西太洋海戦
佐世保に集結した連合艦隊の総数は250隻。まさしく全力出撃であった。
艦隊は二手に別れ北方に直属、第2、第4、第11航空と陸軍20万が、南方に第1、第3、第5、第1航空と陸軍15万を派遣。第6艦隊と南遣艦隊は領海の警戒に就くことになった。
目的は一つ、街と言う街を落としつつ敵首都を目指す。ワイズマンと呼ばれる指導者は拘束することになっているが、射殺も良しとなっていた。
対馬沖 西80km・・・。
「日本民族を下等だの野蛮だの言っていた割には、随分とお粗末な船だな。」
連合艦隊旗艦『長門』の艦橋から見えたのは5000隻を超える大小様々な帆船の群れであった。
「米英ならまだしも、あのような連中にバカにされていたとなれば、腹の虫が収まらんと言うものよ。」
「戦闘旗揚げ!航空隊には『手を出すな』と伝えろ。この長門が全て葬り去ってくれるわ!」
長門のメインマストに巨大な軍艦旗がなびく。
「総員戦闘配置ーっ!!」
「前部主砲、三式弾装填、砲撃用ー意っ!!」
四一式45口径41センチ連装砲に三式弾が込められた。三式弾は本来対空用の榴弾であったが、九一式徹甲弾だと、木造の船体に対する砲撃では過貫通を起こす。だが三式弾の場合だと、内蔵された焼夷弾子を広範囲にばら撒くので、木造船を一網打尽に出来るのであった。
「距離1万!」
「砲撃始めーっ!!」
第一射の4発が発射された。
ペル帝国艦隊・・・。
大型の帆船と言えど全長が30mを超えるかどうかで、主武装に至ってはバリスタであり、大砲は無い。
その代わりに炸裂魔法を使える赤魔道士が一隻あたり5名乗船していた。
5000を超える大艦隊、ディートリア大陸の周辺国なら太刀打ちなど出来ないであろうが、突如先頭の800隻が燃え始めた。
「いきなり燃え出した?魔力の暴走か?」
「皆一流の魔道士ですのでそんなことは-」
バァァァァァァァン
真相を考察する前に巨大な爆発音が海上に響き渡る。
琥珀が破れる程の音量に堪らず耳を押さえる。
「なっ何だ今のは!?」
炸裂の上位魔法に爆裂が存在するが、赤魔道士が1000人集まってもあんな音は出せない。
だが、その音を出した張本人と思われる巨大な城の様な船が見えた。
「なっ・・・。なっ・・・!」
今まで見たことの無い物体に開いた口が塞がらない。
だが、巨大船はお構い無しに・・・。
バァァァァァァァァァァァァァン
攻撃を続けた。
長門による砲撃は一方的、かつ徹底的に行われ、5000隻居た帆船は跡形もなく燃え尽きた。
「戦果・・・と言ってよろしいですか?」
「この長門の初陣に相応しくない。報告するにしても『試射』程度にしていろ。」
確かに、米英の戦艦を仮想標的とする長門にとって、帆船への攻撃は『新型砲弾の実射試験』程度にしか捉えていなかった。
対馬沖で長門の独演会が開かれている一方、魚釣島の沖、西60kmの洋上でも同じような展開となっていた。
「全軍突撃せよ!」
『赤城』等8隻の航空母艦から発艦した300機の戦・爆連合がペル帝国の3500隻の帆船に攻撃を仕掛けていた。
攻撃と言うよりは『海上移動目標に対する、実弾を使った爆撃訓練』と言う言い方の方が正しいのかもしれないぐらい、一方的だった。
「戦闘機の演舞場だな。」
西太洋開戦
大日本帝国
・損害なし
ペル=トリートリア帝国
・帆船喪失:8500
『日本海海戦』を上回る完全勝利だったが、海軍の発表は・・・。
「西方海域ヲ封鎖スル大量ノ廃船ヲ除去シタ。」に留まった。
と言うより、これが真実に一番近かった。