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ミトスター・ユベリーン 立ち昇る太陽  作者: カズナダ
世界大戦
16/29

マーマガルハ洋海戦

 第2・第3海洋界の中間海域『ゼファージン洋』にて日本海軍の山城とゼル=ドスツバイ法国の残存艦隊が睨み合っている頃、第3・第7海洋界の中間海域『マーマガルハ洋』でもまた戦闘がおきようとしていた。


 第2水雷戦隊 旗艦『神通』・・・。

 ブハナベルス泊地沖で僚艦と合流し、第1戦速で北上。日没から既に数時間、いつ接敵してもおかしくない状況にあった。だが、探せど探せど一向に見つからず、船員に焦りと怒りが募っていた。


「こちらは第2海洋界と第3海洋界の最短コース上に居るて、敵は1万隻の大船団なのに・・・。全く見つからんなんて有り得ないだろ!?」


夜の海では僅かな灯りでさえ数km先からでも確認できるが、神通の艦橋から確認できるのは、当艦の真後ろを航行している駆逐艦『陽炎』の艦首のみがぼやけて見えている程度であった。


「探照灯を点けますか?」


「・・・。仕方ないな。」


 なので、自分の位置を晒してしまうが前楼と後楼の110cm探照灯を周囲に照射し敵を捜すことにした。


 キル=ズーベンオクト共和国 総船隊 旗艦『ラヴェング』・・・。

 ル・シアンネス総督は自軍の兵士とは異なる魔力反応を探知し、その集団とすれ違う形に艦隊の陣形を変更。このままやり過ごそうとする。


「頼りになるのは魔力検知器だけか。」


 魔力検知器は青道を境に西側、魔法世界に広く使われている。使用方法は国によって様々で、ヨル聖皇国やキル共和国は索敵武器として、ゼル法国やペル帝国は適性検査のために使用されている。


篝火も無く、新月であるにもかかわらずキル共和国の艦隊は衝突することなく南下して行った。


 そしてそのまま何事もなくいくかに思われた。


「うわっ!?」


 謎の光に包まれるまでは・・・。


「なっ何だこの光は!?」


「敵か!?一体何処から!?」


「畜生!前が見えねぇ!」


 謎の光によって視界が白一色になる。


 暗順応した目に突如として大量の光を受けたことで、方向感覚が麻痺し右往左往と甲板を行き交う兵士は衝突し、海に転落する。更に前が見えないことで狂騒状態に陥り同士討ちまで行われ、敵と戦う前からキル共和国の兵士は、その数を減らしていった。


「剣を使うなー!!」


 と言うル・シアンネス総督の叫び声は混乱する兵士達の絶叫と・・・。


 バゴォォォォォォン


 何処からとも無く発せられた爆発音に掻き消された。


 第2水雷戦隊 旗艦『神通』・・・。

「なっ!?」


 敵の姿が一向に見えなかったことで止むを得ず探照灯を点けたが、その照らした先に映し出されたのは水雷戦隊を取り囲む無数の敵船であった。


「砲戦よーーいっ!!」


 戦隊司令官、伊藤少将は即座に戦闘配置を命令したが、直ぐ隣に敵の大船団が出現したとあって船内に混乱が発生した。よって攻撃開始には相当な時間を要し敵に先手を取られるかに思われた。


 だが・・・。


 バゴン バゴン ババゴン ダダダダダン


 7基ある50口径三年式14cm砲と2基の九六式二十五粍高角機銃による射撃が開始された。


「射撃命令は出しておらんぞ!?」


 伊藤少将が戸惑うのも無理は無い。彼はまだ砲撃の準備をするように、としか命令していなかったのだ。なのに、自分の意に反し砲撃が開始された。考えられたのは命令違反か・・・。


「おそらく、各砲塔長の独断かと。」


「・・・馬鹿者共め。」


 独断専行の二通りしかない。


 独断専行は陸戦、海戦に関係なく一歩間違えれば部隊の全滅につながりかねない。だが今回は予期せぬ敵艦隊との会敵、それに伴う命令伝達の遅れ、敵艦隊からの先制攻撃、それ全てを見越した各砲塔長は独自の判断で敵艦隊に砲撃を開始した。


 神通と16隻の駆逐艦から放たれた徹甲弾は木造帆船十数隻を貫通し、集団のど真ん中で爆発。また機銃の射撃も真隣に居た帆船を蜂の巣に替えていった。


 魚雷が使用されていないのは、帝国海軍の酸素魚雷は1万t級重巡を一発で戦闘不能に陥らせるほどの威力があるが、信管は極限まで敏感に設定してある為木造の装甲でも爆発する。そしてその敵船は機銃で処理できるほど至近距離に居る。こんな近くで爆発したら自艦にも被害が出る。よって魚雷は本海戦には使用されていない。


 ラヴェング甲板・・・。

 相変わらずル・クライシス総督の耳に入ってくるのは兵士達の絶叫と悲鳴、光の発生元から発せられる爆発音だけであった。


「爆発音の方向に矢を放て!!」


 視界は光に包まれて機能していない。なので聴覚を頼りに攻撃することしか出来ない。ル・クライシスは適切な命令を出したと思った。だが誤算だったのは・・・。


「ぅぎゃっ!」「ぐわぁっ!」「だがぁっ!」


「何をやっておるのだ!?」


 爆発音は光が向こ方向からも発生されていた。兵士はル・クライシスの命令を忠実に守ったがそれが災いし自分の位置を爆発音の射線に立った友軍兵を誤射していまう。無論敵艦に向けて放たれた矢も有ったが戦果を確認することは不可能であった。


 そしてル・クライシスを含めた全キル共和国兵は光の正体も、誤射していたことも、撃沈されたことも分からぬまま夜の水底に沈んで逝った。


 夜明け・・・。

 海戦から一夜明けた午前六時。戦場に残っていたのは第2水雷戦隊と敵船だった木片、敵水兵の死体しかなかった。


「帰投して・・・良いんだよな?」


 伊藤少将は神通艦長にとんでもない質問をしたが、神通艦長、桑部大佐は周りを一通り見渡した。そしてまだ訳の分からん状態のまま伊藤少将に・・・。


「よろしいかと・・・。」


 と返答した。


 マーマガルハ洋海戦

 大日本帝国

・損害なし


 キル=ズーベンオクト共和国

・全滅


 ゼファージン洋海戦と合わせ第2海洋界方面、第7海洋界方面の安全は確保された。

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