陸を絶対防衛線に設定し、陸・空軍共に万全の体制を敷いてニホン軍の襲来を待ち構えていた。

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